小学生の頃大好きだった幼馴染に黙って引越したことを後悔していた俺。高校になって奇跡的な再会を果たしたけど彼女の態度がキレ甘で戸惑う

minachi.湊近

プロローグ

 注)一人称「僕」と「俺」が混在しておりますが仕様ですので、気にされなくて大丈夫です。



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 時は俺がまだ小学校低学年だった頃。県の中でもどちらかと言えば都会である市内にあった小学校に俺、羽馬 色那は大好きな幼馴染がいた。


 名前はうろ覚えであるが、確かにあの頃は彼女のことを心の底から大好きだった。

 小さい頃のお遊びだろう、と言われてしまうかもしれない。


 でもまあ別にいい。他人にお遊びだったと言われたからと言って、あの時の思い出が消える訳では無いのだからな。


 彼女はとても可愛らしい女の子だった。身長は周りよりも少し低めで、目はまん丸。髪型はミディアムボブだ。


 性格は少し厳しめだったか。俺が少しでもお茶目なことをすると、直ぐに俺のところにやって来ては説教を受けていた気がする。


 でもその説教には確かに思いやりが含まれていて、俺の事を思ってしてくれていたのは分かっていた。


 今思い出しても懐かしい。彼女は今も元気に暮らしているだろうか。


 実はと言うと、俺には後悔していることがある。

 忘れることの出来ない。今もまだ胸の奥深くに突き刺さっている後悔の記憶。


 もし可能であれば謝りたい。あの頃に戻って、後悔の原因を取り除きたい。


 話せば長くなるが、聞いて欲しい。なぜ俺が中学生になっても胸に深く刻まれている後悔の念の出処の話を。



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『私、大きくなったらシキナくんと結婚する!』


『僕も大きくなったら○○ちゃんと結婚する!』


 俺は学校が終わったあとに友達の○○ちゃんを誘って、近所の川添の草原でおままごとをしていた。


 ○○ちゃんと遊ぶ時は決まってるおままごとをしている。理由は○○ちゃんが遊びの中でおままごとが1番大好きだからである。


 おままごとの設定は日によって様々だった。ある日は老夫婦、ある日は双子の兄妹(姉弟)。


 今日は新婚さん設定である。


「おかえりなさい、あなたー♡」


「ただいま、奥さん!」


 我ながらなぜ奥さんなんて呼び方をしていたのだろう。普通に名前で呼べばよかったのに…なんて今更考えたところで意味は無い。


「今日はどうする?ご飯にする?お風呂にする?それとも………………テレビ見る?」


「そうだなぁ。じゃあお先にお風呂に入ろうかな!○○ちゃんはもうご飯食べたの?」


「んーん!シキナくんと一緒に食べたいからまだ食べてないよー!」


「そ、そうなの?気にしないでも良かったのにー」


「好きでやってるから気にしないでくださいっ!」


 やけに内容がリアルだな。気を遣うとか、一緒に食べたいから待ってた、とか。


 俺が夢見てたシチュエーションが目の前で行われていたことを思い出す。もう二度と体験出来ないのだろうけど。


 そんでもって俺たちは6時くらいになるまで二人の世界で楽しんで終わった。気づけば日が沈み始めていて、夢中になっていたことが分かる。


 そんでもって俺と○○ちゃんは2人横に並んで歩く帰り道。

 その時は突然訪れた。


 ○○ちゃんが俺の手を握ってきたのだ。


「○○ちゃん?どうしたの?」


「私、この時間が好きだなー」


「僕も好きだよ。○○ちゃんと遊ぶ時間が毎日の楽しみなんだー」


「嬉しいー!」


 おままごとの時間も好きだったけど、俺が1番好きだった時間はこの時間だった。


 学校では見ることの出来ない○○ちゃんの姿。まるで彼女のことを独り占め出来ているようで…いやいや、その考えは危ない。


「私、大きくなったらシキナくんと結婚する!」


 俺は驚いた。

 突如行われた好きな人からの告白。今思えば冗談だとは思うのだが、あの時の俺はそれを聞いて悲しみを覚えた。


 冗談だとはしてもあのころの俺は、それを本当の気持ちだと受け取ってしまったのだ。


 だから伝えようとしていたこともその日、彼女に話す勇気は消失してしまった。


 俺は週末に遠くの学校に転校することが決まっていたからだろう。


 その日の夜、母親から確認された。


『○○ちゃんには引越しのこと話した?』


 俺は母さんに嘘をついてしまった。


『話し…たよ』


『本当?後悔しないようにね』


『…うん』


 その週末、俺は彼女に何も言えずまま遠くの街に引っ越してしまった。

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