第2話

しかし話せば話すほど、彼女はエキサイトする。

そしていきなりナイフを取り出したのだ。

「死ねえ!」

ナイフを振りかざして俺に向かってきた。

俺は逃げた。

そして柵に追い詰められた。

そこに彼女が飛び込んでくる。

――うわっ!

大きく避けた。

すると彼女は柵を乗り越え、崖下に落ちてしまった。

――!

崖下を覗き込む。

崖下の岩に叩きつけられた彼女が小さく見えた。

血を流し、どう見ても間違いなく死んでいる。

俺はとっさに周りを見た。

誰もいない。

急いで車に乗り込み、その場を去った。


数日後、崖下の彼女が発見された。

展望台に来て、たまたま下を覗き込んだ人が見つけたのだ。

ニュースでは事故とも事件とも断定してはいなかったが、俺と彼女の付き合いは短く、二人が付き合っていることを知っている者は一人もいないはずだ。

警察等が俺のところに来ることはないだろうと思えた。

それに彼女は両親も兄弟も健在だと言っていたので、葬式などその後のことも身内に任せていれば、なんの問題はないだろう。

他人の俺がしゃしゃりでることはない。

そんな気はさらさらないし。

これであの女とは切れたのだ。

俺はほっとした。


数日後、会社からの帰り道。

俺がマンジョンに向かっていると、後ろでなにか音がした。

――なんだ?

見れば何か白く小さな物体が俺の方に向かってきていた。

ずるずると動きながら。

生き物ではない。

俺はそれをよく見た。

そして気づいた。

なんと骨壺が意志を持ったかのように俺の方に迫ってきているのだ。



       終

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逃がさない ツヨシ @kunkunkonkon

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