青春

狼男

第1話 4月

 



入学式は雨だった。前野良一は校門の前で父親に写真を撮ってもらった。それから体育館前の掲示板でクラスの確認をする。1年1組だった。入学式はあっという間に終わった。そこからクラス写真を撮影した。副担任の吉田先生に「あなた緊張していますね」と声をかけられた。そのあと、教室に移動した。担任の鹿島先生だ。一年間のスケジュールが黒板に書かれていた。先生が少し話した後、解散になった。


月曜日、クラスメイトと話をした。大谷元気くんと仲良くなった。彼から話しかけてくれた。友達がいない状態、いわゆるぼっちを回避できてよかったと前野は思った。弁当を食べるときも移動教室の時も彼と一緒だ。俺らはクラスの人からみたらおとなしいグループに属することがわかった。最初、前野は自覚していなかった。中学のころもスクールカーストなるものがあったが、今のクラスよりもゆるやかだったのだ。

他にもおとなしい友達がいた。青山達人。彼は無口で声が低いため、聞き取りにくい。最初の自己紹介のとき、前野はそう感じた。青山もどちらかといえば、おとなしいグループに入る。前野は体育の授業がトラウマだった。なぜかといえば、中学3年生のころ、持久走をして途中で気分が悪くなって嘔吐したことがある。それをクラスメイトにからかわれて以来、体育の授業が憂鬱になった。いろんな授業が始まってクラスの自己紹介が終わって自分のクラスの立ち位置が見えてきた。自分は陰キャと呼ばれることにいまさらながら気づいた。女子とは全く話さない。クラスでは目立たない。運動会の選手決めになった。井上と呼ばれるリーダー格の男がしきっていた。かれはバスケ部に所属しており、クラスのムードメーカー的存在だ。前野は100メートル走に出場することが決まった。体育の授業で50メートル走を6,8秒で走ることができたので周囲から注目を浴びたのだ。柴田君という男の子がいた。彼はクラスの人気者だった。前野は卓球部に入ることにした。理由は中学の頃も卓球をしていたからだ。中学では男子の市大会のダブルス2位という結果を残している。部活動では仲間と切磋琢磨していった。顧問の先生は担任の鹿島先生だった。

始めて鹿島先生と話したのは4月の面談だ。緊張した。「前野君もうちょっと人と話した方がいいよ」とアドバイスを受けた。入学してそうそう校内模試があった。前野の所属する高校は偏差値70の高校だ。入学試験も総合点数が8割ないと入れない高校だ。前野は文系のトップクラスにいる。この高校は、普通科の中に文系、理系、それぞれに特進コースを設けている。今のクラスに残るには校内模試で80位以内に入らなければならない。前野の結果は78位だった。友達の大谷君がいた。たまたま成績表が見えていたので覗いてみると国語が1位だった。彼にどうやって1位を取ったのかと聞くと、高校受験が終わっても勉強を続けていたからだそうだ。これに前野は驚きを隠せなかった。彼らの高校では芸術科目がある。書道、美術音楽のなかから一つを選択しなければならない。前野と大谷は書道を選択した。理由は二人とも習字教室に通っていたからだ。前野らは読解力のテストも受けた。

始めて勉強に関する集会があった。そこで言われたのがテストは宝の山。間違えた問題を解きなおすのがよいと学習方法が提示された。それをあまりしたことがなかった前野にとって目からうろこだった。

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青春 狼男 @shinshin4445

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