秋のふたり

『秋』

 秋の花粉は厄介者で、痒みが少しマシな代わりに、時折咳を持ってくる。

 けほけほと咳込んだ私の背中を、あなたが心配そうにさすってくれて、それだけで少し楽になるのだから不思議だ。

 暖かいあなたの体が私を包む。その優しさが嬉しくて、辛い花粉症も悪くないかも。なんてやっぱり思ってしまうんだ。

(2022/10/12)


『イタズラ』

 着る毛布を買った。今夜はかなり冷えたから、早速着てみる。

 フリーサイズだったからブカブカで、お化けみたいだってあなたと笑う。

「トリックオアトリート?」

 言ってみれば、あなたは顔を赤くして視線を揺らした。

 片付いたテーブルにお菓子なんかないよね。さぁ、どんなイタズラを仕掛けようかな。

(2022/10/25)


『ハロウィン』

 少し豪華な食事を終えてゆっくりしていると、毛布のお化けが現れた。

 用意していたお菓子を渡すと、ぱくぱくすぐに食べてしまってにっこり笑う。

 催促されて同じ言葉を返すと、君はひらひら手を振ってみせた。イタズラ?うーん。

 とびきり甘いものならもらったから、まずは君を抱きしめてもいいかな。

(2022/10/31)

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