初発電車は4時4分.10
ライはほんの一瞬だけゾウガメから目を離し、両手で構えたピストルを見てしまう。
リロードし薬室に初弾も装填したのに発射されない。
戦いに慣れていない事が裏目に出る。
ゾウガメは手を開いて猛然と掴みかかってくる。
視野の片隅に迫るゾウガメに気づき、ライは飛び退るが、ピストルを掴まれてしまった。
アフリカゾウが迫ってくるような迫力に気圧されながらも、ライは力勝負はせず箒の柄のような木製グリップから手を離す。
ゾウガメは追撃せずに、奪ったピストルを背後に放り投げた。
ピストルは床を転がり、次の車両へと続くドアに当たって止まる。
「さてと煩わしい豆鉄砲は無くなった。ここからはオレ様の間合いだ。その女みたいな細い身体をバッキバキに叩き潰してやるよ!」
ゾウガメ、両の拳を固めて顔の横で構える。
ライ、両手を軽く開き、腰を落として構えた。
両者睨み合う事数秒。走る電車の揺れがゴングだった。
ゾウガメ、先制のジャブ。ライは頭を振るだけで回避。
ライ、ジャブが戻るのに合わせて右のストレート。ゾウガメの顔面に突き刺さるものの鉄の身体のせいで全く効いていない。
ゾウガメはガードという選択肢を捨て、全ての行動を攻撃に回す。
ジャブの連打。不意打ちのフックにアッパーカット。
ライ、顔に迫るジャブをよけるが、視界外からの右フックに気づいて左前腕でブロックすると、ボディに強烈なアッパーカットがめり込む。
ゾウガメの狙い通り、肝臓に命中。胸から全身に浸食するような痛みがライの脚を止める。
破城槌にも等しい右ストレートが、辛うじてガードの姿勢をとったライに直撃。
破られた城門のようにガードはこじ開けられ、顔を殴られたライは背中ら吹き飛んだ。
倒れたライにゾウガメが拳を振り下ろす。
床に大穴を開けるような拳を受ける直前、ライの顔から黄金の閃光が解き放たれる。
その余波でゾウガメは吹き飛んだ。
「オットット。これで金貨一枚消滅だ。後四枚」
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