初発電車は4時4分.7
カエサル達が乗った車両には誰もいない。
二人が乗ったのは最後尾だったが、乗客はおろか電車を運転するはずの駅員もいなかった。
「カエサル。先頭車両の方へ進んでみましょう。ついて来て」
歩いても車内には人っ子一人見当たらない。座ってくれと言わんばかりの側面に並んだ座席。振動に合わせて振り子のように揺れる吊り革。
ガタンゴトンと一定の間隔で揺れる車内を進んでいくと、ライが不意に止まったので、よそ見していたカエサルは止まりきれず背中にぶつかってしまう。
「ご、ごめんなさい!」
ライは答えず、前の一点を注視していた。
カエサルも背中越しに視線が注がれている方を見る。
右手側の座席、次の車両につながるドアの近くに一人の大男が腰を下ろしていた。
ライとカエサルに気づいている筈なのに、大男はそちらをみる事もなくある事に集中している。
右手に持った白い塊を口元に持っていくと、大きく口を開けてそれにかぶりついた。
手の中の塊を食い尽くして初めて、二人の方に闘争心剥き出しの三白眼を向けた。
ライが腰の得物に手を伸ばすと、大男が掌を見せる。
その手には米粒が付いている。
「ちょっと待ってくれ。もう少しで食べ終わるからよ」
そう言って懐から新たな塩むすびを取り出す。
大きさは手からはみ出そうなほどで、海苔も巻かれていないシンプルな塩むすび。まるで余計なものはいらないと言わんばかりに米一つ一つが光の衣を纏っていた。
大男は二つ目にギザ歯で齧り付くと、ものの数秒平らげてしまう。
二人が見守るなか、大男は手や口端に付いた米粒を口に入れ、勢いよく手を合わせた。
「ごちそうさんでしたっと。さあて、殺ろうかいお二人さん」
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