初発電車は4時4分.4
現れた十枚の硬貨は金貨と銀貨。
「それはヘイストゲームに参加するプレイヤーを守る力を持ったもの。
カエサルの左手に金貨五枚が羽毛のように降りてきた。
「こちらの
掌に降りてきた一枚を持ってみると、表面には瞼を閉じた穏やかな女性、その裏面には長方形の
空中をゆっくり回転しながら浮遊するデナリには同じように女性と
「このコインを他のプレイヤーに取られちゃいけない……」
「いいえ。これは略奪者達の求める宝ではありません。しかしあなた達プレイヤーにとって命と同等の価値があるもの。コインに盾が彫られているでしょう」
「この四角いのですか」
スクトゥムが彫られた面を見る。
「盾は様々な攻撃から持ち主を守るもの。それと同じ能力がアウレウスに込められているのです」
「持っているだけで僕を守ってくれるなんてすごいコインですね。それを五枚もくれるなんて太っ腹じゃないですか」
「喜ぶには早いですよカエサル様」
満開の花のような笑顔が固まる。
「五枚も与えるにはちゃんとした意味があります。持ち主の致命傷を完治した場合、即座に身代わりとなって砕け散ります」
カエサルは瞼を閉じる女性の金貨に目を落とす。
「じゃあ、一度砕けたらそれまで」
この時、カエサルの脳裏には命を落とすはずだった自分の代わりに、ひび割れ粉々に砕け散る金貨の姿が浮かんでいた。
GMは続ける。
「そう金貨一枚で一度きり。それが五枚。そして同じ効果を持つ五枚の銀貨は今回のゲームに参戦する四人の略奪者に余ることなく分配されます」
「何で敵にまでそんな有利な事を」
「これはゲームです。一方だけ有利では誰も参加しない。お互いフェアではないといけません。それに挑戦者の方が若干不利ですよ。カエサル様陣営より少ない枚数なのですから。では次に……」
まだ説明を続けようとするGMの言葉が途切れる。
「話の途中ですが、カエサル様の守護者が到着した模様です。先方をお待たせするのも失礼なので、すぐに向かってください」
延々と説明していたGMはもうひとつの役割である次の場所へ向かわせる為に両開きの扉を開いていく。眼前に浮かんでいたデナリは吸い込まれるように扉の向こうに行ってしまった。
完全に開け放たれた向こうは真っ白で中に何があるか分からない。
しばらく動かなかったカエサルだが、待っていても元の場所に帰れるはずもないり
渋々宝石箱のリュックサックを背負い、五枚のアウレウスを手放すまいと握りしめて、おっかなびっくりの足取りで扉をくぐる。
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