最弱のメシア.2
高校のチャイムが鳴り終わると同時に、元気よく正門を飛び出した高校生がいた。
通学路を歩きながら配信者ゲッツーの動画を見ていた生徒たちが、後ろからの足音に気づき、避けるように道を開けていく。
サラブレッドのように紅蓮のポニーテールをたなびかせるのがカエサル。
全力で走るのは今日もこの電脳空間の平和を守る為。しかし車も航空機も乗れないカエサルが素早く移動するには、電車かバスか徒歩だけ。
公共交通機関では一定のルートしか見回れないことに気づいてからは、毎回走るという選択肢を選んでいた。
走っているとガラスが割れる音と悲鳴が続く。
見ると、行きつけのコンビニで四人の男達が数を頼りに一人の店員を恫喝していた。
「助けなきゃ!」
カエサルは人影のないビルの隙間に入ると、リュックから変身道具を取り出す。
恥じらいなく制服を脱いで下着姿になると、赤い全身タイツを着て、白いショートブーツとショートパンツ、そして同色のパーカーを羽織り、最後に正体を隠す赤いマスクをかぶってポニーテールを外に出したら変身完了。
「コンビニ強盗達。そこまでだ!」
店員を脅していた三人が一斉に入ってきたカエサルを見た。
強盗の一人が口を開きかけたが、先に口を開いたのはカエサルの方だった。
「一体何者だって言いたいんだろ? 今教えてやる! 正直な心を腰に巻き、正義のパーカー羽織ったら、両足で奏でる平和のーー」
途中で言葉が途切れたのは、物陰から表れた四人目が遠慮なくバットを振り下ろしたからだ。
殴られたれたカエサルは頭部から赤いヒットエフェクトを光らせながら、うつ伏せに倒れる。
「ひ、卑怯だぞ。まだ言い終わってないのに」
再びバットが振り下ろされる。
「うるせえ。全身タイツの変人の言葉なんか聞いてられるか」
他の三人も加わり、無抵抗なカエサルに鈍器を何度も何度も振り下ろした。
カエサルは身体を丸めて攻撃を耐えることしかできず、通報を受けて駆けつけた警察に止められるまで殴られ続けるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます