最弱のメシア.3
パトカーのサイレンがコンビニを赤く照らしたところで、カエサルをタコ殴りにしていた男達はやっと手を止めた。
警官達が外から投降するように呼びかける。
四人は顔を見合わせて頷くと、倒れているカエサルを踏みつけながら、外に飛び出していった。
耳に飛び込んでくる怒号と銃声。丸まっていたカエサルが外を見ると、強盗全員が道路に倒れていたが、しばらくすると光の粒子となって消滅した。
警官の一人が声をかけてくる。
「大丈夫か」
「はい。彼等は?」
「消滅した。HPを失ってもアイテムをその場に残して復活するんだが……」
強盗達が倒れたところには何も痕跡が残っていない。
「バッテリーが切れかかっていたんだろう。HP 0と同時に尽きて、ここから追い出されたんだ」
警官の無線から声が聞こえてくる。
「はい。またですか……すぐ急行します」
ため息をつきながら無線をしまう。
「また事件ですか」
「最近多いよ。自暴自棄になったように人を襲ったり物を破壊したり、そんなのばかりだ。バッテリーが尽きるプレイヤーも増えているみたいだな」
「僕もお手伝いしますよ」
警官はカエサルの方を見る事なく手を振る。
「いいよ。君が来ても足手まといになるだけ。それよりも自分の
パトカーはサイレンを鳴らしながら、カエサルを残してその場を後にした。
カエサルは忠告されても、変身した姿でパトロールを続けるが、中々事件には遭遇せず、駆けつけた時には終わっているものばかりだった。
家に戻り洗濯機で変身道具の汚れと傷を修復した頃には深夜零時を回っていた。
毎日のルーティンである学校に遅刻しないよう、スマートウォッチのアラームを設定する。
液晶にはバッテリーの残量が残り1%と表示されている。
最初は理由が分からず、ビクビクしていたのだが、もう一年もこのままなので、慣れてしまい気にする事なく瞼を閉じる。
甘露のおかげで健康状態もベストコンディションで疲労を感じる事もないが、ただ眠るという行為がたまらなく好きなのだ。
まるで顔の知らない母に抱かれているようだから。
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