『カオス』がいつも通り

「いや、絶対ユナの方が悪い‼」

「そっちこそ‼」

 二人の小学生が、下校中に言い争っている。

 この集団登下校の班は、本来ならば真っ直ぐ一列に並ぶものだ。しかし、並ぶも何も毎日ぐっちゃぐちゃ。班長である私——大久保おおくぼフウカも、全員を並ばせることなどとうの昔に諦めていた。

「はい、並んで~」

 今日だけで十回は言ったセリフを繰り返しながら、くるっと方向転換して振り向く。


 ——ぅわぉ、カオス。


 私は目を細めてを傍観した。

「カ〇ビィのラスボスが——」

「えっほんと? ヤバ」

 皆、騒ぎながらもちゃんと通り歩いているのだから何とも言えない。だが列は乱れ、列とは言えないぐちゃぐちゃっぷりだ。

 そして、その中心で激しい喧嘩を繰り広げている二人組がいた。四年一組の遅刻常習犯、松葉まつばユナと、三年三組のツッコミ役、宮坂みやさかアオトである。

 

 ——その二人の間に、ひとり。


「ねぇフウカ。今この二人の喧嘩に挟まれてる私の気持ち分かる?」

 六年、小鳥遊たかなしノア。可愛らしい名前に似合わず、スクールカーストの上位に位置する女子だ。

「んははははっ、ガンバ」

「ねぇフウカ、どうしたらいいと思う?」

「知らん」

「薄情者ー!」

「薄情者でけっこーです」

 むくれるノアを放り、鉄の棒で補強してある『私の爺ちゃん特製反旗棒』を手でぺしぺし叩く。


「うーん。今日もいつも通りですねぇ」





騒がしくて、喧嘩勃発→『カオスがいつも通り』



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