日々のオモシロこばなし

ユズリハ

新学期あるある

 短い春休みが終わって、新学期。

 二年三組の岩瀬ヒマリは、友達のミオとともに係の仕事で職員室まで来ていた。

 わたしとミオはポスト係で、毎日職員室まで行き、自分のクラスのプリントを回収して配らなければならない。

 この学校では、生徒が職員室や他学年の教室に入るとき『失礼します。□年の○○苗字 ○○名前です。~~しに来ました』と告げることになっている。

 さっさと係の仕事を済ませて帰ろう。毎日職員室に来ていると慣れていくけど、入るのは緊張する。


「失礼します。一年の岩瀬いわせヒマリです。係の仕事で来ました」

「失礼します。二年の望月もちづきミオです。同じく係の仕事で来ました」


 その瞬間、職員室の中でパソコンに向かっていた先生たちが、一斉にわたしを見た。

 え、なに。

 視界の端に目をやると、二年三組の担任である飯田いいだ先生がわたしを見つめて、ピースにした手を顔の前で小刻みに振っている。

 数秒経って、ピースではなく数字の『2』を表していることにようやく気付いた。

 2、と言えば。

 ……あ。学年間違えた。

 わたしは慌てて言い直した。

「間違えました言い直します‼ 二年の岩瀬ヒマリです‼」

 飯田先生が、ぐっと親指を立てたのが見えた。

 後ろでミオがにやついているのを見て、わたしは彼女を肘で突いておいた。

 ふいーっと心の中で溜息を吐いてから係の仕事を済ませ、職員室を出る。

「失礼しました」

 職員室前の廊下を少し歩いたところで、「あ、ミオわたし、確認するとこ間違えたかも」と踵を返した。

「えーヒマリ一緒に教室もどろーよぉー。一回戻るならわたしも付いてく」

 ふざけて抱き着いてくるミオを軽くいなして、もう一度職員室のドアを開ける。


「失礼します。一年の岩瀬ヒマリです。さっきの係の仕事に不手際があったかもなので、再確認しにきました」


 ブフッ、と後ろに付いて来ていたミオが吹き出した。

「へっ?」

「ヒマリっ、また学年言い間違えてるよっ。くぷぷぷ」

「あああああああっ」

 顔を隠して悶えながら叫ぶ。

 

「すみませんまた間違えました二年です‼ 二年の岩瀬ヒマリです……」





新学期あるある→『学年を間違える』



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