09 冒険者組合本部

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 内容の大幅変更。

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 初期プロットに戻しました。

 2024/11/8 記載






 翌朝、目が覚めると一糸まとわぬ姿で眠りつく彼女キャニィの姿があった。


 昨日、同じ部屋の同じベッドに体重を預け、同じシーツで身を包んだ僕達はあれよあれよと言う間に一線を越えてしまった。出会ったすぐの男女がすぐに致す事が常識的な事では無いと気付いたのは、彼女が気を失う前にぼそっと言ってくれたからだ。



 僕にとって寝るという行為は匂わせであり、隠語であった。

 それが常識なのだと教わってきた、否......そう洗脳されてきた。



「謝っても謝りきれないな」



 僕の常識が世界の違いあれど、ズレている事が判明した今。そのズレを正しく認識していない現時点で下手な行動は出来ない、どちらにせよ僕の素性を知ってなお好意的な印象を持ってくれているキャニィの協力が必要不可欠であるのは確かだ。


 どうか嫌わないでほしい。

 いくらでも謝るし、償う努力はするから。


 保身の為と思われるかもしれない、でも彼女にそう思われても一緒に居たい。

 この感情を正しく認識できるようになるまで、傍にいさせてほしい。




「別に謝らなくていいよ」



「!?」



 むくりと起き上がったキャニィ、どこから聞いていたのか。

 いや、始めからか......っていつから起きてた?



「いつから?って顔してるね、ずっと前だよ」



「あ、ああうん、そうなんだ」



「寝顔をずっと眺めてたの、でも起きそうだったからフリしてた」



「ああ、うん......」



 そうなんだ、と言うまで声が持たなかった。

 脳が謝る為に適切な言葉の羅列を叩きだしていたからだ。



「まだ色々考えてる顔してる」



「痛!、ちょっ、キャニィ」



 額にぴしっと一発のデコピン、結構重い。

 思わず痛みで摩ってしまう程には痛かった。



「はやく、支度しよ。昨日買った服、もうクローゼットに入れてあるんだから、ね」



「う、うん、分かった」



 声色も態度も服装も、昨日とあまり変わらない。


 キャニィにとってそんな安い一夜だったのか、それとも取るに足らない事故だったのか。聞き出す勇気を持ち合わせていない僕は流されるように支度と食事を済ませ宿屋の外に出た。



「にしても、すごいな【能力】って」



【言語理解】これは本当に凄い能力だ。

 外に出て、視界が開けた瞬間、改めてそう思わされる。



 視界に映る文字、耳から入ってくる言葉、そのすべてを僕が理解出来る言葉に変換している。しかも恐ろしい程に迅速で、かつ正確無比な変換、女神様様の様様である。


 しかも僕が喋る言葉さえも能力の対象として変換して届けてくれるのだから

 アテナ様に頭など上がるハズもない、本当に心からそう思う。



「じゃ、いくよー」



 キャニィと二人で並んで、歩き出す。


 まだ朝早くにも関わらず市場には多くの人で溢れかえっており、その人ごみを避けながら目的の場所へと向かう。

 ただ、僕はその場所を知らない、一歩後ろを歩いている感覚で歩いている。でもキャニィは僕の腕を引っ張って真横を歩かせようとしてくる。こんなこと、昨日はしなかったんだけどな。



「ついたよ」



「へぇー......ここが、ここが!?」



 エーテルの正面玄関、正門の前の広場。

 つまりは入口まで、戻ってきている。



「正確には、そこの酒場」



 指で示された方向にあったのは、まだ朝早いにもかかわらず人が出入りする酒場。


 木造りの格子からは、屈強な男性たちが食事をしていたり、お酒を飲んでいたり、仲良く会話を楽しんでいるのが見える。



「なんか、楽しそう」



「でしょ、じゃあ行くよ」



「ちょっ!心の準備が!」



 スタスタと歩いて、店の前。

『酒場 ミヤシロ』

 と書かれた看板をつり下げた、他の建物と比べ少し古い建物。



 カランカラン



 無骨な扉を開けると来店者を知らせるベルが店内に響き渡る。



「「「「「あ?」」」」」



 一斉に彼らの視線が、こちらに向けられたのが分かった。


 先程の楽しそうな雰囲気がスッと消えた、まるで僕が教室に入った時のようなそんな街外れ村外れ教室外れなこの感覚。


 少しの懐かしさと、少しの心の痛みをひしひしと感じる間も無く



「ほぉ、これはたまげた」



 カウンター席の奥で、グラスを拭きながら現れた初老の男性。視界に入った途端分かった、あれがここのオーナーさん、というより酒場の店主さんだ。


 体格は一回りも二回りも周囲の男性達より大きい。肩幅も尋常無い程広く、胸板は銃でも貫けられないようにも思える太さ。顔に刻まれた切り傷は深く、荒々しい。



 本当にこれ大丈夫なのだろうか?



「ね.......ねぇ?本当にこれが.......冒険者組合なの?」



 僕はこの突き刺さる目線に辛抱貯まらず、ついキャニィに話しかけてしまった。



「大丈夫だから.......私の後ろを離れちゃだめだよ」



 僕はその言葉に大きく頷いて彼女の後ろにピッタリと付いた。



 店主さんは拭いていたグラスをカウンターに音を立てて置くと、一本のビール酒をケージから取り出してカウンターに置いた。



「よぉキャニィ!お前さん死んだって報告だが見た感じ五体満足みたいだな!帰還記念で一杯やってくか?お前のキープはこの通り残してあるぜ?」



 彼は酒の瓶を持ち上げて銘柄を見せつけた。



「俺たちゃ行天したぜぇ、まさかキャニィが死ぬなんてなあ!!」


「でも生きて帰ってくれてよかったぜ!」


「キャニィちゃんは.........アイドルだっぺな........」



 飲んでいた人たちもキャニィが生きていたことを嬉しんでいるようだった。

 なんだか肩透かしを喰らった気分、まぁ自分の思い過ごしなんだけど。



「今日は別の用事があるの、飲むのはまた今度でやりましょ。それよりも本部へ行きたいのだけど」



「なんだぁ!つれねぇな。まぁいいぜ、元からお前が死んだとは思ってなかったからな。しっかり鍵は残ってるぜ?」



「助かる、いつもありがと」



「おうよ!後ろのにいちゃんもキャニィを宜しくな!!」



「え!?......は、はい!」



 そう言って店主さんはニコッと笑って後ろのケージから一本の小さい瓶をよこしてくれた。



「こ、これは......」



「にいちゃんは若そうだからジュリーの実と炭酸のモクテルをやるよ!まぁ餞別だと思って受け取れ」



 瓶はキンキンに冷えていて結露で少し濡れていた。左手で受け取ったので少し傷口に染みたがそれよりも嬉しさの方が上回っていた。



「これは結構キツイぜ?、まーーにいちゃんが無理ならやめてもいいがよぉ」



 少し、ピキッときた。



「今飲んでもいいですか?」



「お、おう。俺は構わんがキャニィ......いいか?」



「彼の反応が気になるし......いいんじゃない?」



 確かに、軟弱に思われる見た目はしてるけど、飲み物に臆するような僕じゃない。こう見えても昔から意味不明な液体は飲まされてきたんだ、特に畏怖する道理はないでしょ。



 瓶を空けて中身を喉へ流し込んだ。




「ゲホォォォ!!ゴホォ!!!!」



「「「「「ははははははは!!!」」」」



 キッツい!!本当は酒とかじゃないのかな!!??酒飲んだことないけど!!



「あははっ!にいちゃん弱いねぇ!俺初めて見たぜこの濃さで咽る奴」



「俺もだ」

「ワイもだぜ」

「........見た事ない......ブフっ」



「うぅぅぅ~~~~!!!」



 普通に恥ずかしい。何か分からないけど飲めるようにならないと.......



「もう!よしてよ皆!ショータは初めてなんだから!」



「お前も笑ってたじゃねぇか!キャニィさんよぉ!」



「っ!!......早く扉開いて!!!!!!」



「へいへい、誤魔化すのが下手なお嬢さんだぜ」




 そして店主さんは鍵束を取り出して酒場の奥にあった扉に向かい、鍵についている番号を確認して一つを鍵穴に差し込んだ。


 ガチャと音が鳴り扉の隙間から光が漏れ出てくる。



「ほらよ、さっさと行きな!」


「行こう、ショータ」


「う、うん........ってまた」


 彼女は僕の手を取ってその扉の前まで連れて行った。


 扉の正面に立って気付いたが。この扉、壁の上から被せてるだけのハリボテだ。本当にこれで冒険者組合に行けるのだろうか?



「じゃあまた今度帰って来たら飲みましょ」



「おう!そん時はお前の脱白歯についてたっぷりと教えてくれよな!!」



「に”ゃ”!!黙”れ”クソオヤジィィ!!!」



「ははっ!!!それじゃあな!!!」



 そして僕らは扉の奥へ入っていった。







「こ......ここは.......」


 移り変わった景色の先はトンネルの中。


 トンネルの壁には多数の扉が用意されていて、次々と冒険者らしく風貌の人達が扉から出てきては光の向かう先へと向かっていた。

 トンネルは石で出来ているようだが、普通の石じゃない。薄っすらと魔素の流れが目に見えるから恐らく魔法で何らかの細工がしてあるのだろう。



「ここは冒険者組合までの通路、各支部の入口がここに繋がっているの」



 トンネルに足を踏み入れる人の中には、僕と同じ人間もいるし、キャニィのような獣人の人達もいる。



 そして僕たちはトンネルの先に向かっていった。トンネルに入ってくる人たちはもちろん色々な場所から入ってきているので、扉の奥をつい覗いてしまう。



「こら!行儀が悪いからダメ!」



 覗くのはだめらしい。



 しばらく歩くとトンネルの終わりが見えてきた。



「ここが冒険者組合か......」



 冒険者組合の中は受付のカウンターを中心にかなり広い空間になっており

 冒険者達が依頼を受注したり何かの魔物の素材を鑑定してもらっているよう見える。


 そして特に目立つのは依頼が貼り付けられている掲示板。

 壁一面に広がっており、何人かの冒険者が依頼を吟味していた。



「じゃあ詳しい説明はあの人からお願いしようかな」



 そう言って彼女は受付に向かい、受付嬢さんと何か話し始めた。しばらく話すと何やら手招きをされた。



「あなたがショータさんですね?」



 目の前にいるのは冒険者組合の制服らしきものに身を包んだ美人な若い女性。丁寧に手入れされた金髪と丸渕の眼鏡がとても良く似合っていた。



「はい!僕がショータです」



「私は冒険者組合でガイド兼受付嬢を担当していますルリアーネです。ショータさんは冒険者組合にいらっしゃるのは初めてという事で、組合に登録予定との事ですが間違いはありますか?」



「いえ、ありません」



「ではまず始めに冒険者組合の説明をさせて頂きますがよろしいでしょうか?」



「は、はい」



「冒険者組合とは、冒険者と総称する者たちの専用の組織です。主な業務は冒険者への攻略、討伐、採取、掃除、手伝い、護衛、雑用といった各種依頼の斡旋を行い、冒険者たちから魔物の素材の鑑定と買収をしています。他にも、冒険者であることを示す冒険者キーの発行。冒険者たちの等級昇格のためのポイント集計、試験を行っています」



「は、はい」



「次に等級について話していきます。冒険者には等級、という制度が存在しています。上から順番にS級、A級、B級、C級、D級、E級、F級となります。一番最初はF級からのスタートなります。等級が上がるほど、高難易度の依頼を受けられるようになり、冒険者組合からの補償も増大していきます。例え不足の事故があった際も医療費の負担などをさせていただきます。基本的に冒険者は等級を上げることを目標としています」



「は、はい」



 え、そうなると......キャニィのB級ってすごいんじゃ......



「次は依頼についてです。依頼は主に二種類に分類され、依頼方法がそれぞれ異なります。一つは掲示板依頼。掲示板に貼られた依頼書をカウンターに提示していただくことで受注可能となります。難易度は依頼者側が指定するので、身の丈以上の依頼と遭遇する場合がありますが、D級,E級,F級の依頼が多いので駆け出しの冒険者はほとんどこちらの依頼を受注されます」



「なるほど」



 掲示板依頼は一般の人が出すから必然的に等級が低くなるってことなのか......そうなるとお手伝いと言う名目の採取とか掃除が主なクエスト内容になるのかな。



「二つ目は指定依頼。冒険者組合が危険度や受注出来る等級を選定して発注される依頼です。基本的に依頼難易度は高くなりますが、その分の報酬やポイントは多くなっています。主な依頼は迷宮依頼や指定討伐依頼です」



「討伐依頼って等級どれぐらいから発注できますか?弱くてもいいので」



「そうですね.......スライムやゴブリンならF,E級くらいから掲示板依頼で発注できるかと思います」



「分かりました」



「はい......では冒険者登録に移りますがよろしいでしょうか」



「え!?」



「手筈通りお願いするね、ルリおば......ルリアーネさん」



「いやちょっと待って!心の準備が!!」



 いやいや聞いてない聞いてない!!!!

 今日は見学のつもりだったんだって!

 まだ冒険者になるのは早いって!



「では早速試験致しますのでついてきてください」




「あのぉまだ「ついてきなさい」......はい......」

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