05【私の幼馴染】


 ――私はよく完璧な人間だと言われる。





 漆のような赤みがほんのりと目立つ黒髪に、透明感を感じられるシミ一つ無い肌、ぱっちりとした目、綺麗に整った鼻筋、黄金比の造形美。


 モデル顔負けの肉体美、他を置き去りにする圧倒的な美貌は数多の視線を奪う。


 部活動には所属していないが、助っ人として数々の大会にて優勝を収め、勉学に関しても全国トップレベルの点数を取る事が出来る。


 誰にでも親切丁寧で、弱者に優しいその性格に老若男女問わず誰もが憧れる理想の人。


 両親も大企業に務める超エリート一家。






 それで?........その格付けレッテルが何になるの?






 他人によって勝手に都合良く解釈した私は、推敲で気高い人間のように称されているが



 そんな訳がない。



 優等生をしているのは人心掌握の為、あらゆる不利益を揉み消す為だ。


 私は既に両親の10倍以上の資産を保有しているので別に両親は世間体の為でしかない。


 別に顔だってこんなに整わなくても良かった。

 こんなに胸もお尻も大きくなくて良かった。


 そのせいで身の程知らずがまだ告白してくる

 何回も何回も私に近寄ってくる。



 ――私はただ翔太に触れて欲しかっただけ



 翔太がいればそれでいい、何をしていても幸せだった、別に行為をしていなくとも傍に居てくれるだけで体が火照って止まらなかった。



 ――翔太さえ傍に居てくればそれで良かった



 彼の好きなモノが知りたかった、私の好きなモノも知って欲しかった。一緒のモノを好きになりたかった。



 ――ただ誰よりも彼のことが好きだった



 翔太の目に私以外が映るの事が本当に気に食わなかった。翔太に近づく女子は全員黙らせた。変な女が出てくるから、漫画も本も動画も極一部しか見せなかった。



 ずっと私だけを見ていていれば

 それで良かったのだ。






 なのになんで?






「あっ゛.......あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ッ!!」





 私は今起きたことが信じられない。

 嘘だと言ってほしい。




「翔太ッ......あ゙ぁな゛ん゛でぇぇ゛」





 翔太が私の目の前で




 突然別の方向へ歩き出したと思ったら次の瞬間には大通りに向けて走り出した。


 咄嗟に手を伸ばしても届かない。私は肩を掴んで止めようと走った。けど追いつけなかった。


 100m11秒代の私でも体を少しかすめただけ、翔太はトラックの走る方へ飛び込んでいった。



「お゛え゛」



 今でも鮮明に思い出せる。跳ねられた瞬間、背骨が有り得ない方向に曲がり、赤い血潮を吹き出しながら跳ね飛ばされる翔太の姿が.......




「はーはーはー......なんで、なんでなのッ?」



 結果、翔太は死んだ。



 何を間違った?

 どうして?

 なんで?




「なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?どうして?なんで?なんで?どうして?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?どうして?なんで?どうして?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?どうして?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?どうして?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?どうして?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?どうして?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?どうして?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?どうして?なんで?なんで?」








 嘆いたところで彼は帰ってきてくれない。



 とりあえず私は慌てて降りてきたトラックの運転手に10発ほど弾を撃ち込んで絶命させた。



 そして私はこれからどうすればいいのか



 震える手を抑えながら翔太の温もりを必死に思い出す。今少しでも忘れてはいけないのは翔太だ、少したりとも忘れる訳にはいかない。




 ――幼い頃に今と同じことを考えた時があったのをふと思い出す。




 Q.何か一つだけ手に入れられるとしたら何が欲しいですか?



 小学校4年の時に投げかけられたこの質問

 私は迷いもなく翔太と書いた。



 それを見た先生が



「翔太君も歩乃華ちゃんに愛されて幸せだと思うよ!二人はいつも一緒で仲もよくて本当に羨ましいな。続く愛になるのを先生祈ってるよ!」



 私は幼いながら絶望したことを覚えている。


 ずっとというのは二人が生きている間なわけでどちらかが死んだら離れ離れになってしまうのではないか?



 その後老衰したとしても失った

 何年間は戻らないのでは?と


 ならば彼と1秒でも長く一緒にいるために

 最も合理的な手段とは何か?



 私はその答えをその時に決めていた。





のね」





 そうと決まれば話は簡単


 早く家に帰って

 自殺の準備をしよう。


 そうすれば彼に会える。



「待っててね翔太、すぐに会いにいくから♡」










〈あとがき〉


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