02 ︎︎僕の幼馴染
僕の耳元を通り抜ける艶声、まるでそれは蛇の如く僕に絡みついて離れない。
「ど、どこから入って.......」
「翔太、また鍵変えたよね?今週で2回目だよ」
「そ、それは」
「私だってピッキングするのはどうしても時間がかかるの........10秒くらい」
10秒?ありえないだろ......
「鍵のせいで翔太との時間が10秒も失ったんだよ??」
「10秒........も?」
「そうだよ?翔太とは24時間365日いつでもどこでも一緒にいたいの。例えお風呂でもトイレでも一人でしていても......ね」
僕は幼馴染が人の皮を被った悪魔に見えた。
恐怖のあまり思わず後ずさる。
「ねぇねぇねぇねぇ?なんで逃げるの??まさか隠し事でもあるの???」
「え?そんなもの.....」
「翔太のことは何から何まで知らないと気がすまないの。好きなタイプ、好きな料理、好きな漫画、好きな曲、好きな髪型、好きな場所、好きな番組、好きな配信者、好きな体勢、好きな行為、好きな行動、好きな人、身長、体重、各部の長さ、太さ、重さ、毛の本数、トイレの回数、爪切りの回数、瞬きの回数、笑顔の回数、自慰の回数とかね」
「う........うん」
「だからね?」
そう言って幼馴染はゆっくりと僕の体に触れる。心臓から首筋を伝って頬までその手は滑るように動く。
「隠していることがあるなら全部言って♡」
「僕は何も隠してない、ずっと一緒にいるんだから分かるだろ?」
「いえ翔太は隠しているわ。間違いなく」
「毎日僕の家を隅々まで見ている癖によくそんなことが言えるね」
「私には分かる......毎日、毎日、毎日あなただけを見ているから」
狂っている。
そう思わずにはいられない、気持ち悪い、吐き気が込み上げてくる、ここから離れたい。だがそれを許さないと言わんばかりに
「......言いがかりだ」
「翔太は愛が何をもたらしてくれるのか全く理解出来てないわね」
「愛?管理の間違いだろ」
「今日はやけに反抗的ね。そんなにおじい様達が死んでしまったのが辛いの?」
「当たり前だ!僕の心の支えだったんだぞ!」
「翔太の心を支えているのは他でもない私でしょ?何を言っているの?」
「心の支え?逆だ!お前が僕の心を狂わせているんだよ!!!」
「ふぅーん、そんなに私を拒むんだぁ......」
「ひっ......」
僕は声にならない悲鳴をあげた。
植え付けられた恐怖が、否が応でも体の震えと過呼吸を引き出してくる。
出来るだけ無反応を貫くのが僕にできる唯一の抵抗だろうと腹を括る。
「なら体で分からせてあげるわね♡」
ああ、情けない。
唇を噛み締めて己を呪った。
〜〜〜〜〜
「痛っ..........体もボロボロだ」
あの後、僕は発情した幼馴染に襲われた。
その結果、深夜まで永遠に搾り取られることになった。
体にはまだ昨日の甘ったるい甘味と昇天するような絶頂の感覚が残っている。だが僕からすれば悪魔に体を弄ばれたようなものだ。
「明日も登校日なのに.........あの女......」
「当たり前でしょ?愛してるんだから」
「!!!」
「おはよ翔太♡」
先程まで一切の気配を感じなかったのにも関わらず、突然この女は現れた。
「いるよな......やっぱり」
「何言ってるの?昨日からずっっっっと一緒に居たでしょ?」
確かに朝起きてからは目に見える範囲にはいなかった。だがこの女のことだ、ありえないところに隠れて僕をずっと見張っていたんだろう、浮気に値する行為をするかを。
「それじゃ行こうよ!翔太!」
「分かったよ......」
「ふふん♪ふふん♪」
「.................」
何の変哲もないもない通学路
僕らの通う高校までは歩いて2分もかからない。
この時間帯は人も車通りも少ないので誰とも何とも遭わずに学校に行ける。
おかげで平和を保つことが出来ている。
だから今日も誰も傷つかずに登校でき
「あ、野良猫だ」
なかった。
「翔太の視界に入るなよ......翔太が私以外を好きになったら......殺すよ?お前」
コイツはバックから
おもちゃで使われるエアソフトガンと違い、狩猟などで使われる空気銃を持ち運び安く改造した物。
当然、これは違法だ。
たが咎めることが出来ない。
ちょうど三発分
コイツは道を歩いていた野良猫に撃ち込んだ。
「.................」
野良猫は動かない.......
腹部に一発と頭部に二発撃ち込まれた弾で絶命していたからだ。
(ごめんね、僕に遭ったせいで........)
「よし、死んだわね......行こっか!翔太!」
「う......うん」
人でも物でも何もかも、
僕の興味を引くものを片っ端から潰す。
(特に女性)が関わったら即刻僕含めてワカラセられる。
だから僕に友達はいない
僕に近づいただけで優等生な彼女は修羅へと変貌し、いつも振りまいている笑顔が般若の如き顔へ変わり牙を剥くからだ。
そして彼女はトラウマを植え付けて二度と僕に近づかないようにする
その仕打ちに耐えきれずに心を壊した人も多く
何人もの人が退学し転校になりトラウマを引きずりながら学校を後にした。
勿論彼女に何のお咎めはない。先生や生徒を含め殆どが彼女の味方だからだ。
アイツが話しかけなければ、アイツと関わらなければ、アイツが居なければ
去っていった誰もが僕の前ではそう口にしなかったが、内心そう思っていたに違いない。
だが実際そのとおりだ。僕は皆からすれば疫病神に等しいのだから。
謝れるなら何度でも謝りたい
その機会すら
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