第6話 隆と生物

「あっ!」

生物から隆が出てきた。

隆は呆然としている。

生物が隆の顔を覗き込むようにして聞いてきた。

「退屈だったかい?」

隆は首を何度も横に振った。

「ビックリしたけど、面白かった。ねえ、僕は、どうしてここに居るの」

もう、怖くはない。

「君の心と身体が、とても疲れているからだよ」

隆は思い出していた。小学校に入るための受験があって、合格するために

遊びたい思いをずっと我慢してたりしていた。いろいろな経験をすることは

面白いけど、大変だったりもする。わりと何年も本当の気持ちを感じても、表現することはなかった。そのうち忘れてしまっていたんだ。隆の目から大粒の涙がぽろぽろ零れ落ちた。


生物は隆を優しく抱き寄せ、つぶやいた。

「大丈夫?」

「うん。疲れていたことも忘れていたよ。僕、朝礼で倒れたんだよ。思い出した」


「君はどうしたい?このまま僕と一緒に居る?それとも家に帰る?君のことは君が決めていいんだよ!神様でも、君の両親でも、友達でもない。君が決めるんだよ!」

隆は生物の顔を見上げながら、即答した。

「君といるのも楽しそうだけど、僕は家に帰るよ!今度は大切なことを決して忘れないように!」

「そうだね。その方がいいと思うよ。お母さんが待っているよ!」

「うん!ありがとう!」








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