第4話 僕は僕

そうか…僕は僕なんだ。

生物がポツリとつぶやいた。


ふと下を見下ろすと、雪の中にぽっかりと穴が開いていて、僕が生まれてきた場所が見えた。

「帰ろう」

胸がぎゅっとなって、すごく帰りたくなったんだ。


隆はお日様からやっと解放されて、ほっとした。


生物は、まだうまく使えない翼を懸命に操って、自分の生まれた場所に向かっている。

「さっきまで飛ぶの上手だったのに、下手になってる!」

「わたしたちが手伝っていたからね!」

風がそう言った。

「どうして?」

「自分の力で戻りたいんだ!自分を信じようとしている!すばらしい!」


なんとか、帰ってきた。とても喉が渇いていることに気づいて、

積もった雪を掬って口の中に入れると、ふわっと溶けて、すぐに潤った。

なんだか嬉しくて涙が出てきた。


その様子を隆は、すぐ側の上空から見ていた。

生物の気持ちが伝わってくる。

隆もほんの少し泣いた。


生きてるっていいなって、深く深くそう感じた。

隆にも同じ思いが、流れてくる。


ふいに光が通り過ぎた。

あちらこちらに色とりどりの丸い光が見える。

大きさは大小さまざまだ。

淡い光は、どれもとても綺麗だ。


隆はいつの間にか、生物と重なっていた。

生物の中で同じ体験をしている。


水色の丸い光がこっちに来る。

捕まえたくて追いかけるけど、逃げられて、なかなか捕まえられない。


そのうち光がどんどん強くなって、眩しくて目を開けていられなくなった。

しばらくして、目を開けてみると、丸い光は消えてしまっていた。


水色の鈴が付いた青色のネックレスが首にぶら下がっていた。

さっきまで追いかけていた水色の光は、鈴になって僕の側に居てくれること

がわかった。とても嬉しい。

でも…答えはまだわからない。

僕はどうして生まれてきたんだろう…


辺り一面が暗闇になった。


どうすればいいんだろう…

一人ぼっちは心細い。不安が広がっていく。

胸に付いている鈴を握りしめる。

その時、生物のしっぽの先が、ポワンと光り始めた。

しっぽはどんどん明るくなって、お日様を呼んでくれたんだ。

ずっと高い所から

「やあ」って声をかけてくれた。

僕の胸の中に暖かさが広がって、不安と心細さが消えたんだ。

お日様ありがとう!しっぽもありがとう!


両手を胸に当てて、その暖かさをじっと感じていると、僕は僕の中を旅し始めていた。


生物は僕で、僕は生物…僕は僕





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