第3話 月と太陽

木の上に居たはずなのに、生物の話と同じ体験をしている。


隆は、なんとも情けない自分の姿を見て、がっかりしたが、ゲームみたいで

面白くなってきた。


「君もさ、ビックリしただろう。僕を見たとき。僕もビックリしたよ!」

隆はあらためて、まじまじと生物を見た。


どら猫のような顔立ち、額に菱形の文様、ふさふさの毛は金色に光っている。

背中には翼があり、しっぽは結構長くて先が丸い。

生物はしっぽをぶらぶたさせた。

見られてまんざらでもないようで、星の鏡で何度もポーズを変えながら自分自身を見ている。


「これが僕さ!そして気づいたんだ。僕には銀色の翼があるんだって!」

生物が自信満々でこちらを見た。

「僕にもあればよかったのに…」

でも、隠せないから仲間外れになっちゃうかな…


生物は隆の言葉など耳に入らなかったみたいに、話し続けた。

「だけど、飛んだり走ったり踊ったりしてみたけど、背中の翼は動かせなくて…

困っていたら、通り過ぎていくだけだった風さんが教えてくれたんだ」

「さあ乗って!運ぶのは僕たちさ!」

そうだ!さっき自分も運ばれた!


「身体がさ!突然空中に浮かんだんだよ。だから、お空に浮かんでいるお月様の所へ

行ってみることにした」

生物は翼を使って飛んでいるが、時々方向を間違えたり、違う星が気になったりで、

なかなかお月様までたどり着けない。隆は風に運ばれて楽々月まで行けそうなのに

生物の寄り道に付き合っている。確かに魅力的な光景が広がっているのだ。

遠くに違う銀河が見えたり、未確認飛行物体が横を通り過ぎたり、誘惑される気持ちはわかる。


「ねえ、そろそろお月様のところへ行こうよ」

「そうだった!ごめん、急ごう」

やっとお月様と話せることろまで、たどり着いた。


「ねえ、お月様…僕は何をすればいいのかな?」

隆は月の大きさに圧倒されている。


お月様はちょっとだけ笑って、答えてくれた。

「心配しなくても、君の身体がみーんな知っているよ」

生物はじっと考え込んでいる。

身体が知ってる?どういうこと?


「わあ!」

悩んでいる生物の身体が急に動き出した!

そのあとを風さんが隆を運んでくれる。


だんだんと眩しくなって目を開けていられない。

隆は、ぎゅっと目をつぶった。


生物は平気らしく、お日様に話しかけている

「ねえ、お日様!僕は何のために生まれてきたの?」


お日様はちょっと困った顔をした。でも答えてくれた。

「君の生まれたわけを、このわたしが知っているとしたら

わたしはわたしでなくなってしまうよ」

そう言うと、自慢げに真っ赤な炎を出して見せてくれた。


隆は、暑くて眩しくて、ほとんどよくわからなかったけど

重低音のお日様の声が身体の中に、響き渡った。





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