終幕

それから数ヶ月。

制服姿の少女は来なくなった。

もしかしたら、我に話していた友達と遊んでるんだろう。

少し寂しく思えてしまうのだ。

きっと忙しいのだろう。

通学路で見かけた時はとても楽しそうだったから良いのだが、一緒に喋ってる子は、少女に対し甘い言葉でしかない。

都合のいい言葉に偽りの優しさが包んでく。

詐欺師と一緒じゃないか。

ある日、制服の少女は来て我の前で懇願する。

「お狐さま!お狐さま!友達と一緒に居られるようお願いします!!」

境内に響き歪んだものが覗かせてく。

人の目を伺い、合わせ、気を使う友情なんて本物では無い。

そんな物に縋り希望を託してしまうなんて人間て愚かなものだ。

制服の少女は深呼吸をしてから居なくなった。

日が経ち、どんどんと我の所に来るのが増えてった。

忙しく無くなったのだろう。

だが友達との関係が続くよう願うことが増えたという変化はあった。

相手の気持ちなんかより自分の事を言えばいいのに。

それから涙を流しながら制服姿の少女は来た。

最初に会った時と同じように雫をボロボロと流し、発狂するかのように云う。

友達に裏切られたと......。

いつも私のことを好きだの、母親紛いの発言をし優しかった。

だが、深夜に他の人と私の悪口を言い。

話したはずの約束を無かったことにして責めて来た。

友達はそんな子ではないのに。

なんで酷い事をするのと我に聞かれても真しか言えない。

少女が言う友達はそんな気はしていた。

人間は己の良い所を写そうと精一杯で悪い所を隠す。

業と辛い立ち位置に居る奴を助け裏切るて事もする。

だからこそ人間は面白い。

だが、これから出会う友達はそんな奴はいない。

「ねぇ、私を狐様の所に連れてって」

目には光なく黒に包まれ、悲劇を生み出すような顔をしている。

これは絶望と云われるものか。

しょうがない。

少女の言う通りにしてやろう。

紅葉が風に舞ってくと制服姿の少女は消えてった。

人はそれを神隠しと呼んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

狐と神隠し 耀月菊 @kuro35

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ