狐と神隠し

耀月菊

序幕

「お狐さま。お狐さま。私、学校でいじめられるの助けてくださらないかしら」

狐の石像の前で制服姿の少女は云う。

どこか沈んでるような藍に溶け、黒を塗ったような面持ちだ。

これは人間の感情で悲しみと言われるものだろうか。

初めて見た。

足には痣があり腕には切り傷。

毎日付けられたかのような跡がある。

そおゆう事がある人間は悲劇を起こすとあるが、それは真なのか。

数分して少女はフラッと何処か行ってしまった。

次の日

また制服姿の少女はやってきた。

「お狐さま。お狐さま。私、母にクラスメイトと勉強を比べられて辛いの。私なんて非凡な才能がないのよ。才能あったらなんてもしも話を考えてしまうの。どうしたらいいのかな」

ボロボロと雫が流れていった。

制服は雫を受け止めてく。

この人間は学校でいじめられ、母親に恵まれないのか。

我に云っても何も出来ないというのに愚かだ。

そんな事が分からないからここに居るんだ。

神様や我の事を知らずに自分勝手に拝め世界は回っているのだ。

わざわざここに来て居るんだ。

少しは縁でも出してやろう。

次の日

宵の闇を月が照らす頃に少女は来た。

「お狐さま!お狐さま!私がずっと欲しかった友達が出来たのよ。その方はいじめから救ってくれて嬉しくて堪らないの」

クルっと回り今までに見た事がない笑顔だ。

黒髪から薫る椿の匂い。

その子が云う友達の特徴は我が出した縁と違うものだ。

我が出した縁は遠くの物になったのか。

神はようやるな。

なんとなくその子は付き合っては行けない気がした。

どうやって伝えようか。

風を呼びつけても自然現象で終わってしまう。

見守るしか出来ない。

そんな我が悔しい。

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