第12話 ベルトルドからの依頼・3

「仔犬に戻っていいよ、フェンリル」


 フェンリルは目を伏せると、身体は銀色の光に包まれ、萎むように光が収縮する。そこには仔犬に戻ったフェンリルが座っていた。

 キュリッキはフェンリルを抱き上げると、小さな頭に頬ずりした。


「見事だな…。本当に見事だ」


 ベルトルドはゴクリと唾を飲む。アルカネットたちは呆けたように固まっていた。

 この世界には超能力サイや魔法などの、超常の力を扱う者たちがいる。自身もルーファスも超能力サイを使い、アルカネットもカーティスも魔法を使う。その〈才能〉スキルを持っていなければ、到底扱うことのできない力だ。

 しかし召喚〈才能〉スキルは、それらをも軽く凌駕する素晴らしい力だ。キュッリッキが入団テストで見せた召喚、そしてこのフェンリル。超能力サイや魔法など比べ物にならない。

 〈才能〉スキルとは、この世界の人間たちに、生まれたとき”一つだけ”授けられる突出した能力の事を言う。

 人間たちの持つあらゆる能力は、必ず平均水準で止まる。どんなに磨いても、練習しても、絶対その域を超えることができない。

 料理が上手くなりたいと練習を積み重ねる。でも、どんなに練習しても平均水準以上の料理は作れない。その人間が授かった〈才能〉スキルは音楽系楽器演奏だった。楽器は練習しなくても最高の音を出し、練習すれば更に素晴らしい音を紡いだ。そこが、〈才能〉スキルの有無を決定づけるのである。

 〈才能〉スキルは一人一つ必ず授けられる。そして〈才能〉スキルは遺伝しない。稀に親と同じ〈才能〉スキルを授かる子供もいるが、それは遺伝ではなく偶然だ。

 こうした〈才能〉スキルには特殊なものがあり、魔法、超能力サイ、機械工学、召喚の4種類を指す。これをレア〈才能〉スキルと呼び、うち、魔法、超能力サイ、機械工学は百人に一人の確率、召喚は一億人に一人の確率でしか生まれてこないと言われていた。そして召喚〈才能〉スキルのみは、この〈才能〉スキルを授かった子供が現れると、生国が家族ごと召し上げ安全で裕福な暮らしを生涯約束する。数があまりにも稀だからだと言う理由で。

 一般に広く知られる召喚〈才能〉スキルとは、伝説上の神々の住まう世界アルケラから、あらゆるものを召喚して使役する事。そう伝わっていた。

 伝わっているだけで、実際目にする事ができる機会はほぼないのが現状だ。

 このハーメンリンナにも、召喚〈才能〉スキルを持つ者たちが集められている。

 ベルトルドとアルカネットはその者たちと面識を得る機会があったが、キュッリッキのような素晴らしい召喚を見せてもらえたことはない。一般に伝わる噂がひとり歩きしているだけの、珍しいだけの〈才能〉スキルだとばかり思っていたがそうではなかった。


「おいで、リッキー」


 ベルトルドに手招きされて、キュッリッキはベルトルドの前に立つ。


「本当に、良い子だリッキー!!」

「きゃっ」


 素早くキュッリッキの身体を抱き寄せ、ベルトルドは自らの膝の上にキュッリッキを座らせた。


「今日は俺と一緒に寝よう、な、リッキー」

「え、えっ」

「何をしているのですかイヤラシイ! 今すぐリッキーさんをお放しなさい!」


 アルカネットが血相を変えてベルトルドの胸ぐらをつかんだ。


「手癖も女癖も悪いんですからあなたという人は!」

「リッキーが誤解をするような言い方をするな!」

「いや、事実な気が…」

「がるるるるる」

「ヒッ」


 ベルトルドに睨まれて、ツッコミを入れたルーファスは首を引っ込めた。


(えーっと…アタシ、今日はここにお泊まりなのかな?)


 ベルトルドの膝の上にしっかりと座らされたままのキュッリッキは、ベルトルドとアルカネットの喧嘩を間近で見ながら、どうすればいいのか肩をすくめた。


(でもお仕事もらったし、アジト戻ってみんなで相談だよね。こんなすごいおやしき初めてだけど、みんなで相談するほうが大事だもんなあ)


 キュッリッキは延々口喧嘩をするベルトルドとアルカネットを見つめ、ひっそりと溜め息をついた。


「ベルトルド卿、アルカネットさん」

「なんだ」

「なんですか」


 2人に険悪な目を向けられカーティスは怯みかけたが、生唾を飲んでグッと踏ん張る。


「キューリさんを放して下さい。我々はアジトに戻って、今回のご依頼を仲間たちと相談しますから」

「おう、貴様らはとっとと帰っていいぞ。だが、リッキーは俺のいえにお泊まりだ」


 カーティスには冷たい一瞥、キュッリッキには甘甘な笑顔を向けて、ベルトルドは更にキュッリッキを抱きしめる手に力を込めた。

「ああ、鬱陶しい」という気持ちを込めて、カーティスは露骨すぎる溜め息を深々と吐き出した。


「ダメです。キューリさんはもう正式に我々の仲間です。打ち合わせにも一緒にいないと、後々みんなで困ります」


 キュッリッキはハッとなった。


(我々の……仲間。…アタシの仲間)


 カーティスの言葉が、なぜか胸にくすぐったい。『仲間』という言葉はなんと心地よく聞こえるのだろう。そして、じんわりと沁みるように、嬉しさが足元からこみ上げてきた。


(なんだか、心臓がムズムズしちゃうの…。嬉しく思っちゃう気持ちが不思議だけど、とても心が温かい)


 喜ぶ気持ちが顔に現れているキュッリッキを見て、ベルトルドはチラリとアルカネットに目配せする。アルカネットも伺うようにキュッリッキの表情かおを見て、小さく頷いた。


「仕方がないな」


 ベルトルドは至極つまらなさそうにわざとらしい口調で言うと、キュッリッキをそっと膝の上から解放する。そしてキュッリッキの右頬に優しく手を添えた。


「今日はリッキーと一緒にお風呂に入って、食事して、しっぽり甘い夜を過ごせると思っていたんだがな」

「断固阻止します」

「フッ、お前如きに邪魔される俺ではないぞ」

「なんなら、ここでぶっ殺してでも、阻止するという方法もあるのですよ?」


 再び白熱しかかる2人にキュッリッキは、


「喧嘩しちゃ、ダメなの!」


 そう眉を寄せて、ずいっと身を乗り出した。これには2人共「んぐっ」と黙り込む。


「お仕事が終わったら、遊びに来るね」


 神妙な顔をしていたキュッリッキは破顔すると、白い歯を見せてニカッと笑った。




 ベルトルドに付き添われて、キュッリッキ、カーティス、ルーファスは玄関ロビーに移動した。


「そだ、ベルトルドさん、この子渡しておくね」


 キュッリッキはいつの間にか両手で大事そうに持っていた、青い小鳥をベルトルドの肩にとまらせた。


「その子とこっちの子が繋がってるから、遠くにいてもこの子たちを通じて、いつでもお話できるからね」

「おお、それは便利だな。ありがとう、リッキー」

「どういたしまして」


 嬉しそうに微笑むベルトルドに、キュッリッキは屈託なく微笑み返した。

 今回の仕事でお互いの連絡用に何か欲しいとベルトルドに頼まれ、応接室から玄関ロビーに向かう途中に召喚したものだった。

 青い小鳥は毛玉のように、ふっくらと丸く膨らんでいる。見た目は冬の季節の中のルリビタキのようだ。ベルトルドの横顔を見つめるつぶらな瞳は、朱を帯びた赤い色をしていた。ベルトルドの肩の上で小さく跳ねながら、収まりのいい位置を探している。

 キュッリッキが手にしている小鳥は、ルリビタキのような容姿だが、羽根の色が桃色がかった赤をしていた。

 赤い小鳥はキュッリッキの手の中から飛び立つと、フェンリルの頭の上に降り立って、脚をかがめて目を閉じた。どうやらそこが、一番おさまりがいいらしい。フェンリルは迷惑そうに鼻を鳴らした。


超能力サイが使えるんだし、ベルトルド様には必要ないんじゃ?」


 ルーファスが思ったままを口にすると、獲物を噛み千切りそうな狂気を孕む目でギロリと睨まれた。


「いいじゃないか!」

「ヒイッ」


 ルーファスは素早くカーティスの後ろに隠れた。


「子供じゃないんですから”いいじゃないか”はないでしょう。もうちょっと言い方があるでしょうに全く」


 大事なものを取ってくると言っていたアルカネットが、呆れたように小言を口にしながら玄関ロビーに姿を現した。


「お待たせしてすみませんリッキーさん、これをお持ち帰り下さい」


 アルカネットは水色のやや小さめの紙袋を手渡した。中には虹色の綺麗なリボンでラッピングされた、焼き菓子やチョコレートの袋が入ってた。


「うわ、ありがとう」


 嬉しそうにキュッリッキが目を輝かせると、アルカネットは優しく微笑んだ。


「そして、これもお渡ししておきますね」


 掌に収まるくらいの薄い小さな白い板に、キュッリッキとベルトルドの名前、見知らぬ名と印が押捺されている。縁は金で装飾されてた。


「これはなあに?」


 キュッリッキが首を傾げると、ベルトルドがにっこりと答えた。


「ハーメンリンナの通行証だ。好きな時に、いつでもハーメンリンナに来れるぞ」

「わあ~」

「この穴に紐などを通して、首にかけられるようにしておくといいでしょう」

「はい」


 両手で通行証を持って、キュッリッキは顔を輝かせた。足元に座るフェンリルも、興味深そうに首を伸ばしていた。


「今度いらしたときは、街をご案内して差し上げますからね」

「やった~! 楽しみ!」


 無邪気に喜ぶキュッリッキを見て、アルカネットは更に笑みを深めた。


「俺が案内する!」

「あなたは仕事があるでしょう。山のように、デスクの上にドッサリと山脈を連ねて」

「ぐぬぬ…」


 アルカネットに負けじと身を乗り出すが、書類の山脈を思い出して、ベルトルドはげんなりと肩を落とした。




 キュッリッキ、ベルトルド、アルカネットの3人の様子を離れた位置から見ていたルーファスは、カーティスに小声で話しかける。


「あの通行証…、見せれば即パスの特別製だよね。皇王様のサイン入りの」

「ですねえ。一部貴族や高官専用のですよ。我々の通行証よりも、セキュリティ度が高いものです」


 カーティスとルーファスは、ヒソヒソと小声で確認し合った。

 ハーメンリンナに入るための通行証には、いくつかの種類がある。キュッリッキが渡されたものには、皇王のサインが入っている。本来上流貴族の中でも特権中の特権を持つ一部の貴族と、宰相や副宰相などの地位にある者しか携帯を許されない最高ランクの通行証だ。


「キューリちゃんへの愛情を感じる」

「深いですねえ。可哀想に…」


 渡された通行証がそんな凄いものとは、キュッリッキは当然知らないことだろう。


「ですが、本当ならキューリさんは傭兵などしなくてもいい身分だったはずです」

「だよね。事情は判んないけど、召喚〈才能〉スキルを持ってるのに、なんで放置されてたんだろう」


 召喚〈才能〉スキルを授かった子供は生国が家族ごと召し上げ、一生安全で裕福な暮らしを約束される。危険と隣り合わせの傭兵などしなくてもいい身分なのだ。

 ライオン傭兵団でもそのことが引っかかって、当初仲間たちで議論された。

 召喚〈才能〉スキルを持つ少女を、傭兵として扱っていいものだろうかと。そのことが国にバレた時、何も問題は起こらないか、などだ。


「ベルトルド卿自らスカウトしてきたのだから、彼女の背景事情も全て判っているはずです。それであえて傭兵として扱うのであれば、我々が心配することはないと思っていますが」

「万が一の時は、ベルトルド様に丸なげでいいよね~」

「です」


 召喚〈才能〉スキルを持つ者は、国の保護のもと市井に出てくることはない。珍しいケースではあるが、キュッリッキの存在は貴重だ。問題ごとにならない限り、その力は存分に振るってもらうまでだ。


「さて、もういい時間です。帰らないと」

「ンだね。――キューリちゃん、そろそろ帰ろう~」

「はーい」


 ルーファスに呼ばれて、キュッリッキは笑顔で返事をした。


「もう帰るのか、寂しいな」

「また遊びに来るよ。通行証も作ってもらったし」

「うう…リッキー、本当に本当に、良い子だ!!」


 ベルトルドはガバッとキュッリッキを抱きしめ、これでもかと頬ずりした。


「まったく手が早いんですから! お放しなさい!!」


 アルカネットはベルトルドの首を両手で掴むと、殺す勢いで絞め上げた。

 されるがままのキュッリッキは、どうしていいか判らず口の端を引きつらせていた。




 帰りはゴンドラではなく、地下へ案内された。


「もう少ししたら、門の近くまでの定期便が来るでしょう」

「ありがとうございます、アルカネットさん」


 カーティスとルーファスが、アルカネットに丁寧に頭を下げる。


「それではリッキーさん、また会いましょうね」

「お土産ありがとう」


 アルカネットはニッコリ微笑むと、キュッリッキの柔らかな頬にキスをした。


「こらー! アルカネット!!」


 ベルトルドが後ろで喚くが、アルカネットは涼しい顔でフッと鼻の先で笑うだけだった。


「い、行こうか、キューリちゃん」

「うん」


 ルーファスに手を引かれ、キュッリッキはベルトルドとアルカネットに、もう片方の手を振った。


「またね~」


 まるで今生の別れのような顔をするベルトルドと、優しい微笑みをたたえるアルカネットに見送られ、3人は帰路に着いた。




「ハーメンリンナの地下って、凄いんだねえ~」


 地下は大きな通路が走っていて、天井もとても高くて圧迫感がない。天井も壁も真っ白で、壁と天井の一部が明るい光を放っている。床には毛足の短い赤い絨毯が敷き詰められて、外と全く変わらない明るさに満ちていた。


「地下は全部こんな感じなの?」

「そうだよ~。迷わないように標識もあるし、換気もきちんとされてるから、空気がこもったりせず臭いもしないでしょ」

「うん」

「地上が歩けずゴンドラなもんだから、こうして地下は徒歩で移動できる通路と、乗り物で移動できる通路の、二重構造なんだよ」

「そうなんだあ」


 地上を滑るゴンドラには、着飾った貴婦人や身なりのいい紳士しか見なかった。しかし地下の通路では、軍服を着た人々と多くすれ違う。


「こっちだよ、キューリちゃん」


 すれ違う人々も珍しげに見ていたキュッリッキを、ルーファスが苦笑気味に手を引っ張る。

 3人は更に地下に降りる。そしてそこも上の地下通路と変わりなく明るく、床だけは絨毯が敷かれていない剥き出しの白い床だった。

 軍服を着た人たちが列を作っている最後尾に3人は立つ。


「これから、凄く珍しい乗り物に乗るよ」


 ルーファスが意味深にウィンクすると、キュッリッキは何だろうと目を瞬かせた。

 並んで待つこと数分、突然細長い箱のようなものが風をまとって静かに現れた。


「!?」


 キュッリッキはビックリして箱を凝視する。


「さあさあ、乗りますよ」


 カーティスに笑い含みに促され、手を引かれるままキュッリッキは箱に乗り込んだ。

 最後にキュッリッキが箱に入ると、箱のドアが勝手に閉まった。


「きゃっ」


 キュッリッキはルーファスにしがみついて、ひとりでに閉じたドアを訝しげに見る。

 おっかなびっくりな態度を隠しもしないキュッリッキに、カーティスとルーファスは必死に笑いをこらえていた。

 走り始めた細長い箱の中は少しも揺れないし、音も静かだ。乗客たちの談笑する声くらいしか気にならないほどに。


「ねえルーさん、これなんなの?」


 ルーファスにしがみついたまま、キュッリッキは僅かに身体を震わせた。


「ははっ、そんなに怖がらなくていいよ」

「これはリニアと呼ばれる車輛です。地上を滑るゴンドラと似たようなシステムで動いているそうですよ」

「リ…ニア?」

「ここハーメンリンナはとにかく広いですから、あちこち移動するのにとても時間がかかります。なので徒歩移動できる地下通路と、リニアの走る地下、そして馬車などが通れる地下通路があります」


 そうカーティスに説明されても、キュッリッキにはチンプンカンプンだ。


「世界中のドコを探しても、タブン、こんな凄いモノはハーメンリンナにしかないと思うよ~」

「そうですねえ。電力といったものは、我々の生活圏にはあまり馴染みのないものですが、ハーメンリンナには当たり前のようにあるんですよ。地下通路を照らす明かりも、空気の喚起も、こうしたリニアも。車内明るいでしょう。これも電力によるものなんです」

「……ふにゅ」


 皇都イララクスの公共施設や街の一部などに電力は供給されている。しかし一般家庭などには、全く無縁のものだ。


「超古代文明の遺産や何やらを、機械工学〈才能〉スキルを持った人たちが、解明して復元したり作ったりして利用されてるんだよ」

「ふ、ふむり」


 2人に説明されても、キュッリッキの脳内では処理しきれない。表情にありのまま現れているものだから、ルーファスはおかしそうに微笑んだ。


「まあ、ハーメンリンナだけは別世界、そう覚えておけばいいさ」


(確かに、別世界かも……)


 今度は何が起こるか判らず、キュッリッキはルーファスにしっかりとしがみついて、不安げな視線を辺りに投げかける。

 車内は混みあっていて、3人はドア付近に立っていた。

 車窓からは目を引くような風景は見えない。何やら暗くて、車内の様子を薄っすらと映し出しているだけだ。それをぼんやりと見つめ、キュッリッキは今日の出来事を思い出す。


(今日は、いっぱい色んなことがあったかも)


 今まで城壁しか見上げたことがないハーメンリンナに初めて入り、巨大な湖のような地面に驚き、水じゃない上を走るゴンドラに乗り、見たこともないような珍しい建物を多く目にした。

 高い城壁の中は暗いと思っていたのに、とても明るくて、でも眩しくはなく、温度も普通で快適だった。

 訪れたベルトルドのやしきはとても大きくて、まるで宮殿のような印象を持った。

 ベルトルドもアルカネットも年齢の割に若々しい外見で、それに何だか面白い人たちだ。

 そして、今はリニアと呼ばれる不思議な箱に乗っている。


(色んなことありすぎて、疲れちゃったな…)


 気持ちのいい眠気が、じんわりと身体の奥底から浮き上がってくる。キュッリッキはウトウトとし始めると、ズルリと座り込みそうになった。


「おっと」


 気づいたルーファスが、慌てて抱きとめた。


「眠っちゃったな、キューリちゃん」

「私がおんぶしましょうか」

「いや、オレが抱っこしていくよ」

「そうですか」

「キューリちゃん、すっごく軽いな」


 お姫様抱っこをすると、ルーファスはびっくりしたようにキュッリッキを見た。


「今日は色々あって、疲れたんでしょうね」


 カーティスは落ちた紙袋を拾い、心配そうに見上げているフェンリルを抱き上げる。そしてキュッリッキの腕の中に置く。赤い小鳥はカーティスの肩の上に飛び移った。


「夕飯前ですし、帰ったら起こしてあげましょう」

「だね」

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