第7話 キミのあだ名は
キュッリッキとギャリーが仲直りして、団の雰囲気も和やかになったところで、またもや問題が発生した。
正確には、キュッリッキにだけ、大問題である。
仕事に出ていたザカリーやルーファスたちが5日ほどで仕事を終え、アジトの食堂で打ち上げを開いていたときのことである。
酒が足りねえ、つまみを寄越せ、オレサマ武勇伝!などと盛り上がる中、突如ヴァルトが大声を上げて立ち上がった。
「やい、こら、てめー! その舌噛みそうな名前をどうにかしろ!!」
ビシッと人差し指を突きつけた先に、キュッリッキがぽかんと口を開けて座っている。どうやらキュッリッキの前に置かれた料理の皿を、取って欲しいと彼女に言おうとして名前を噛んだようだ。
いきなりキレられて、キュッリッキは頭上にクエスチョンマークを点滅させた。
「なにキレてんだ? おめーは…」
ギャリーがボソリとツッコむと、ヴァルトは腕を組んでふんぞり返る。
「とにかくお前の名前は言いにくくて困る!」
「べ、別にアタシが自分でつけたわけじゃないもん!」
つられて憤慨すると、キュッリッキは拳をぎゅっと握って立ち上がった。
「この俺様が、ジキジキにお前にあだ名を授けてやる!」
「授けてくれなくってもいいわよ!」
「よし! お前は今日から”キューリ”だ!!!」
食堂が一斉に静まり返る。
暫し間を空けたあと、ルーファスが真っ先に吹き出した。
「それ、イイ!」
その言葉に、キュッリッキも我を取り戻す。
「全然良くないわよっ!」
「あー、確かにそれイイな」
「言いやすいですねえ」
「可愛いじゃなぁ~い」
同意する声が次々とあがる。
得意満面に「ふふーん」とするヴァルトに、キュッリッキは噛み付かんばかりに叫ぶ。
「アタシには”リッキー”ってあだ名があるの! そんな緑のヒョロヒョロした野菜の名前で呼ばれたくないんだから!」
「却下だ! お前は今日から”キューリ”で決まりなのだ!」
「絶対に、嫌だもん!!」
認めないキュッリッキは置き去りに、みんな”キューリ”というあだ名がお気に召したようだった。
「あだ名ってイイよね、結束感が高まるっていうか」
ルーファスがニコニコ言うと、
「ほ、本当にみなさんそれでイイんですか…」
メルヴィンが困ったように肩をすくめた。
「あのヴァルトにしては、中々にナイスネーミングですよ」
カーティスがご機嫌で頷く。
「キューリなんて、絶対嫌なの~~~~!」
キュッリッキは必死に言うが、結局メルヴィンを除いた全員が、ヴァルト考案の”キューリ”を採用して、以降”キューリ”と呼ばれることになってしまうのだった。
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