第27話 第1ポイントへ

ノノカはいつものように青の肩に乗っていたが、ちょっと眠そうにしていたので青が両腕で抱っこしてあげた。程なくノノカは眠ってしまった。


2人はこれからのことを話しながら少し足早に歩いていた。


「美姫さん、候補地に着いたらどう確認していきますか?」


「確認することは2つ。まずは車のナンバー。さっき調べていたのだけど、この地区は“湘南”ナンバー。で、これから行くところと、次に行くのが“横浜”ナンバー。最後が“相模”ナンバー。だから従業員さんの自動車のナンバーに“湘南”があったら有力候補。でもそれだけだと弱いよね。もしかしたら他の地域から引っ越してきたばかりってことも考えなきゃいけないし、自転車で通勤してる、ってこともあるから。

だからもう一つは聞き取り調査。事務員さんとかでもいいと思うんだけど、私たちが湘南地区の高校生を装って企業レポートにご協力ください、もし可能なら湘南地区から来ている方にお話を伺いたいです、っていろいろ探っちゃおうと思うの。こういうの私得意だし。」

美姫は片目を閉じてにっこり笑った。


「車のナンバーなんてよくわかりますね。僕はあまり車に興味がないから気づかなかった。」


「友達が詳しいのよ。彼氏に乗ってほしいのはハマナン(横浜ナンバー)がいいとか、ショーナン(湘南ナンバー)がいいとか。私から言わせると日本のナンバー自体カッコ悪いと思うのだけど。海外の横長のナンバーの方がずっといいと思わない?」


「ですね、僕も洋画が好きだからよく観ますけど、ヨーロッパの方のナンバーとかかっこいいですよね。国旗があしらわれていたり。


話は変わりますが、僕は違う視点で考えてました。あの絵の作者はどういう思いで描いたのかなって。前回の絵画は作者のイメージだと思うのですが、今回は明らかに燃えている現場を見ていると思うんです。でなければあの“影”は描くことは出来ない。あ、ノノカが起きましたね。」


「うぅーん、よく寝た。今どこらへん?もう着いた?」


「まだだよ。あと20分ぐらいかな。今いろいろ美姫さんと候補地について話していたところだよ。」


「おはよう、ノノカちゃん。青の腕枕は気持ちよかった?」


「そうね、適度な筋肉質と脂肪で弾力はまあまあかしら。歩いている振動が気持ち良くてつい寝ちゃった。ごめんね。」


「ノノカ、腕枕評論家になれるよ。あ、美姫さん、ノノカはうさぎだから4時間起きて1時間寝る、っていうサイクルなので気にしないでくださいね。」


「あ、そうなのね。次は私に抱っこさせてね。」


「もちろん~。青も感想聞きたいみたいだしい(ニヤリ)」


「僕は何も言ってないだろう。すぐそっちに寄せるんだから。」


「本当は聞きたいでしょ?」


「ちょ、ちょっとは(汗)」


「あら、私の腕枕?見かけどおり甘えん坊なのね(笑)いいわよ、この絵画が終わったら腕枕してあげる。」


「本当にやったら踏み殺すからね、青。」


「こわっ…。あ、もうすぐ着きそうですよ。マップで行くとあそこじゃないかな。」


2人は立ち止まり、青の指差す方向をみた。


まだ少し距離はあるが、大きな倉庫の壁面に『㈲中尾建材』とあった。

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