第26話 ハルの能力

「ハル、ここの絵画をもう一度観せてくれるかな?」


「もちろんです、セイ。こちらです。」


ハルの盤面と垂直に、フワッとあの絵画が空中に映し出された。


「ちょっとちょっと青、本当にハルとアイスクリームで仲良くなったわけ?」


「ノノカ、これは男同士じゃないとわからないんだよ。そんなに不思議ならなにかハルに訊いてごらんよ。」


「わかったわ、ハル。セイのことどう思ってるの?」


「愚問ですね、マブダチです。」


「もうっ‼一言多いのよね‼茹でるわよ‼」


「まぁまぁノノカちゃん、こうやって絵が観られるようになったのだからいいじゃない。これも青の能力よ。

ね、ハル、私達とも仲良くしてね。」


「それは無理です。馴れ馴れしくしないでください。私はあなたの名前さえ知りませんから。私はセイの頼みだけ聞くように出来ています。」


「ノノカちゃん!鍋用意して‼」


「美姫ちゃん、落ち着いて‼」


青は(そんなにムキになることないと思うんだけど、大丈夫かな、これから…)と思ったが口には出さなかった。


3人は気を取り直して映し出された絵をじっくり眺めた。


「2人ともちょっとここを見てください。崩れ落ちた木だと思うんですが、最初に観たときはそんなに違和感なかったけど、よく見るとなにかに支えられているような感じがしませんか?」


美姫が

「そうね、ただ崩れ落ちた感じじゃないわね。何かに寄りかかっているように見えるわ。あ、車があるんじゃない?…そうよ、ここはきっと車庫が崩れ落ちて木片が車を覆っているんだわ。」


「ということはこの家は向かって右側に車庫があるってことですね。これは大きな発見です。ノノカはどう?」


「そうね、この男の人の服装だけど、作業着?みたいな服に見える。色はわからないけど、少なくともスーツではなさそう。」


「そうだね、僕もそう思う。これも新しい発見だ。ノノカありがとう。」


「もう他に特徴はなさそうね。青が言ってたこの影は人か、ものかよくわからないし。まだこれだけでは場所を絞り込むのは難しそう。ノノカちゃん、もう少しこの絵に関係する場所を特定できないかな。前回の中学校みたいに。」


「そうね、この人の勤務先ってことよね。探知してみる。ちょっと時間をちょうだい。」


しばらくするとノノカが

「候補となる場所が3か所あるわ。それ以上はもう絞れない。1つはここから2kmぐらいのところ、もう1つは5kmぐらい。3つ目は遠いな、10km以上15km未満ってとこかしら。どうする?」


「2km歩くには30分ぐらい。5kmだと1時間半弱。10kmだと3時間になっちゃうね。まぁ、そこにはタクシーか何かで行くとしても、今午後2時だから順序良く回らないと家が燃え出す可能性がある。ノノカ、美姫さんのパソコンにその3カ所をざっくりマッピングできる?」


美姫がパソコンをさっと取り出すと、ノノカと一緒にWebの地図上にマッピングしていった。


「大体こんな感じになるけど。」


「ありがとう。ハル、この地図から最短のルートを割り出して。」

とハルをマップに向けた。


「わかりました、セイ。しばらくお待ちください。接続しました。解析中です。…これです、ご覧ください。」


「すごッ‼こんなこともできちゃうんだ!まずい、あたしハルに負けるかも…。」

ノノカにしては珍しく、がっかりしたような表情を見せた。


「ノノカ、僕たち仲間なんだ。勝ちも負けもないよ。得意な分野でお互いをカバーしていけばいいじゃないか。僕も美姫さんも頼りにしているよ。」


「そ、そうよね。ハルは計算得意だもんね。」


「うん、そういうこと。じゃあマップ通りに早速行ってみよう。」


3人はまず5㎞先の候補地に向かった。

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