第17話 未遂

2人と1羽はネットカフェに入店し、部屋に入った。

「うわ、2人がギリギリ入れる感じですね。(ちょっとドキドキする…。)早速始めましょうか。」

合志とノノカはほぼ同時に

「どんなことをするの?」

と訊いた。


「同じSNSに入るんです。この時代は今みたいにたくさんのSNSがあるわけではないですからね。キーワードもだいたい見当がつきますし。」


合志は

「私はSNSってやったことないからわからないけど。なんか凄いね。逆にされたらちょっと怖いけど…。」


「そうですね…、ちょっと待っててくださいね。おそらくこれかな。キーワードは中学校名から探ってみましょうか。…出ましたよ、それらしき掲示板が。」


ノノカが

「へぇ~、青、凄いね。なんかちょっと見直した。」


「これぐらいしか取り柄がないからさ、はは…。えと、やっぱりテキスト型SNSですね。 “万江北(まえほく)市立 駒居(こまい)中学校について語ろう!“ と言う掲示板です。ここで不特定多数の人と自由に文章のみのやり取りできます。絵画のタイトル ”ネットの恐怖“ と言うぐらいだから、ここで何らか誹謗中傷があるはずです。まだあの子がログインしているみたいだから、まずどんなことが書かれるのか…。」


すると合志が

「見てみて‼この返答!」

そこには

『お前自分で自分のこと可愛いって言ってるようなもんじゃねーか、ふざけてんじゃねーよ、馬鹿』

とあった。

青は冷静に

「もう少し様子を見てみましょう。」


以下やり取り。

綾野らしき人:『そんなことない、友達のことを褒めてるだけ。なんでそんな事言うの?』

返信:『だからそれがうざいってんだよ』

綾野らしき人:『もうそんな事言うのやめて。』

返信:『そんなん自由だろ、死ねや、ブス』

ここだ、と青はスクショを撮った。

「うん、決定的なやり取りが取れましたね。これで何かあったら警察も動かせるかも。」


合志が

「酷いね、可哀そう…。相手は分からないの?」


「残念ながらそれは警察の範疇になります。IPアドレスっていうのをたどって行くとわかるんですが、それを調べられるのはこのSNSの管理者だけなので。」


合志ががっかりした声で

「そう、やっぱり最後は警察なのね…。」


青は

「ちょっと待ってください。綾野さんはもう返信してないですね。

ここまででわかることはさっき酷いこと返信したのは2人です。


文書の右側にランダムに生成された意味のなさそうな文字列があるでしょ?でもよく見て下さい。馬鹿、と書いたのとブス、と書いたもの、同じなんです。つまりこれは同じ人物が書いている、ということを意味します。

そしてうざい、と書いたやつの文字列。違いますね。なのでもう一人いるってことです。つまりは綾野さんは2人からここで誹謗中傷を受けていたことがわかります。」


「なるほど‼ということは今綾野さん、かなり傷ついてるはず!あたし心配だから様子見てくるね!」

ノノカはそう言うと飛び出していった。


合志は

「もうちょっとさかのぼって見れるかな?いつぐらいからこんなふうになったのか知りたいわ。」


「わかりました。僕も気になってました。ちょっとスクロールしてみると…5日前まではそんなにあれてないですね。ん?綾野さんかな、自分の学年とクラス書いちゃってますね。これはもしかすると中傷した相手は同じ学年の子かもしれない…。」


「そうね、中傷する対象相手がより具体的になったわ。危険ね。とするとこの誹謗中傷した奴ら、同じ中学校じゃないの?」


「その可能性大です。ここまで分かれば」

と言った瞬間、ノノカから通信が入った。

「青、大変‼ノノカちゃん手首カミソリで切って、お風呂場で倒れてる‼どうしよう!」

「わかった、こっちでなんとかする。まだ息はあるよね、ノノカはそこにいて!あと内側から玄関の鍵を開けておいて!」


青はすぐに救急車を呼んだ。と同時に綾野の家に合志と走って向かった。

合志は

「警察には連絡しなくていいの?」


「まずは命優先です。僕たちはこの時代の人間じゃないので話がややこしくなります。警察は救急隊の人に呼んでもらいましょう。それを合志先輩にお願いしたいのです。姉です、とか適当でいいので。」


「わ、わかったわ。なんとかやってみる。」


青は走りながら所々で蜘蛛の巣を取っていた。

合志は不思議に思いながらも、今はその理由より命優先、と考え夢中で走った。


青と合志が綾野の家に着くと青はすぐに家の中へ、合志は救急車を待っていた。5分ほど後に到着した。


青は綾野の息を確かめ、来る途中で集めてきた蜘蛛の巣を傷口に当て、キッチンから酢と蜂蜜を持ってきて蜘蛛の巣の上から垂らした。


これでとりあえず大丈夫、僕たちは消えよう、と言うと青とノノカは裏口から出ていった。


合志が上手く話してくれたせいか、救急隊はすぐに綾野の救出に向かい、同時に警察に連絡を取ってくれた。


付き添いには合志が行ってくれた。


「危なかったね。ノノカ、お手柄だよ。良くすぐに動いてくれたね、ありがとう。あとは合志先輩と合流してあの酷い返信をした犯人を見つけ出そう。

綾野さんは病院のスタッフがご両親に連絡を取ってくれるだろうからね。任せよう。」


青は合志と連絡をとった。


綾野の処置が終わった隙を見て合志は病院から抜け出し、青たちとネットカフェで合流した。

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