第9話 天使か、悪魔か。
先輩たちの優しさに感動しながら午前の最後の授業が進む。
英語だったが全く内容が入らず、頼れる先輩もおらず。もうどうすりゃいいのよ。何度も言うようだけど。でも命かかってんのよ?僕の。この授業が終わったあと、あの部室のドアの前で「開け、ゴマ!」とでも言えばいいの?それとももう諦めて両親に向けた遺言でも書いたほうがいいのかな?
なんかまぶたが熱くなってきた。なんだろう、水も滴り落ちてきた。
生きたいよ。まだまだやりたいことあるもん。16歳で一生を閉じるなんて悲しすぎるよ。助けて、誰か。
とうとうなんの解決策もなく昼休みになった。
空腹感もないので購買に行く気にもならない。どうせなら教壇に立って「みんな、ありがとう!忘れないよ。」って言おうと思った。
まさにその時だった。
「青くん、このクラス?」
と聞き慣れない女の子の声が聞こえた。
「青はそこにいるよ。」とクラスメート。涙を拭いながら声のした方を見ると、数少ない、しかもひと目でハッとするような整った容姿の女生徒がいた。
「青くん、一緒に来てくれる?」と女生徒。
もう言われるがままについて行った。着いた場所は音楽室の前、あの部室の2つ隣の廊下だった。
「あのね、さっき細野くんにあの部室のこと訊いてたでしょ?みんなはNoって言ってたけど。実はわたし、誰が鍵を持ってるか知ってるの。交渉もできるかもしれない。青くんのあの表情を見た時思ったの。だから来たの。」
「え、すみません…。どなたですか?」
「あ、ごめんなさい、わたしは
「そうなんですか。じゃあいきなりで図々しいですが、どなたが鍵を持っているか教えてもらえますか?」
「あと何分?」
「え?どうしてそんなことを?」
「いいから。あと何分?それによって鍵の主へのアプローチが変わるの!」
「あぁ、あと30分弱です。」
「わかった。もうギリギリかも…。すぐ一緒に付いてきて。」
合志先輩は音楽室の隣りにある、音楽科教務室の戸をたたいて「お食事中失礼します。」と僕の手を引きながら入っていった。
そこには1人だけ、男性の先生がいた。
「
「…。合志、見ての通り私は飯食ってるんだよ。終わってからでいいかな?」
「それでは遅すぎます。先生は食事に時間がかかりますので。」
「合志に言われちゃしょうがないか。でもお前が手を握っている子は何なんだ?せめてそれだけでも教えてくれ。」
「察して下さい。」
「…。わかった、開けるよ。ちょっと待ってろ。」
そう言うと柳生先生はズボンのポケットから鍵を出し、あの部室を開けてくれた。
「まだあったのか。困ったもんだ。」
柳生先生はそれだけ言って教務室に戻った。
「青くん、あとは任せるわ。わたしの言っている意味、わかるよね?」
「え、あ、は、はい、わかります。」
「じゃあ私はこの部屋から出る。どちらを選択したにせよ、青くんはもう一度わたしと会うことになる。だから私の顔、しっかり覚えておいて。」
と言いながら合志先輩は僕の顔に自分の顔をぐっと近づけ、にっこり笑って部室を出て行った。
あっという間の出来事で、いくつか引っかかる点はあったけど時間に間に合いました。ありがとうございます。
合志先輩、綺麗だったな。
おっと、もう時間だ。
僕はあの紙切れをギュッと握った。
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