第24章「手にした日常から」

 前まで八席しかなかったダイニングテーブルに四人分のイスを足して、第一世代と第二世代のみんなでお昼ご飯を食べる。

 その間、わたしとノアはいろんなことをアルタンから教えてもらった。

 わたしとノアがたおれた後、アルタンとチャクリをのぞいた全員がエレベーターで第一世代のフロアにおりたこと。

 のこった二人はずっと総長が戻ってこないか見張っていたけど、結局夜になっても出てこなかったこと。

 総長の入っていったドアの向こうを確認しに行ってみると、そこは大人達が寝泊まりしていた場所だったらしい。

 すべての部屋を確認したけど、総長のすがたはなかったんだって。

 だけど、そこには地上に行くためのエレベーターがあったから、もしかしたら総長は地上に逃げたのかもしれない、とのことだ。

「うーんと、つまりわたし達をドームごと捨てたってこと?」

「まあ、そうだろうね。調整用の機械とか、モニターとか、全部壊されたんだし」

「でも地上だよ? あの人、生きられないよ」

「総長のことだし、なにかしら自分の安全を確保する方法があったんじゃないかな。だから軽々しく『出て行け』って、ほかの大人にも言えたのかも」

「なるほど……」

 そのうちみんなも会話にまざってきて、わたし達はこれからの話をたくさんした。

 チャクリがなんとかドームのシステムに入りこんで、ドーム内の全てのアンドロイドを制御できるようにしたんだって。

 今、最年長の先輩達はその管理でかなりいそがしいらしい。

 そして、第二世代は全員、あの時のうそ通りこっちに引っこしてきたんだって。

 わたし、それを聞いた時、うれしさで飛び上がった拍子にコップを倒しちゃった。

 今度歓迎会をしようだとか、第二世代の子も髪型を好きなように変えてみようだとか、そういう楽しい未来の計画もどんどんできた。

 一週間前とはぜんっぜんちがう光景に、わたしはずっと笑顔だった。

「ねえ、ノア」

「ん……なんですか?」

 食後のデザートのゼリーを食べながら、となりでもくもくと口を動かしているノアに話しかける。

「ノアは今、なにかやりたいことある?」

「いえ、特には……」

「うそをついてもむだだっ!」

 そうふざけてノアの顔を目をこらしてのぞきこむと、ノアはぎくりと体をこわばらせた。

「わ、わかるんですか?」

 ……エッ、ユイさん冗談のつもりだったんですケド…………。

 なんて言ったら台無しなので、わたしは分かっていたふりをして、

「もちろん!」

 ってうなずく。

「で、なにがしたいの?」

「あの…………」

 にぎやかな共有スペースの中で、ノアはわたしの耳元に口を近づけると、こしょこしょと遠慮がちにささやいた。

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