第22章「みんなの選択」
「うわあっ!」
目の前が真っ白になるほどの明るさに、わたし達はふたたび目をつむって頭を下げる。
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリッ!
バチバチと火花が舞う音や、プシューとけむりが上がる音。
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリッ!
だんだん、変なにおいがただよってくる。
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリッ!
……あのー、第二世代のみなさん達、ちょっとやりすぎじゃないですかね?
多分もう、カプセルはステーキにしてサクサク食べれちゃうくらいこわれていると思うよ……?
「もういいです! 撃たんでいいです!! それ以上は火が出る!!」
バリバリ音にうもれそうなチャクリの声と共に、ようやく電撃は終わった。
こわごわと目を開けると、思わず「うわあ……」とため息が出る。
真っ黒に焦げたカプセル四体。そこからは、まだプシュープシューと煙が上がっている。
そして壁にあるモニターも、おそらく『調整』に関わっていたらしいものはもれなく破壊されていた。
た、たまりにたまった日頃の恨みはおそろしい……!!
「やるなあいつら……」と、カオルの引き気味な声がした。
第二世代の子達はふんっとまんぞくそうに鼻を鳴らすと、こっちに戻って来る。
一方、総長は、ひどくうろたえた様子だった。まさか第二世代の子ども全員に見放され、カプセルまで壊されるとは思わなかったらしい。
「あの悲劇を知らないお前らが未来を作ったところで、また不幸をくり返すだけだ……! 後悔するぞ!」
「後悔するのは僕達だ。仲間全員で乗りこえるから、ご心配なく」
ただのおどしでしかない総長の言葉に、アルタンがおだやかに笑いかける。
「なにが正解かは分からなくても、あなたが作る未来で生きたくないのはたしかだから」
わたしもノアと手をつなぎ、総長のにごった目をまっすぐに見つめながらそう言うと、彼はくやしそうに歯ぎしりをした。
「甘やかされた世間知らずが……っ、そんな簡単に上手くいくとおもうなよ!!」
「おまえの幸せごっこに付き合わされるくらいなら、甘やかされたガキでけっこーでーす」
シユンの
そして、エレベーターの横にある自動ドアから部屋を出て行った。
……出て行った?
わたしとノアは、思わず顔を見合わせる。
みんなも、それぞれぽかんと口を開けた。
「え、あいつ逃げた?」
「そのようですね」
「まさか向こうの部屋からバズーカ持って再戦とかないよな?」
「それはないっしょー……うん」
「これで終わりだ・よ・ね・?」
「はい、そうだと思います」
「にげたかー……」
おたがいに何度も確認しあってから、考えこむ。
そしてしばらく経って、みんなが現実を噛みくだいで飲みこみ終えると、わあああっと歓声が沈黙を突きやぶった。
「やったなマイ!」
「うんっ」
「エイダ、ノアの分もカプセルをぶっ壊しました」
「キミらやるじゃん?」
「みんな最高です」
「あいつ、まさかオレらに反撃されるとは思わなかっただろーな」
『やってやった!』っていう、すっきりした達成感。あと、安堵と、喜び。
さっきまで黒い感情で固まっていた心が、ゆっくりほぐれていくみたいだ。
抱き合ってよろこびを分かち合うみんなに、まざろうとした瞬間。
「う……」
ふらりと、ノアがわたしによりかかった。
抱きついてくれたのかな? って思ったけど、なにかがちがう。
だってノア、自分の足で立っていないんだもん。
「ノア?」
わたしはあわててノアのわきの下にうでを回すと、「大丈夫?」って聞こうとして──さっと頭が冷えた。
さっき、ビームがかすった首筋。
そこから、服のえりをぐっしょり染めるいきおいで血が流れ出ている!
顔も、元々色白なのがさらに真っ白だ。
「のあ、が……」
あれ? おかしいな、みんなに呼びかけようとしているのに、声がかすれて、全然出てこない。
それどころか、ノアの真っ赤な血を見たとたん、わたしまで視界がどんどん暗くなっていく。
頭がジンジンと痛む。指先から、力が吸い取られていく気分。
かくんと足の力が抜けて、とうとう立っていられなくなったわたしとノアはずるずるとすわりこんだ。
「……ィ……!?」
「ユ……! ど…………ぁ!!」
みんなの声がするけど、それすらも遠のいていって──。
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