第3話 行方不明

 権蔵爺さんの孫の話は、面白かった。いろいろ質問してみた。

「兄ちゃん。由美がおらん!」

 真ん中の男の子だった。


 急いで、滝壺の中を見てみた。由美はいなかった。

 遊んでいる子供たちに訊いてみた。やはり、知らない、という。

 洋一と隆、爺さんの孫2人で谷を下り、淵をのぞいて行った。どこにも、由美はいなかった。


「これだけ探してみつからんのやから、谷にはおらん、思うで」

 洋一は考え込んだ。

「淵だけやのうて、岸も探してみよう」

 今度は岸を重点的に探すことになった。大きな声で由美の名前を呼びながら、岸を下に向かった。


「兄ちゃん。どうしよう」

 爺さんの真ん中の孫は泣きべそをかき始めた。

「誰かに連れて行かれたのかな」

 長男がポツリと言った。いくら田舎とは言え、白昼、女の子が誘拐されることなど、およそ考えられなかった。


「洋ちゃん。由美ちゃんは近くにおると思うで」

 意外なことを言う。洋一は隆を見た。

「近くにおるんなら、なんで返事せんのや」

「返事できん理由が、あるんやないかなあ」

 隆は天を仰いだ。

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