第2話 交流

 千足谷にはところどころに、淵があった。

 淵は夏場は、天然のプールになった。中でも滝壺は幅10メートル、奥行き2メートルはあり、多くの子供たちで芋を洗うような状態だった。


 その夏、権蔵爺さんの孫たちが千足村にきていた。3人の孫は村の子供たちとも顔見知りになり、遊びにも加わるようになっていた。


 隆たちが滝壺で泳いでいると、3人が岸で見ていた。

 村の子供たちは、男子はパンツ、女子はズロースだった。一方、爺さんの孫たちは水着姿で、ゴーグルも準備していた。末の女の子は浮き袋を抱えていた。


 洋一が呼ぶと、3人は滝壺に入ってきた。女の子は浮きにつかまって泳ぐ。上の2人の男の子は潜って淵の中を探索していた。

 体が冷えてきたので、岸に上がった。

 上の男の子は町の様子を話してくれた。洋一たちにとって、テレビでしか見たことのない世界だった。


「なあ。海で泳いだことある?」

 洋一が訊いた。隆も知りたかったことだった。

「あるよ」

 なんでもないような答え方だった。

「海って広いん?」

 隆が訊いた。

「そうや、大きな船が浮いてるよ。クルマ運ぶ船だってあるんやで。海は外国と繋がってるって聞いたよ」

 I川の何倍くらいの広さか、洋一と隆には想像もできなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る