第21話 「魔法世界の解説者・後編」
女神ハルモニア・・・
低次元の者達ともフランクに話し、暇な時は雑談もする変わり者の女神。
そして少し天然でチョンボも多く、そこにツッコミを受けたらすぐに謝る・・・
一見すると頼り無くも見える女神・・・
しかし軍神アレスと女神アフロディーテの娘であり、地球上で「ハーモニー」の名を知らぬ者は殆ど居ない、天界でも屈指の力を持つ女神なのだ。
そんな女神ハルモニアが本気を出すと一体どうなるのか?
『はああああああ!!!』
ビカーーーーンンン!!!!!凄まじい閃光が走る!
「きゃあああああ?!眩しい!目がーーーー?!」
『だからなんでわざわざ直視をするんですかぁ?!学習能力が無いんですかぁ?!』
女神ハルモニアは三龍王からの全力での魔力供給を受けて現在はもの凄い閃光を放っている。
この日、世界中のあらゆる魔力観測所、気象観測所で今まで見た事も無い異常な数値が検出され、尚且つ全世界規模で震度3程度の地震が観測された。
女神ハルモニアの降臨により「惑星」そのものが震えたのだ。
そしてその爆心地の閃光を興味本位で裸眼でモロに見たイリス!・・・アホの子かな?
眩しいのでバルドルとマクシムは完全にハルモニアから背を向けている。
ルナに関しては、パシリ女神があまりにも眩し過ぎて最初に魔王の間から逃走した。
実は三龍王の放つ魔力は天舞龍リールが発動した「創世陣」に適した属性の魔力では無い、そのまま「創世陣」へと送っても7割程度の効果しかない。
そこで一度、女神ハルモニアに貯蔵して神力を使い適正な魔力に作り変える必要がある。
そして女神ハルモニアは作り変えた適正な魔力を随時「創世陣」へと送る。
神力全開なのでビッカビカに閃光を放っているのだ。
本来なら太陽フレアと同等のエネルギーなので地表を焼いてしまうのだが「天界からのお詫び」より複数名の高位神がハルモニアの周囲に防護障壁を張って守っている。
「・・・ハルモニア様は凄くおっかないので二度と降臨しないで下さい」
そのヤバ過ぎる熱量にドン引きしている魔王バルドル。
『その通りですけど言い方酷くないですか?!』
この世界に神様が簡単に降臨して来ない理由をお分かり頂けただろうか?
だって普通の人間辺りなら「死滅」してしまうんですもの・・・
なので「精神体」や「現人神」と言う分身体を作って世界に放つのですね。
そんな女神ハルモニアの全力神力をモロに受けている天舞龍リールはと言うと、
「うぐぐぐ???うわぁー・・・今まで感じた事も無い凄い魔力だねぇ!!
・・・・・・私にこんなの扱いきれるのかなぁ??」
珍しい事にものすっごく不安になっていた。
《リール!抵抗しないで!貴女は「創世陣」を維持する事だけに専念なさい!》
弱気になった天舞龍リールに師匠である海龍王アメリアからの叱責が飛ぶ!
「!!!はい!」
自分も龍種として産まれ5000年が経過して自分も上位の存在となったと自負していた天舞龍リールだが、ミリオンクラス(産まれて10000年以上の超越存在)の力と知識と技量に圧倒されている。
自分はまだまだ子供なんだなぁと思うリール。
そして女神ハルモニアが送った魔力の第一陣がリールの「創世陣」を通してユグドラシルにダイレクトに注がれる!
パシーーーーーン!!
天舞龍リールの「創世陣」からの閃光が走りユグドラシルに直撃する!
見たまんま「レーザービーム」に類するモノだ。
ガ○ダムに出て来たデュートリオンビームの様なブツと思ってくれて良い
魂に魔力の供給が開始されると、「!?!?!ふえ?!ふええええ?!」突然変な声を出し始めるユグドラシル。
「どうしたの?!痛い?辛いのユグドラシル様?」
《リール!混乱しない!落ち着きなさい!集中よ!!!》
ここでしくじると莫大な魔力が暴走を始めて天舞龍リールとて爆発四散が確実なのだ、普段おっとりしている海龍王アメリアでもめっちゃ荒げた声を上げる。
リールが動揺するも無理は無い、何せこんな出来事は初めての経験なのでユグドラシルに何が起きてるのか想像も出来ない天舞龍リール。
そもそも「デュートリオンビームって何ー?」と思っている。
「いえ辛くは・・・あっ!これ?!ああ?!いやーん?!?!」
突然色っぽく悶え始めるユグドラシル。
魂に魔力が注がれると「なんか凄く気持ち良い」のだ!それはもうあり得ない程に。
『ふあああああ?!何ですかこれ?!聞いてない!こんなの聞いてませんよぉーーー?!』
魔力受けの核になっているハルモニア分身体にも凄い快感が伝わり、彼女も悶え始める。
「なんで私までーー?!ああ?!いやーん??」
シーナの隣に座っていたのでモロにとばっちりを食らっているエレン。
しかしこのとばっちりはエレンに龍力増大と言う思わぬ恩恵を与える事になる。
『え?これって気持ちが良いんですか?へえ~?そうなんですね?
それは知りませんでした、大変勉強になります』
そしてめっちゃ他人事の女神ハルモニア。
『でも気持ち良いなら何の問題ないですよね?ドンドン送りますよお!!』
「オラァ!」と神力をあげる女神ハルモニア。
『待ってー?!ハルモニアさん!手加減を手加減を所望致しますーー?!』
「ふえええええ?!?!ドンドンはダメですーーー?!」
『女神達が泣き言を言ってはいけません!』
『違いますー!私は女神じゃありません!私は地龍ですー!!』
ハルモニア分身体は今までの一連の出来事によって、その存在自体の本質が完全に変わり地龍になっている。
「私だって女神じゃありませんよぉ?!ふえええええ?!」
そしてユグドラシルも既に地龍となっているのだ。
「私なんて論外中の論外じゃないですかーーー?!」
女神ハルモニアはエレンからの正統な抗議も華麗に無視して、
『この程度で腑抜けた事を言わない!消滅したいんですか?!問答無用です!!』
ビカビカビカーーーーーンンン!!!
バシバシバシーーーーーンンンンンン!!!!!
パシリ女神レーザービーム砲の閃光が3人に降り注ぐ!連撃!連撃!連撃!
そして連撃だーーー!!!
「いやぁーーーーーんん?!?!」
《ギブです!すみません許して下さい!何でもしますからぁ!!》
「だから私には必要ないですってばー!!あーん!助けて!おかーさーん!」
『ダメでーーーす!!』
ビカリーーーーン!!!シュバーーーーーーーーーーン!!
この辺りは高位存在である、大事な事柄では中位存在や低位存在の言い分を聞く耳は持たないのだ!
何でもかんでも下々の者に慈悲を与えれば良いと言うモノでは無いのだ!
「試練」を与えて調きょ・・・中位存在の成長を促して高位存在へと導くのも女神の役目なのだ!
しかし周囲の神々がドン引きしてる事は見なかった事にしよう。
「これは・・・また・・・酷いな」
恐ろしいまでの神力に加えて、情け容赦がない調きょ・・・教育を眷属達に施す姿を見て女神ハルモニアに対して初めて畏怖の念を感じる魔王バルドル・・・
「だからよ、お前、あんまりハルモニア様を怒らせんなよ?」
実は案外マクシム君は女神ハルモニアに本当に忠誠を誓っていたりする。
「そうじゃなぁ・・・」
「うええええん、目がぁ~・・・チカチカするよ~」
そして1000年に渡りいつもハルモニアを怒らせて、つい今し方天罰を食らった娘がここに居た。
どうでも良い事だがイリスは先程のまだ目潰しから立ち直っていない!
ま~だ、うずくまってプルプルしているよコイツ・・・プッ、ざまあイリス。
そして女神ハルモニアの荒療治は佳境を迎える!
もはやパシリ女神の独壇場だ!おかしい?!旧作でこの話しは確か天舞龍リールの見せ場だったはずなのに?!どうしてこうなった??
「いや・・・私に見せ場とか特に要りませんから・・・」
そう言う事言うなよ!寂しいじゃないか!
『さて・・・三龍王の魔力もそろそろ枯渇して来ましたね・・・
マクシム君!バルドル!そろそろ出番です!第三波目!行きますよ!!』
「おう!待ちくたびれぜ!」
「よっしゃあ!出番じゃな!!」
真魔族がなぜ「真」の魔族なのか・・・その理由が明らかになる。
「うおりゃああああああ!!!!」
「はあああああああ!!!!」
魔王バルドルとマクシム君から「アホか?!」と言うレベルの魔力が吹き上がる!
そして闇の眷属たる「吸血鬼の真祖」の彼らは「闇の異界門」を顕現させてその門を開く。
「うわぁ・・・」やっと視力が回復したイリスが「闇の異界門」を見てドン引きしている。
ゴゴゴゴゴゴ・・・・・
地鳴りと共に異界門から溢れ出た闇が渦巻き状になりながら女神ハルモニアを包む・・・
「何でハルモニアちゃんを攻撃するのぉ?!」
どう見ても「女神ハルモニアさんの大ピーンチ!」なのだが女神ハルモニアは別にどうと言う事も無い様子だ。
「ハルモニアちゃん?!それって大丈夫なの?!」
やっと目潰しから立ち直ったイリスが「目が見える様になった途端に何か知らんがおっかねえ?!」的な光景に恐れ慄く。
そして今度はちゃんと「グラサン」を装備している、持ってるなら最初からかけれよな。
『え?何がです?』
「いやだって、光って闇が苦手で嫌いなんじゃ?身体の核を侵食されるとか?
モロに闇に包まれてますが?大丈夫なんですか?」
イリスがそう思うのも仕方ない某異世界ゲームでは「闇の末裔」と「光の末裔」がそりゃもうバッチバチに大喧嘩してたりするからね。
『え?そんな事は全然ありませんよ?イリス?一体何を?・・・・
ああー・・・なるほど!イリスは「闇は光に相反するモノ」とのデマを信じているのですね?』
「えー?!アレって「デマ」なんですか?」
女神より伝えられた衝撃の真実!
『多分、闇の勢力と光の勢力の両方の支配者層が作った都合が良いプロパガンダじゃないですかねぇ?
闇は全ての魔力の根源です、各属性の色が混ざると黒になるのですよ。
つまり・・・」
赤、青、黄色の三原色を100%ずつ混ぜると黒になるヤツだね。
『つまり「闇」は神々にとって「栄養満点の美味しいご飯」なのです。
この闇はとっても美味しいですねえ~、純度100%です!素晴らしいです!
美味しい闇を食べてパシリ女神も力が漲ってきましたよ~』
「ははははは!そうであろう!そうであろうとも!
ハルモニア様よ!腕によりを掛けてドンドン闇を作るからたくさん食べるがよい!」
何か突然偉そうなマクシム君・・・いきなりどしたん?
要するに、神力をたくさん使ってお腹が空いて来た女神ハルモニアにご飯を食べさせている真魔族のバルドルとマクシム君。
真魔族・・・ヴァンパイアの真祖とは太古の時代よりの「神々の料理番」なのだ。
ビカカカーーーーンンン!!!
チュドーーーーーン!!バシーーーーンン!!
《きゃーーー?!?!またパワーアップしたーーー?!
誰ですか?!余計な事をしているのはぁ?!やめなさい!!
ああーん?!いやぁー?!嘘ですごめんなさい!許して下さい!》
お腹いっぱい美味しい闇を食べて更にパワーアップしたパシリ女神ビームの連射に涙目になるハルモニア分身体。
「し・・・真魔族は神々の料理番???・・・だと???」
マクシム君がそんな重要な事の引き継ぎをコロッと忘れていたせいで、真魔族の本当の由来を知らなかった魔王バルドルもドン引きしている。
「え?!それってもしかして「イリスダンジョン」で真魔族の料理人さんを雇って「闇料理」を出せば「神様のお客様」がたくさん来る?!」
「お主は本当に商魂が逞ましいのう・・・」
更に、「闇料理?!これは商売チャンス?!」とか考えてる商売人イリスに更にドン引きする魔王バルドル。
つーかコイツならマジで神相手に商売をやりかねん。
「ふえええええ?!もうダメですぅーーーーー?!」
そろそろ限界が近いユグドラシル。
「ふふふ・・・」
大人達の一連のコントを見て思わず大笑いしそうになった天舞龍リールは力が抜けて精神が落ち着き「創世の陣」も安定したので女神ビームの威力もパワーアップ!
《OKリール!その調子よ!》
「はい!師匠!」
更に・・・
「はあああああああああああああ!!!!!!」
世界最強の魔力を誇るマクシム君がトドメの一撃を放とうとしている?!
「過去最高の闇を練り上げたぞハルモニア様!さあどうぞ!たんとお食べ!」
『はーい、これ美味しいですねぇ』
《どうぞ!じゃないです!いい加減に止めて下さい!お願いします何でもしますっての!
良いんですか?私、もう泣いてますよ?!
泣きますよ?じゃなくて泣いてるんですよーー?!》
ハルモニア分身体の訳分からない抗議を聞きながら意識が遠のいてユグドラシルはとうとう失神したのだった・・・
ドコオオオオンンンンンンンンン!!!!!!!
「創世陣」から本日最大の「ゴン太」パシリ女神レーザービームが放たれてトムソン鍛治店はおろかスカンディッチ伯爵領領都は消滅したのだった・・・・・・・・
いや・・・
大ハッスルのパシリ女神パワーで支援していた高位の神々が吹っ飛ばされて、障壁で抑えきれなかった風圧で街の建物が吹っ飛んだのだ。
『は・・・ハルモニアちゃん・・・やり過ぎです・・・」
銀河系の外までプッ飛ばされた女神アテネだった・・・
カーン!カーン!カーン
快晴の朝、スカンディッチ伯爵領領都に本日も復興の金槌の音が軽快に鳴り響く・・・
「いやー良いモン見せて貰ったな!」
カーン!カーン!
「素敵だったわぁ・・・リール様」
カーンカンカン!カーン!
「いやー、あんな光景を見られるとはのう、長生きはするモンじゃのう」
ホクホクしているスカンディッチ伯爵自ら金槌を振う。
カーン!カーン!カーン!カーン!
街を吹っ飛ばされて更地になっても「また作れば良いんじゃない?」がモットーの地龍達は何も気にしていなかった。
むしろ天舞龍リールの大活躍に大興奮していたのだ。
地龍達が本気を出して復旧したので女神ハルモニア降臨から1か月経ちスカンディッチ伯爵領領都はほとんどが復旧してた・・・
と言うよりなんか知らんが3割ほど街がデカくなっていた。
「アレ?前となんか違わなくね?」
「気のせいだろ?こんなモンだったぞ?いや・・・もっと大きかったはずだぜ?」
「じゃあ、この通りには民家を後50軒は建てないとダメよね?」
「そうだな」
こんな感じでまだまだ建物の作り続ける地龍達・・・いい加減に誰か止めろよ。
ほっとくと王都を超える規模になるわ!
そしてトムソン鍛治店にて。
「なるほどのう・・・その様な事がありましたか・・・大変でしたなぁ」
トムソン鍛治店の野外に改めて作った「東屋」で1000年間の放浪生活の話しをノイミュンスターに詳しく説明しているユグドラシル。
女神ハルモニアに足腰ガックガクにされたユグドラシルだが、
そのおかげで魂のエネルギーがMAXを振り切って完全復活である。
現在ユグドラシルとハルモニア分身体は荒療治の回復経過を見る為に新造トムソン鍛治店で療養中である。
巻き込まれエレンは母リリーの元でまだいじけている。
そのエレンを巻き込んだ犯人の天舞龍リールは、さすがに疲れ果てたので「天空城」にて長期のお休みである。
ちなみに新造トムソン鍛治店は「滑走路も併設」されています。
この滑走路は特級呪物「ろけっとぶうすたぁ」の発射基地にもなっています。
・・・・・・・・・・・・また地龍王に怒られるぞ?お前。
「しかし回復されてなりよりでしたな」
「ありがとうございます。
貴方にもご迷惑をたくさんお掛けしてしまい申し訳ありません。
ですがこの様な結末を迎えるなんて・・・」
そうですね?我もまさか改稿のつもりが旧作より最終話の文字数が3倍増になり更に95%以上が「書き直し」になるとは思いませんでした。
もはや完全に別の話しになりましたが楽しかったです。後悔はしてません。
丁度1年前にこの最終話を500字で終ると思っていた自分を殴りたいです。
「つまりユグドラシル様とハルモニア様の分身体は・・・」
「ハルモニアちゃんの力技で私達は同化して完全な「シーナ」になりました」
そう言って頬を赤くして恥ずかしそうに笑うユグドラシル。
そして・・・
「お・・・おとうさん・・・これからもよろしくお願いします」
そう言うと顔が真っ赤になるシーナ。
「!!!!うむ!そうじゃな!シーナよ!」
ユグドラシルの魂が復活してシーナの魂が女神ハルモニアだと知った時に大切な娘を失った気持ちになっていた地琰龍ノイミュンスター。
しかしシーナとノイミュンスターとの義理の親子関係と師弟関係はここから始まるのだ。
そしてもう1人のシーナは深層意識空間で爆睡中である。
1000年分の疲れが一気に出たのだろう・・・お疲れ様でした。
このシーナが目を覚ました時こそが「魔法世界の解説者」の本当の物語の始まりである。
ラーナ姫(エリカ)の奮闘も虚しくシーナの右腕に障害が残ってしまったのが残念だったが生きてさえいれば何とかなるモノなのだ。
片腕の王女シーナの未来はどうなるのか?
それはシーナ本人が作って行くモノなのだ。他の誰にも分からない。
次は「隻腕の龍戦士」編にてお会いしましょう。
第一章「片腕の王女」編
完
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