第20話 「魔法世界の解説者・前編」

私は霊樹ユグドラシル、この世界で生まれこの世界を作りし者。


私をだと神と言う者もおりますがそうではありません。


私は世界の望みを「ただ顕現させる」だけの存在なのです


基本的な世界を作り生命も増えて30000年以上の刻が流れた頃、私の身体である霊樹にも終わりの刻が参りました。


形ある物は必ず滅びる・・・宇宙の真理です。


宇宙の真理に従い私も喜んで滅びましょう。

でも心残りも多いです・・・


私の滅びに際して今後の何かに役立てて貰う為に、地龍、天龍、海龍、魔族、エルフ、人間に私の瞳を授けます。


皆で仲良く過ごして欲しいと私が願いましても悲しい事に叶わない願いでしょう。


私の身体が滅びると私は世界を管理する力を失いましょう。


ですが世界を見守る事は出来ます。


これからは私の子らを世界の影から見守ります。


願わくば仲良き事を・・・・・・・





・・・・・・・・・・・・・シーナ?


・・・・・・・・・・おーい?シーナ?


・・・・・・・・シーナってば


「ねえ?シーナ?」


「うえええええ?!!はいーーーー?!私はシーナですーーーー?!

ってアレ?・・・私・・・立ちながら寝てました?」


「すげぇ絶叫だな・・・いやお前、なんか前を見たままボーとしてたぞ・・・

ってなんで敬語なんだよ?」

そう言いいながらガイエスブルクが笑う、シーナは辺りをキョロキョロして首を捻る。


「あれ?」


「どうしたの?シーナ、なんか様子が変よ?」


「え?えーと?うん!何でもありませんよエレンさん!」


「エレン「さん?」」


「あれぇ?」


「本当に大丈夫なの?」エレンは心配そうにシーナを見つめる。


シーナはエヘヘと笑い「うーん?」とまた首を捻って考えだす。

オーバンとマッテオは顔を見合わせて・・・


「シーナ殿はかなり疲れている様子なので今日はこれまでとしましょう」


「そうですね」


「!!?いや!大丈夫ですよ!新しく作った義手も早く馴染ませたいですし!」


いよいよ様子がおかしいと思ったエレンはシーナの額に手をやり目を瞑り魔力を流す・・・

「うーん?・・・・・・別に何も問題なしだね・・・」


「そうだな・・・普段より口数が多い気はするけど」


「感じる気配や魔力の質にも特に変化は感じませんね」


「では、訓練の続きをしますか?」


「そうです!私は大丈夫ですよー!行きますよ!」


フンフンと言いながらまた歩き出すシーナを後ろから見つめて・・・


「シーナって自分の事「私」って言ってたかしら?「あたし」って言ってなかった?」

エレンが心配そうに呟いた。


シーナの中で確実に変化が出ていた。

普段の無表情さが無くなり表情が凄く豊かに感じる。

それは別に悪い事ではないのだが、何か不安になる幻夢のメンバーだった。



次の日


「シーナおはよう」


「んっおはよ、エレンちゃん」いつもの通りスッと身体を起こすシーナ。


寝起きのシーナは普段通りの無表情さだった。

「昨日は気のせいだったかしら?」とエレンは少しホッとする。



その次の日


「シーナおはよう」


「うーん?・・・ああ~・・・おはようごじゃいますぅエレンしゃん」

うえ~?もう朝~?と言った感じにウニウニとクズっているシーナ。


そしてすぐに二度寝してしまった・・・


「・・・・・」


やっぱり何かがおかしい!と思うエレン。


その日のシーナは終始明るく表情が豊かだったが特別おかしな言動は無い。

がしかし、エレンはやはり心配なのかその次の日は訓練を休んでトムソン鍛冶屋に連れて行く事にした。


「白龍大爆走再び」とはならずに普通に歩いて行った。

シーナは特に何も言わずにエレンの隣を歩く、何を考えているのかエレンにも分からない。


鍛冶屋に到着すると運が良い事にまた天舞龍リールがいた、最近は良くスカンディッチ伯爵領に居る。


リールにシーナの様子がおかしいと伝えると。


ノイミュンスターはシーナの頭に手をおき自身の魔力を流し「どうじゃシーナ?何か不快感はあるか?」と尋ねると・・・


「いや?ないですよ?みんなどうしたんですか?」と不思議そうにシーナが答える。


「ふむ」とノイミュンスターはリールを見る。

リールはひとつ頷いて「よしシーナ!精密診察しよっか!」とシーナをヒョイと肩に担いで部屋に連れて行く。


「ひゃああああああ????!!!またですかぁ?!」

と悲鳴を上げながら消えて行くシーナを見て、「シーナ大丈夫かしら?」と不安気なエレン。


「エレンよ・・・何があってもシーナはシーナじゃ。

お主は変わらず側にいてやって欲しい」

少し困り気にエレンを見てノイミュンスターが懇願する。


「当たり前ですよ!」ノイミュンスターの言葉にエレンが珍しく不貞腐れる。


「シーナ・・・どうしちまったんだろうな?」ガイエスブルクも心配そうだ。



2時間後


「うっうう・・・やっぱりもうお嫁に行けません、リール様に嫁ぎますぅ」

リールに一体何をされたのか・・・自分の体を抱きしめて泣くシーナ。


「じゃあ診察の結果ね!

全て問題無しの超健康優良児!ちゃんとお胸も成長して来てるよ!」


幻夢のメンバーが安堵の表情を浮かべる


「シーナの成長に合わせて精神も成長して来てるから今までより感情が表に出て来ているんだろうね!良い事だから皆んな心配しない様にね」


そっか良かった良かったと解散する夢幻一同。


「あっ!シーナには、お胸の事でまだ話があるから私ともう一回部屋に来てね。

それとエレンもね、男共はさっさと解散!さよなら!」


女の子の胸の事と聞いて顔を赤くして、そそくさと解散する男共。

なぜかノイミュンスターも釣られて一緒に解散する。

そのままシーナ、エレン、リールは部屋の椅子に向かい合わせに座る。


椅子に座るとリールは一つ大きく深呼吸をする。

すると周囲の大気が蒼く閃光を放ちリールの中へと収束して行く。


天龍の深呼吸は大気中の魔力を自らに収束させて、精神力完全集中、全魔力上昇、全龍力上昇、全身体能力上昇を行う究極の切札の一つだ。


「!!!リール様?!」突然の天龍の奥義発動にエレンが驚く!


「ふー・・・よし!」全ての能力を上昇させたリールがシーナに向き直る。


「お初にお目に掛かりますユグドラシル様。

私は天龍王アメデの娘、天舞龍リールと申します」


そうリールが言うとシーナは眠る様に目を閉じゆっくりとまた目を開けた。

その雰囲気は今までのシーナと同じに見えるが?そうしてゆっくりと口を開く・・・


「先程はありがとうございますリールさん・・・

やはり先程は意図的に誤魔化して下さったのですね?助かりました」

口調は違うが気配や魔力はやはりいつものシーナだった・・・


「どう致しまして、あれくらい気にしないで下さい。

それで私は貴女と腹を割って話しがしたい、宜しいですか?」


「はい、どうぞ」


「エレンはシーナの親友だからここに呼んだ・・・それも良いですか?」


「はい、私もエレンさんには、ちゃんとお話ししないとダメだとずっと思っていました」


「リール様?シーナ?ユグドラシル様って???」

いきなり始まった話しにエレンは混乱の極致だ。


「ごめんなさいエレンさん・・・私は長い間エレンさんを騙していました・・・

私の正体は霊樹ユグドラシルです、本当のシーナじゃないんです。

本当に申し訳ありませんでした」


椅子に座ったままだったが深々と頭を下げるシーナ(ユグドラシル)だった。


「?あ?う?」


「本当のシーナじゃない・・・ですか。

全部説明して頂けますか?ユグドラシル様」


ずっとシーナ=ユグドラシル説に疑問があったリール、ユグドラシル本人の口から本当の真実が明かされる。


「はい・・・私の本体である霊樹が朽ちた時にどこからか魂が飛んで来て私の魂が霧散する所を包んで守ってくれました・・・

その時はもう意識が朦朧としていたので、その魂が誰なのか分かりませんでした。


それから長い時間、私はその魂と共に世界を彷徨いました。

その間もその魂は私に《消えないで!頑張って!》とずっと励まし続けてくれたのです」


「どこからか飛んで来た魂・・・今でも誰なのか分からないのですか?」


「はい・・・少なくても私が知る者では無かったです」


どこから飛んで来た魂・・・

女神ハルモニアが自分の精神体より新しい魂を作りユグドラシルを包んだ時の魂の事だ。


この魂の事は、魂を作った直後に女神ハルモニアがすぐに天界へと強制送還されてしまった為に誰にも伝える事が出来なかったのだ。


この世界で誕生した新しい魂だったのでユグドラシルは女神ハルモニアの分身体だと言う事に気付く事が出来なかったのだ。


「でも長い間、一緒にいたので私達は「お友達」になりました」

そう言ってニッコリと笑うユグドラシル。


さて、ここまでなら女神ハルモニアとユグドラシルとの感動の友情の物語なのだが・・・


ここでパシリ女神が盛大にやらかしてしまう!

そのせいでユグドラシルはどえらい目に遭うのだ。


最初のやらかしは、今度はパシリでは無く「主神」なった女神ハルモニアがこの世界に帰還した時に「ユグドラシルの魂を包んでる魂の事は三龍王には伝えている」と思い込んでしまっていたのだ。


天界で様々な手続きをしている間に色々な事が起こって頭でゴッチャになったからだ。

これは女神ハルモニアだけが悪いだけで無く、忙しく「主神」手続きをしている女神ハルモニアの横で、


「ハルモニア様!今度引き取って頂きたい子がおりまして!」


「ズルいですぞ!我が先ですぞ!順番を守りたまえ!」


「いや!我が先でしたぞ!」


「ハルモニアちゃん!今度は「白龍王」が産まれちゃったの!保護をお願いーーー!」


「書類作業中に話し掛けるなぁー!分からなくなるでしょーがー!

それから!うちは「更生施設」じゃありませんからーーーー!!」


と他の主神達がワイワイガヤガヤと大騒ぎしたせいで余計に混乱したのだ。

つまり「天界」が悪い、しかし女神ハルモニアにも「管理者責任」と言うモノも有るのだ。


無論、今でも話しはこの世界の誰にも全く伝わって無いので、現時点でも女神ハルモニアの分身体の事は誰も知らない。


次のやらかしは、


挙げ句の果てに、パシリ女神はこの世界を不在にしている間に「ユグドラシルと自分の分身」を完全にロストしてしまう。

マジでユグドラシルの魂は1000年間の間、天界からも行方不明になったのだ。


『ええ?!なんで?!なんで自分の分身体が見つからないのぉーーー?!』


『ハルモニアちゃん?!バックアップ!バックアップはーーー?!』


『ああーー?!取るの忘れてましたーーー?!』


もう大騒ぎの女神ハルモニアと女神アテネであった。


ロストした原因は「主神」となった事で女神ハルモニアの「神力の波長」が変わったからだ。

なので分身体と同調する事が出来なくなった・・・


本当なら「自分自身の旧個体の波長」のバックアップを事前に取っておくモノなのだが、

そこはパシリ女神ハルモニアなので見事にバックアップを取るのを忘れてた・・・

例えるならスマホの機種変の時に旧スマホの電話帳のバックアップを取らずに旧スマホを処分してしまったのだ。


そりゃそう簡単に見つかりませんわ。

大きな浜辺で落とした10円玉を捜索する様なモノなのだ。

この点では女神ハルモニアの凡ミスである。


これにより三龍王による支援魔力供給作戦が破綻したのであった。

《何で支援の魔力供給が来ないんですかぁー?!》

連絡を断たれ支援も来ない・・・これにはハルモニア分身体も激オコである。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー



「・・・・・・・・・・・おい?」


『ごめんなさーーーーーい?!?!』


「ぜ・・・全部、ハルモニアちゃんと他の神様のせい?・・・「時間を下さい」の意味は?」


『天界の醜態に対する、い・・・言い訳と対策を考える時間が欲しいなぁ・・・とか。

それから今回は「天界」からもお詫びの全力支援が来ます。

さすがに最高神様からも「馬鹿モン!最優先で何とかせい!」お叱りを受けてますので』


「・・・・・まぁ、お主だしな。

つーか・・・天界からの全力支援」・・・じゃと?」


「そうだね、ハルモニアちゃんだし・・・

なんか凄く嫌な予感がするんですけど、気のせいですかね?」


『酷いです!私だって一生懸命にやってるのにぃ・・・』


・・・・・・・もうそろそろ話しを本題へと戻して良いか?


『あっ、はい、お願いします』



ーーーーーーーーーーーーーーーーー




「それから長い時間を彷徨ったので私達は徐々に擦り減りました。

このままだと「共倒れ」になると思い、私達は一か八か「人間」への転生を試みました」


「え?!何で「人間」に?龍種とかじゃなくて?」


「とてもじゃありませんが、擦り減った私達では龍種に転生は無理ですね。

私は最初から力を失っていましたし、「彼女」は長い時間を私を守る為に力を使い続けていましたから」

困った様に笑うユグドラシル。


この様に孤立無縁になってしまったユグドラシルとハルモニアの分身体は転生出来そうな人間の「卵子」を探した。


「すると私を呼ぶ声が聞こえたのです「ここだよ!早く来て!」と」


ユグドラシルが聞いた声とは言うまでも無く、天龍王アメデにより「縁」で繋がった、

故エクセル・グリフォン・ロードのエリカの魂の声だ。


「何とか声の元まで辿り着くと私を呼ぶ声のする「卵子」の隣りにもう一つの「卵子」がありました。

「良かった!この子だけでも助けられる!」と思った私は、「この子の魂」を「卵子」に注入しようとした時・・・」

そう言って悲しそうに目を伏せるユグドラシル。


「ど・・・どうなったんですか?」息を飲むエレン。


「《誰か知らないけど受け取って下さい!うおりゃああああ!!どっせえーーーーい!!》

の掛け声と共に「この子」が私を問答無用で「卵子」目掛けて投げたんです・・・」


ここに来てまさかの力技かよ?!


「そ・・・それは・・・」


「凄い気合いが入った「子」だね・・・」


「それはもう思い切り投げられたので「ビターン!!」と私の魂が「卵子」と完全に結合して定着してしまいました・・・でもそうなると・・・」


「「この子」の魂が消えてしまう?」


「はい・・・それで私は泣き叫びました・・・すると・・・」


「すると?」


《ぐだぐだとシリアスをやっとらんとさっさと「その子」の魂を掴め!馬鹿者ーーーー!!

私がまとめて面倒みちゃるわい!急げーーーー!!》


「はっ!はいーーーーーー?!?!」


「「この子」より更に気合いが入った声に私も無我夢中で「この子」の手を掴んで思い切り引っ張りました。

すると同じ「卵子」に私達2人が入って定着してしまったのです」


「そ・・・それは・・・」もう「それは」としか言えないエレン。


「さすがは「エリカ」だねぇ」リールは「エリカ」は死んだ後でも全然衰えていなかった気合いに感心している。


「そこからが大変でした・・・

一つの「人間の卵子」に二つの魂・・・とても生命を維持出来る訳がありません・・・


しかし・・・


《まだ諦めんなぁ!!まだ手は有る!私の生命力も使えーー!

うおおおお!!!龍騎士エリカを舐めんじゃねぇええええ!!!》


もの凄い「覇気」と「魔力」が私達を包みました・・・そして私は意識を失いました。

それから次に目が覚めた時には「この子」の魂は何故か身体の外で繋がっていて、目の前にはノイミュンスターさんの姿が見えました・・・」


この時、エリカは自分の全魔力を放出して「結界」を張り2人の魔力流失を無理矢理保護したが自分も魔力が完全に枯渇してしまった。

その影響で記憶喪失状態になってしまい現在に至る。


ハルモニア分身体は何とか外部の魔力を集める為に肉体の外に出て必死に大気中から魔力を集めていたのだ。


地龍王と天龍王の加護でどうにか最低限の魔力が持ち直したのでユグドラシルがハルモニア分身体を身体に戻したのだ。


この所、シーナの表層人格に出て来るのはハルモニア分身体だ。


「あっ・・・「エリカ」がその時何をしたのかは分からないんだ?

それで「この子」の魂は今はどうなっているの?」


「皆さんの「加護の力」で私が少し回復しましたから身体の中に引き戻して「私の生命力」を注入しています」


「つまり、お父様(天龍王)と叔父様(地龍王)の力でも、まだ危険は脱していないと・・・」


「はい・・・さすがに無理があり過ぎますから・・・・

でも私の生命力を全て注げば「この子」は助かると思います」


「シーナは・・・どうなるのですか?・・・あなたの事ですよ?」

エレンはようやくと言った感じで声を出す、するとユグドラシルは首を振り・・・


「わかりません「この子の魂」を守る事で精一杯ですから・・・


私の今までの記憶、人との会話、目で見た事、聞いた事の全てを「この子」の魂に注いでいます・・・シーナは私、私はシーナ・・・

今まで人格は「この子」の未来の邪魔にならない様に作った物ですから・・・

正確には私の物とも「この子」の物とも言えないのです」


「今までの私との生活も何も感じないのですか?」


「いいえ・・・私の魂が根底から変わるくらいに楽しかったですし嬉しかったです。

・・・・これからもずっとエレンさんと一緒に生きたいと思えるほどに・・・」


「よおし!言質は取ったよ!ユグドラシル様!」


突然リールがユグドラシルを指差して大声を上げる!

リールの大声に驚きユグドラシルとエレンの目が丸くなる。


「私がなんで天龍の切札を切ったと思ったの?

当然、「この子の魂」もユグドラシル様も救うつもりに決まってるでしょう?

で?どうすればユグドラシル様達の魂の消滅を防げるの?」


「あ?え?それは生命力のエネルギーが不足してるから、それを補えるなら」


「なぁんだよぉ、そんな事?言ってよ!

私が無駄に有り余る生命エネルギーをじゃぶじゃぶとユグドラシル様に注いであげるよ!

そんで「この子の魂」もユグドラシル様も助かる!そしてエレンも悲しまない!

どう?!」


「そっそんなっ都合の良い話し・・・」


「そんな都合の良い話しを叶えるのが天舞龍リールの力だよ!

ユグドラシル様は真面目過ぎ!使える者は龍王だろうと使いまくって自分も皆んなも幸せになるの!」


「はっ、はい!」


「エレンもウジウジしない!

本当のシーナは「この子の魂」もユグドラシル様の魂も一緒!同じなのよ!

多少性格が違うかも知れないけどね!


「はっはい!」


「じゃあ今から出来る事は全部やるよ!いいね!エレンも協力してね!

辛いと思うけどユグドラシル様も頑張る!良いね?!」


「「はい!」」


「じゃあ!始めるわよ!」



ーーーーーーーーーーーーーーーー




『皆さん!始まります!準備はよろしいですか?!』


「おーし!天舞龍が術式が起動したらアンタに魔力を送れば良いんだな?ハルモニア様!

前にバルドルの名前でアンタには迷惑を掛けたからな!任せてくれ!」


出てる!お前の体から既にヤベェ量の魔力が溢れてるっての!

やっぱり凄えなお前・・・アホだけどな。


「うむ、「ベヒモス君達を置き去りにした罰」じゃ、マクシム君よ遠慮は要らん、君がぶっ倒れるまで送れば良かろう」


「いや・・・俺がぶっ倒れる訳が無いだろ?」


「うう・・・回復し切れなかった・・・」残念無念のイリス、不参加決定。

現在、何とかフラフラと立てる程度には回復したのだが、全然間に合わず。


「イリスには元々期待しておらん!無理すんな!」


「良いからよ、役立たずの病人は寝てろよ」イリスの頭をガシガシするマクシム君。


「二人共酷い?!私だって「世界の守護者」なのにぃ」


コイツ等が何をしているかと言うと女神ハルモニアの指示で、これから大技を使う天舞龍リールへの魔力供給を行うつもりなのだ。


『あの子が「魂の秘術」の術式を起動させれば、すぐに天舞龍リールの魔力は枯渇すると思います。

私を通して大量の魔力を天舞龍リールへと注ぐ必要が有ります。

皆さんよろしくお願いします』


ユグドラシルと「この子」の魂2人分の魔力を天舞龍リールは1人で賄うつもりなのだが、そんな事は、ただの自殺行為だ。

最低でも三龍王総出の魔力供給が必要な集団魔法なのだ。


既に「世界の言葉」の伝達により三龍王の準備は万端。

プラス、女神ハルモニアと魔王バルドルと覚醒魔王マクシムの世界チート級魔力保持者も全力で魔力供給を行う。


女神ハルモニアを貯蔵タンクにして必要な魔力を天舞龍リールに魔力を送る、女神を通さなければならない程に「魂」の回復には膨大な魔力が必要なのだ。

それこそ「複数の神の力が必要」なくらいに。


寿命が尽きかけている1人の生命力を回復させるのはそれくらい重い事だ。

これが天界からの「お詫び」の印と言う訳だな。


「私も協力出来たら良かったのですけど・・・」

ハイエルフのルナですら役不足なくらいに危険な魔法行使なのだ。

この集団魔法は少しでも魔力が弱い者が参加すると一瞬で魔力を失って即死してしまうのだ。


『1000年・・・本当にお疲れ様でしたね。後は私に任せて下さいね』


『はーい、ユグドラシルの事をお願いしますね~、私が「核」になりますよ~。

ユグドラシルとの魔力回路完全接続完了!いつでもどうぞ!』

1000年間の任務の集大成だ、「この子」の気合い充分なのだ!


『何か・・・貴女は私とは大分雰囲気が違いますね?』

一応は同じ存在のはずなのだが1000年の間で何かが大分変質した模様。


『そりゃそうですよ~、「私はシーナです」貴女ではありませんよ?』


『なにか子供に拒絶された見たいで凄く悲しいんですけど?!』


『親ですか?うーん?残念ですけど私のお母様は「ファニー1人だけなので」』


『更にガアアアアアーーーーンンンンン?!』


「いや・・・遊んでないで集中しろよ?お前ら」


『マクシム君に素で「遊ぶな」って怒られた?!』

確かに365日間、常に遊びっぱなしのマクシム君にだけは言われたくないわな。



ーーーーーーーーーーーーーーー



「ふーーー・・・・・・・」

ずっと深呼吸をして魔力を限界まで高めている天舞龍リール。


ユグドラシルを安心させる為に「大した事ない」と言ったが、「魂」への魔力供給の危険性は重々承知している。

何せリールと全く同じ事をやった母の天蒼龍シーナは4000年の間未だに昏睡状態なのだ。


《こりゃ下手すれば「消滅」しちゃうかな~?ごめんなさいお母様・・・》

自分の「死」も覚悟する天舞龍リール。


だがそんな悲劇を大人達が見過ごす訳がない。


《リールぅ?聞こえる~?わたくしの準備は出来てるから安心して術の行使に集中してね~》

突然頭の中に師匠である海龍王アメリアの声が響く。


「アメリア師匠?!」


《いい事?力まないでリラックスするのよ~。

リールの後ろにはわたくし達が居ます、思い切りやりなさい!》


「!!!はい!行きます!「創世の陣」!!!」


トムソン鍛治店の上空に直径60m6層の魔法陣が顕現する!



ーーーーーーーーーーーーーーーーー



『始まりました!この場に私の本体が顕現します!

皆さん!凄く眩しいと思いますから一回目を閉じて下さい!』


「「「「はあああああああああ?!本体いいいいいいい?!」」」」


魔王の間に女神ハルモニアが降臨する!

パアアアアアアアア!


魔王の間に閃光が走る!!!


「きゃああああああ???」

イリスが悲鳴を上げるほどのその姿は?!その・・・姿??


「きゃあああああ??目が?!目があああ?!?!」


『眩しいから目を閉じて下さい!って言ってるに何で見ちゃうんですかぁ?!』


「なんちゅうか・・・光の塊・・・じゃな」

言いつけ通り目を閉じて薄目を開けて目が慣れた魔王バルドルが女神ハルモニアの真の姿を見た感想だった。


『そうですね?女神なので・・・』


「うむ!光合しいな!」


『そのまんまの感想ですね?』


人間が思う所の神々しい女神=美しい、とか以前の話しで女神の真の姿=モロに光、だった。


高次元の主神=人間で言う所の「太陽」そのものだと思ってくれてよい。

良く考えて見たらそうだよね・・・


普通だと、その莫大な熱量で地上を焼き尽くしてしまうが、今回はちゃんとその辺りの処置はしている。


それから一応は本に描かれている通りの美しい女神の姿にもなれるのだが、今はそんな無駄な事をしている場合ではないので本来の姿で降臨したのだ。


『私の姿については後です!皆さん!魔力供給をお願いします!』


こうしてユグドラシルを巡る物語は佳境を迎えたのだった。

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