第9話 「戦争の始まり」
ザッザッザッザッザッザッザッ・・・
「フッ!ハアハアハアハア!」
ピアツェンツア王国の王都近くの湖の畔の森を1人の王宮近衛騎士が1人で全力で走っている。
何かに追われている様子で顔は必死だ。
《くそっ!なんで天龍の奴等が・・・ブレストに急いで報告を・・・》
近衛騎士の男がそう思った時、何かを察知したのか立ち止まり木の影を睨む!
すると・・・スッとその木の影から近衛騎士の男の前に王宮メイドの姿をした女性が現れた。
スラリとした長身に長い金髪の髪に青い瞳の女性はどこか幻想的な印象を持つ。
そんなメイド姿の女性を前に近衛騎士の男はジリジリと後退る・・・
スッと女性が近衛騎士の男に向かって手を挙げると・・・
「くっ!!」近衛騎士の男は全身の魔力を練り上げる!
どう考えても近衛騎士の男がメイドの女性に負ける訳が無いのだが、男の額には汗が滲む。
「・・・騎士様・・・そんなに急いでどちらに?」
そう言いながら悲しそうな表情のメイドの女性が手を挙げたまま近衛騎士に近寄ると・・・
「ぐうっ!はああ!!」ズドン!!
近衛騎士の男が唸り叫んだ瞬間!男の周囲の魔力が一気に膨れ上がり騎士の男の背中に大きな翼が生える!
近衛騎士の男は魔族だったのだ。
「炎輪陣!!」ゴオオオオオ!!!
臨戦体制の魔族の男は、そう叫びながら身体に魔法の炎を纏いつつ空に飛び上がり女性に向けて手をかざして「炎弾!!」と叫ぶ!
ズドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
魔族の周囲の炎が丸い魔法弾を形作り次々と女性に向かい飛んで行く!
魔族の男はかなりの魔法の使い手らしく炎の魔法弾は高密度、超高温の炎弾だ!
20発ほどの火の玉が全方位から女性を襲う!
・・・がしかし女性はその場から動かずに、挙げた手をゆっくりと自分の顔の前に出して「・・・風の障壁」と呟く。
すると女性の周囲にもの凄い突風が巻き起こり周囲を土を巻き上げる!
ゴオオオオオ!!!ズドン!ゴオン!!ズドドドオオンン!!!
その突風が魔族の男が放った炎弾と激突して全ての炎弾が風の障壁に飲み込まれて掻き消されてしまう。
この現象はメイド姿の女性の方の魔法が強い事を表している。
「くそ!この女ぁ!!」
炎弾を掻き消されて魔族の男は憤った言葉を放つが、どこかホッとした表情を浮かべている。
「・・・降伏しなさい、私達に見つかった以上、貴方はもう逃げられない。
貴方は上からの指示で動いているだけでしょう?」
メイド姿の女性からの降伏勧告に対して、
「俺が降伏をするとでも?」とメイド姿の女性を煽る魔族の男。
「捕虜になる様な作戦を立てる無能な指揮官に義理を果たす事など無いでしょう?
・・・私は貴方を殺したくないの・・・お願い!降伏して!」
感極まった様子のメイド姿の女性は今度は必死に魔族の男の説得を始めた。
「・・・・・・」メイド姿の女性からの懇願に魔族の男は何も言わず動かない。
それでもメイド姿の女性は魔族の男の説得を止める事は無い。
「さっきの攻撃も本気で私を焼き殺すつもりとは思えなかったわ。
だって貴方はもっと強いですもの!ねっ?オーバン!」
メイド姿の女性の目から涙が一粒落ちる。
そこまで黙っていた魔族が「・・・本国には私の家族がいる」と呟くと・・・
「うん」メイド姿の女性が頷く。
「私が降伏すれば家族に迷惑が掛かる」
「・・・うん・・・そうだね」
「でも戦死なら家族の名誉は守られる・・・だから私を討ち取って欲しい」
そう言うとゆっくりと目を閉じる魔族。
「・・・分かったわ」そう言った瞬間メイドの姿の女性が消えた!
ドスン!と鈍い音が森の中に響く!
音も無く空を飛ぶ魔族の男の背後に回ったメイド姿の女性は男の首元に手刀を打ちおろしたのだ。
脳に衝撃を受けてガクンと意識を飛ばした男を抱きしめて、
「魔族・・・スペクターのオーバン討ち取ったり」
もう一度魔族の男をギュと力を込めて抱きしめたメイドだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そんなシリアスな出来事がピアツェンツア王国で起こっている同時刻の魔王城にて。
「おお?!始まった!始まりましたよバルドルさん!」
エルフの女王イリスは医療用ゴーレムに両腕、両足を四方向に引っ張られて「牛裂きの刑」の様な状態で騒いでいる・・・
え?これ・・・何してんの?と言われると、寝たきりで固まってしまっている手足の靭帯を四方向へと引っ張る医療マッサージなのだ。
見た目はただの拷問にしか見えずに「ナニコレ酷い?!」としか言い様がないのだが、
患者的には凄く気持ち良いらしく1日1回イリスはコレをゴーレム達におねだりしているのだ。
「ああ!もっと強めに引っ張って下さい!うん、そう・・・ああ~気持ち良い~」
大股開きであられも無い姿の破廉恥女王のイリス。
「いや・・・ソレ・・・本当に気持ち良いのか?」
あまりの見た目の絵面の酷さにドン引きしている魔王バルドル。
「ふんだ!寝たきりになった事が無い人には分からないよね~。
何もしないで、ずっと寝てると身体が固まって「うがーーー!!」ってなるのよ?」
「うがーーー!!が何か分からぬがニュアンスだけは伝わったわい。
・・・して?何が始まったのじゃ?」
「そうだ!魔族と天龍の戦いが始まったよ!
あっ!そこそこ・・・もうちょっと強めにお願いしますよ~」
イリスの要望通りゴーレム達はイリスをクイクイと引っ張る。
するとイリスの身体から、「バギィ!ボキボキボキィ!!」と、とんでもない凄い音が鳴る?!
「あー・・・気持ち良いー・・・」
「お主・・・ソレ本当に大丈夫なのか?骨折れとりゃせんのか?」
淑女として有ってはならぬ音に、いよいよ本気でドン引きする魔王バルドル。
「大丈夫、大丈夫、あー・・・スッキリしたぁ。
ありがとうございます、もう結構ですよー」
するとゴーレム達はイリスを引っ張るのを止めて普通のマッサージを始める。
イリスはうつ伏せになりゴーレムがされるがままになり・・・
「すー・・・すー・・・」と寝てしまった。
「さ・・・騒ぐだけ騒いで寝てしまいおった・・・
魔族と天龍がどうなったのか・・・凄え気になるではないか・・・」
メッチャ、「もやもや」だけが残った魔王バルドルであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
魔族の男、オーバンを気絶させたメイドの女性は、後から駆けつけて来た2人のメイドの女性と合流した。
魔族の男を抱きしめてすがる様に自分を見る長髪の女性の姿を見て、
「はあーーーーーーーーーーーー」
わざとらしく深い溜息を吐く金髪ショートカットの女性。
隣りの金髪セミロングの女性はそんな様子を見て苦笑いを浮かべている。
3人共に王宮メイド服に身を包んでいるが、とても強い存在感を発している。
「リール・・・ごめんなさい」
気絶した男をお姫様抱っこで抱え直して先程の長髪の女性はショートカットの女性に頭を下げる。
「ふう・・・それで?どうするの?その魔族の男を?」
ショートカットの女性が腰に手を当てて長髪の女性をジト目で見ながら尋ねる。
「・・・どうすれば良いかな?」悲しそうに魔族の男を見る長髪の女性。
「いえ・・・どうするも何も・・・レンヌが面倒見るしか無いでしょ?」
今度はセミロングの女性・・・「天朱龍ニーム」がそう答えると、
「いいの?ニーム?」顔を上げる「天龍レンヌ」
「いい訳がないでしょう?」呆れた声と表情の「天舞龍リール」
「うう・・・ごめんなさいリール。でも・・・」
長髪の女性は天龍レンヌ。
ショートカットの女性は天舞龍リール。
セミロングの女性は天朱龍ニーム。
このメイド3人娘は、天龍王アメデの愛し子のラーナ・フォン・ピアツェンツェアの警護の為に派遣された天龍の龍戦士だ。
そして気絶している男は魔族「スペクター」のオーバン。
魔族軍の情報部所属の男で今回のピアツェンツア王国潜入作戦での連絡要員だった。
天龍がピアツェンツア王国城内に存在している事を突き止め、
本国に通達しようとした所を天龍レンヌに察知されて更には念話通信も妨害された為に自力で逃走しようとした所を捕らえられた訳だ。
そしてお互いの素性を知る前は擬態としての恋人同士であったが、いつの間にか本当に愛情が移ってしまった訳だな。
「あああもうー!どうしてこうなったのさ?!」
天龍の総司令官でもある天舞龍リールは頭を抱える。
任務中に敵の魔族と恋仲になるだけでも問題なのだが、侵攻して来た魔族部隊の情報通達を行っているオーバンを勝手に捕虜にした事も大問題だ。
これでは敵を泳がせて、更に潜伏している他の敵部隊を炙り出す作戦が破綻してしまう。
そうなるとオーバンへの尋問が必須だが、これは拷問に近く、かなり苛烈な尋問になる。
何故ならば、敵部隊に警戒された以上は、もう絶対にオーバーンの口から展開部隊の情報を聞き出さなければならなくなったからだ。
しかし天舞龍リールは戦友のレンヌの恋人を拷問するのは気が引ける・・・と言うか絶対に嫌なのだ。
かと言って、そんな汚れ仕事を天朱龍ニームに任せる事も絶対に出来ない。
「うーーーーーーーーんんんんんん???」
「本当にごめんなさい、リール・・・・・・・」
悩みに悩んだ末に天舞龍リールはテンパった頭で妙案を捻り出す。
「あっそうだ!地龍に押し付けよう!」と・・・
幸か不幸かピアツェンツェア王国のスカンディッチ伯爵領には、何故だか知らないが天舞龍リールの旧知の友で地龍のNo、2地琰龍ノイミュンスターが滞在している。
彼ならば捕虜に対して酷いことはしないし、必ず情報も引き出してくれるはずだ。
それに今回の戦争は天龍に全てを任せて地龍はサポートに徹している。
多少の無理難題なら押し付けて良いはずなのだ!
ちなみに現時点でリールはラーナの姉のシーナの事を重要視していない。
ノイミュンスターがシーナを養育しているのは知っているが理由まで聞かされていないのだ。
しかしノイミュンスターが近くに居るのは事実なので利用しない手はない。
正に天啓「私って頭良い!!」と天舞龍リールは自画自賛した。
3人娘は見た目は同じ20歳代前半に見えるが天舞龍リールは5000歳を楽勝で超えてる天龍の中でも最高位クラスの龍戦士だ。
地龍教と天龍教の聖典で地龍には地琰龍ノイミュンスターが有り、天龍には天舞龍リール有りと謳われた神話クラスの龍種だ。
しかし天舞龍リールは昔から、こんな感じでかなりフランクな話し方なので余りそうは見られないが・・・
「魔族の男は地琰龍ノイミュンスターの元へ移送します!」
「え?!」天舞龍リールの命令に驚く天朱龍ニーム。
魔族の捕虜の勝手な地龍への送還など普通は許される訳がないのだが、
総司令官の彼女が是と言えば是になってしまうのだ。
こうしてオーバンとレンヌの若い2人は、お婆ちゃんに救われたのだ。
「うっ・・・」
3人娘がそうこう話しをしていると魔族のオーバンが目を覚ました。
「・・・オーバン」(良かった・・・目を覚ましたのね?)
「・・・レンヌ」(レンヌ・・・何故私を討たなかったんだい?)
お互いに見つめ合い心の中でそんな会話をしているだろうと思われる2人だが、
「いやいや、それどころじゃないっての!」と天舞龍リールは2人の甘い空気をぶった斬ってくる。
「はいはいはい!そう言うのは後ね?後!
それでオーバン君・・・だよね?いいかな?君はここで戦死したの!いいね?」
「はっ!覚悟は出来てます」オーバンはこの場で処刑されると思ったのだ。
「全然違うよ!本当に死んでどうするの?!この馬鹿者!
君はもうこの世には存在しない!そうしないと君を助ける事は出来ないって意味!
これは君の為じゃ無くてレンヌの為だよ!」
何?この正直者は?と思わず天舞龍リールは憤慨した!
コイツ本当に魔族の情報部の人間なの?!と。
「リール・・・・」
自分を思ってくれている天舞龍リールに感動した天龍レンヌが涙目でリールを見つめる。
「但し!君には魔族軍の展開情報は絶対に吐いてもらう!絶対に!いいね?!」
そう言うと天舞龍リールの威圧感が上がる!
オーバンは初めて接する神話クラスの龍戦士の圧倒的な存在感に戦慄する!
「その後は地琰龍ノイミュンスターの所で静かに!何もしないで!過ごしてもらう!いいね?」
ここで更に神話クラスの龍戦士の名前が出て来てオーバンは抵抗する気が完全に尽きる・・・
「はっ!心得ました、リール様の仰せのままに」
レンヌに抱かれたままオーバンは項垂れた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
スカンディッチ伯爵領の上空を飛ぶ1人の天龍・・・
体長は12mと小柄だが広げた翼の両翼は30mほどの立派な天龍だ。
体の色は美しい青色、天を飛ぶサファイアと言っても良い。
古い神話の中に出て来る天を舞う優美なる龍、天舞龍リールだ。
スカンディッチ伯爵領に住む地龍達は超大物の登場に騒然となった。
何せ天舞龍リールは「龍種の中」での人気アイドルなのだ。
「おおーー?!リール様がお越しになられたぞー!」
「きゃーーー?!リールさまぁーーーー!!」
「きゃあああああ!こっち向いてー!リール様ー!」
「ありがたや、ありがたや」
地龍達の熱烈歓迎に少し引く天舞龍リール。
「「あ・・・あははははは・・・」」
そんな熱い雰囲気の中で地琰龍ノイミュンスターは上空を見上げて、
「おおっ!随分と久しい顔じゃのぅ」と暢気な事を言っているが隣のマッテオは気絶寸前なのだ。
そりゃいきなり神様降臨となれば気も遠くなるだろう。
「て・・・天舞龍リール???」
地龍達の熱狂を受けて仕方なく天舞龍リールは街の周囲を一周する。
彼女はファンサービス精神が旺盛なのだ。
それから真っ直ぐ地琰龍ノイミュンスターが居る鍛冶屋の前に降り立ったのだ。
「「ひっさしぶりーノイミュンスター」」
荘厳な龍の姿に似合わない明るく可愛いらしい声が辺りに響く。
「おおっ久しいのぅリールよ、息災そうでなによりじゃな」
まるで近所のおじさんとおばさんの朝の挨拶の様な会話が繰り広げられているが隣りで立っていたはずのマッテオは既に気絶している
「「あれ?その子大丈夫?」」気絶して倒れたマッテオを心配するリール。
「ん?おお?!
ふむ・・・どうやらお主の余り有る美しさにやられた様じゃな。
これ以上被害者が出ん内に人に化けては貰えんかのぅ?」
「「ああ、ごめんごめん」」
これ以上の混乱を避ける為にシュッとメイド姿の女性になる天舞龍リールだが、
周囲の野次馬達のボルテージが急上昇する!
ウオオオオオオオオーーー???!!!
「きゃーーーー?!リール様!可愛いーーーー!!」
「あははははは・・・」
集まった地龍の観客達に手を振るリールだが、その肩にはオーバンが担がれているのだ。
「ん?なんじゃその魔族の男は?」
怪訝な顔で男の顔を見るノイミュンスター。
全てが終わったと言わんばかりの顔のオーバン、そして気絶しているマッテオにバツが悪そうに愛想笑いをしているリール・・・なかなかのカオスな状態になった。
「えーと?実はですねぇ?」
リールは一連の事情をノイミュンスターに話す。
そして一連の話を聞き、少し考えたノイミュンスターが、
「なるほどのぅ、まぁ我は構わぬが・・・・」と答えた。
ノイミュンスターはスッとオーバンに目をやりオーバンを威圧しながら、
「良いか?オーバンとやら・・・
お主を思うレンヌの愛情を裏切る行為をすれば、我とリールが世界の果てまで、お主を追うと心得ると良いぞ」と告げる。
「はっ・・・はっ!重々心得えました!」真っ青な顔で頷くオーバン。
それからオーバンから彼が知りうる全ての情報を聞き出したのだが、そこそこ有力な情報を得る事が出来た。
「ふむ・・・では魔族はシーナの重要性には懐疑的な考えなのじゃな?」
「懐疑的と言うより優先順位を低く見積もっていると思われます。
王女ラーナの姉で出奔しているので、ピアツェンツア王国を政治的に分断を狙うなら利用価値は高いですが・・・まだ調査の段階なので」
「それで今回の首謀者の名は?」今度はリールが尋問をすると、
「第六軍司令官のブレストと特務隊のアミアンです、私は特務隊でした」と
アッサリと自白するオーバン、もう魔族軍に未練は無いように見える。
「今後レンヌとはどうするのじゃ?」
ノイミュンスターがレンヌの事を尋ねるとオーバンは辛い表情をして、
「っつ!!・・・これ以上彼女の負担にはなりたくありません。
今後は会うつもりはありません」と心にも無い事を言うので、
ノイミュンスターはつかさず、
「ふぬ・・・お主は今初めて嘘をついたのぅ。
レンヌに会いたいと心から思っておるじゃろ?なぜ嘘を吐くのじゃ?
お主と会わない事などレンヌにとって何も良い事などないぞ?
一体お主は何の為に此処に来たのじゃ?
レンヌと幸せになりたいと願ったからじゃろ?
ならばレンヌと幸せになれば良かろうて」と一気にオーバンに畳み掛ける。
「・・・・・・・」
ノイミュンスターの正論に何も言い返せないオーバン。
それから「まぁ・・・その辺りはリールが上手くやるだろうて」
ノイミュンスターはニヤリと笑う、その右隣りでリールは頭を抱えているが・・・
「・・・その件もノイミュンスターに任せていいかな?」
とりあえずリールは無理は有るが、言うだけは言って見ようと試みる。
「リールよ我に色恋の何が分かると思う?」
呆れた顔のノイミュンスター返された。
「はいそうですね・・・ごもっともですね」そう言って再び頭を抱えるリール。
その時、「む?」ノイミュンスターが何かを察知して反応する。
それと同時に、
《リール聞こえますか?ピアツェンツア王国王城に敵の攻撃が始まりました》
天朱龍ニームから天舞龍リールを「敵来襲」の一報が入る。
報告を受けて「敵の戦力は?」と一気に戦闘モードに移行する天舞龍リール。
《転移陣を使い魔物を送り込んで来ています。
先陣の魔物数は約300・・・それから間違い無く龍種の反応が有ります》
「オーバン!龍種の数は?!」
龍種の襲来に更に威圧感を増したリールがオーバンを詰問すると、
「はっ!おそらく3から5と思います!」即答したオーバン。
オーバンは何かが吹っ切れたのか完全に魔族軍を裏切るつもりの様子だ。
「聞いた?ニーム、大丈夫?レンヌと2人で行ける?
私は転移陣を潰しに行きますが増員は必要ですか?」
《問題ありませんが、出来れば後詰と後処理に3名ばかり欲しいです》
「了解したよ!フィジーから5名急行させます!1時間持ちこたえて!」
《はい!了解です!》
「ふむ・・・我も久しぶりに暴れるかのぅ?」
かなり珍しい事に今回の戦いに参戦するつもりになる地琰龍ノイミュンスター。
「え?・・・うーん?・・・多分・・・叔父様に怒られると思うよ?」
リールが言う「叔父様」とは地龍王クライルスハイムの事だ。
「やはりダメかのぅ?」
「ダメだと思います」
地琰龍ノイミュンスターが参戦するとピアツェンツア王国王城が崩壊しそうな予感がしている天舞龍リールはノイミュンスターに「参戦不可」を言い渡す。
「その代わりに、もし精神支配を受けた者が居たら治療をお願いしますね」
「ふむ・・・そこは我に任せておけ」
こうしてピアツェンツア王国王城での戦いが始まったのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「おおーー?!始まった!始まりましたよーー!」
うつ伏せ状態で天井から吊るされたSM女王イリス様がまた騒ぎ始める。
「だから一体何の真似なのじゃ?その様は?!」
マジで酷すぎる絵図に思わずツッコミを入れる魔王バルドル。
「これは「筋力回復」リハビリテーションなのです!」
「お・・・おう?そうなのかい?して?何が始まったのじゃ?」
「魔族軍がピアツェンツア王国王城に攻撃を開始しました!」
「そう言う事は早よ言わんかい!馬鹿者!!」
実の所でピアツェンツア王国王都には真魔族・・・ヴァンパイアの移住者が多く居るのだ。
王都襲撃は他人事で済ませられない魔王バルドルはピアツェンツア王国王都在住のヴァンパイア達に警報を出す為に魔王の間から走り去った。
「ふん!むん!ふん!」
事態の急変が起きても何も出来ない吊るされ女王のイリスは、悔しさの余りに吊られた状態で背筋を鍛え始めるのだった。
「イリスちゃん?はしたないから止めなさい!」
そしてルナに「め!」されたのだ。
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