異世界転生したけど、こんなのは嫌だ


 死んだら、異世界に転生した――しかし、それは果たして幸運なのだろうか?


 今回は異世界に転生したけど、あまり嬉しくなかった事例をご紹介しよう。






 CASE1


 異世界転生――所謂、現実世界で死んだ人間がファンタジーな異世界に生まれ変わるという奴だ。風呂で滑って、頭をゴンと打って天に召されるという何とも間抜けな最期を迎えた俺も、その異世界転生を果たしたひとりだ。


 ファンタジーな世界に生まれ変わったら、やりたいことを思いっきり楽しむのが異世界転生の醍醐味!


 ……とか、思っていた時期が俺にもありました。転生したからと言ってバラ色の人生を歩めるわけじゃないんだよ。


 そもそも、俺は“人間”に転生することが出来なかった。じゃあ、魔物に転生したのかって?


 うん、俺は魔物に転生してしまったんだ。今、暗くジメジメしたダンジョンで冒険者達を待っている――開けた者を喰らう怪物たるミミックとして。


「(神様の薄情者ぉぉおおおおおおおおおおおおっ!)」


 何でミミックなんかに転生させたの!? せめて、他の魔物の方がよかったわ!


 冒険者が開けてくれないと、動く事すら出来ないんですけどォォォォォォ!?


 って言うか、まずはこのダンジョン自体に問題がありありだわ! だって、ここって初心者専門のダンジョンだもの!!


 俺の近くに置いてあった宝箱は普通の宝箱で、既に開いている。で、開いていないのは俺だけ。


 だから、冒険者が俺の近くに来ても――。


「あの宝箱、開いてないぜ」


「きっと、ミミックだ! 無視して行こうぜ!」


 とか言って、華麗にスルーですよ!? 俺にとって最大の不幸は初めて俺に近付いたのが鑑定魔法を持つ魔法使いだった事だ。


 魔法使いが鑑定魔法で、俺をミミックであると看破して開けずに放置していった為に後続の冒険者達は俺を即座にミミックだと判断して華麗にスルー!


 ……お願いします、誰か俺を開けてくれませんかね? こんなところに、ポツンと放置プレイされるのはツライっス。


 今日も冒険者を待ち続ける俺。何時か、俺を開けてくれる人は現れるのだろうか……(´•̥ ω •̥` )






 CASE2


 現実で死んでしまい、異世界転生を果たした俺だけど、NPC――即ち、モブキャラでした。ごくごく普通の町に居る一般人Aです。


 まぁ、勇者に転生させろとか贅沢は言いませんけど……ひとつ、ツッコませて頂いても構いませんか?


「ここは、●●の町です」


 何で、町を訪れた人に向かってこの言葉を口走らなきゃならんの!? これ、RPGとかでNPCが勇者とかによく言う台詞だよね!?


 しかも、自分の意思とは関係なく勝手に口が動いてるんですけど! これ、一体どういう事なんだよ!!?


 俺は自身に起きている異常事態を家族に説明する。


「な、何だと……!? と、とうとうお前にまで一族に伝わる呪いが発症してしまったのか!!?」


 え……呪い? あの、呪いって何のこと?


 ウオオオンと泣き叫ぶ親父とお袋、爺ちゃんを宥めて理由を訊ねる。一体、呪いとはどういうことなのか?


「うむ、実はなぁ……」


 親父は俺達一族に伝わる昔話を語り出す――その昔、俺達の御先祖様の夢枕に神様が現れ、お告げを告げに来たという。


 夢枕に立った神様は、御先祖様に話し掛けたのだが……。


『あー、チミチミ。聞こえるかね?』 


『ぐごーぐごー』


『えー、これからチミに勇者としての使命を』


『むにゃむにゃ……うるさい、帰れクソジジイ』


 睡眠優先の御先祖様は、神様に向かって枕を投げた。神様は精神体だったので枕はすり抜けた模様。


『ぬぅわんと、けしからん! 折角ワシがお告げを告げに来たというのに……罰として、チミとその血筋は末代まで自分の町を旅人に紹介し続ける役を命じる!!』


 ……ブチ切れた神様の呪いで、俺の一族は先祖代々、自分の住む町を旅人に紹介するという呪いを掛けられたという。


 うぉおおおおおおおおおい、何してくれとんじゃ御先祖様ァァァァァァァ! アンタのせいで、勇者になれるチャンスが潰されてんじゃねぇかァァァァァ!!


 しかも、神様の機嫌を損ねたお陰でいらん呪いまで掛けられやがって!


 そして、今日も俺は――。


「ここは、●●の町です」


 この言葉を言い続けるのだった。周囲から、またあいつ同じこと言ってるぜとか、陰口を叩かれてます……恨むぜ、御先祖様(´•̥ ω •̥` )







 CASE3


 目を覚ますと、死んだ筈の俺は誰かに抱えられていた。周囲には恐ろしいモンスターの姿が……こ、これはもしや異世界転生って奴!?


 ……いや、待て。何かがおかしい――何で、いきなり目の前にモンスターが居るんだろうか。


 異世界転生なら、最初は赤ん坊からスタートみたいな感じじゃ……うおっ!? 急に身体が勢いよくモンスターに向かって振り下ろされる。


 凄まじい衝撃が走り、俺は息が出来なくなる。く、苦しい……な、何がどうなってんだ……!?


「おーい、大丈夫か?」


「問題ない、棍棒が折れただけだ」


 こ、棍棒って……俺、転生したら棍棒だったの? せ、せめて、生き物がよかったわ……ガクッ(´•̥ ω •̥` )






 今回は3つの事例をご紹介しました。いや~、異世界に転生したからと言って、必ずしも幸福になれるとは限りませんなぁ。


 では、また何れ――。





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