毒視線(2024/05/18)

歪んでいない人間はいない。だがどうしても受け付けない歪みもある。

たとえば私にとっては、恩着せがましく振る舞うことだったり、悪辣であることをステータスとすることだったり、あるいは、同類だったり。


私の友人もまた、歪んでいた。

彼女は常に清廉潔白であろうとしている。彼女には歪みが欠けていて、それこそが彼女の歪みだった。彼女のことは好きだが、その歪みだけは受け付けなかった。

彼女は持ち前の博愛精神で誰とでも仲良くした。それはいいのだが、唯一、私は彼女が私の嫌いなあいつと仲良くするのだけは嫌だった。

独占欲だろうか。いや、違う。もっと気持ちが悪くて、冷めていて、淡白な毒。

博愛な彼女はおそらく、私がこの筆舌しがたい毒を孕んだ目で彼女を見ることを、個性的な愛と見做している。

____きっと私は、彼女じゃなくても良かったというのに。

受け付けなかった。

あいつも、彼女も、私自身も。


なあ、友人。

きみが帰り際に私に言った「またあした」、きみはそれをどんな顔で私に言い放ったと思う?


なあ、友人。

私は、きみが私のことを好きであろうことを理解している。同時に、きみが私のことを嫌いであろうことも。


友人、きみは歪んでいる。


きみはきっと、私に嫌がらせをしたかったんだ。それと同時に、私を救済したかった。


なんて歪んでいるんだろう。


これは紛れもなくきみ自身だ。きみが思うきみとは違う、私が感じたきみ。


私は、歪んでいる____

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

日記 @neve0_0

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る