みんな初めてのボーリング
くさぶえ 舞子
第1話みんな初めてのボーリング
令和五年十一月、世の中的にはそろそろ、旅行にいく人たちが目立ち始めるようになった。
息子が三歳になって少したった頃、私たち家族三人はボーリングをしに行くことにした。息子は生まれて初めての経験で、私たち夫婦も一緒に行ったことはなかった。
何せ、息子は一歳のときすでに五キロの米を持ち上げるほどの力持ちだったので、ボールが持てないこともないだろうという目論見だ。夫が休みの日に車でラウンドワン(ゲームセンター兼ボーリング場)に向かった。
最初は二ゲームしようと思ったけど、夫が
「大丈夫? 結構、体力使うよ?」
と、心配してくれたので、一ゲームで終わることにした。靴を借りて、ボーリング場にエレベーターで向かった。
ボーリング場に着くと奥の二つのレーンは高校生らしき男の子たちだけの集まりがいてボールを投げていた。内心、これまでの人生で片手におさまるくらいしかボーリングをしたことがない自信のない私は、この子たちに笑われるんじゃないかと不安に思った。
が、あれれ? 一生懸命みんな投げてるけど、ガーターばっかりじゃん!と、 奥のレーンを見て思った。あぁ、そうか、この子たちもデビューなんだなと、何となく微笑ましく思った。コロナ禍で勉強をして、晴れて高校生になって、大学生になったら、ハイスコアを出す!って練習中なのね。ふふふふ。幕の内側を見たようで嬉しくなった。
さて、私たちもボーリングを始めようとボールを探しに行った。夫は十三号を息子は置いてある中で二番目に軽いのを、私は夫より軽いやつを選んだ。最初の内こそ夫のスコアに一点差までせまったが、後半からガーターばかりでどんどん差は開いていった。
初めてボーリングに挑戦する息子は、ガーターにならないように溝にくるとボールが跳ね返ってくる設定をしていたため、ガーターでも何本かピンを倒せていたみたいだ。滑り台のようなものを設置してそこにボールを置いて押す感じだった。
私たちの結果はというと、夫百七、息子五十六、私六十七と、散々な結果だった。三歳の息子と約十点差とは。結構、体力を使ったので、一ゲームにしておいて正解だった。翌日、右手首が凝って、もっと軽いボールにしておけば良かった、次からは!と、思った。
そして、そんな日常のありがたさをやっと取り戻したんだなと、ジーンときた。
みんな初めてのボーリング くさぶえ 舞子 @naru3hakuji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます