イチゴを好きになってしまうじゃないか!

くさぶえ 舞子

第1話イチゴを好きになってしまうじゃないか!

 令和五年三月十三日夜。全国的にマスクを取るのが個人判断になった日の二十時ごろである。

「お義母さん、もう何年、イチゴ狩り行きたいね~って言ってるんですか!?」

と、私は少し声をあらげて言った。そう、コロナ禍で出産を経験をして以来、月に二回くらいのペースでお世話になっている義実家でのひと言からはじまった。

お義母さんは、どこかへ行きたい話をするとき、必ずイチゴ狩りに行きたいと言っていたのだ。ところが、その記憶が曖昧で行ったことはあるけれど、中身を覚えていなかたのだ。だから余計にいちご狩りに行きたくなるのだ。子供も生まれて二歳半になる。その間ずっと聞いていたのでたまりかねて放ったひと言だった。

それから、明日も夫が休みだったこともあり、

「もう、明日いきましょ! 明日!」

と、半ば強引に、出無精になりつつあったお義母さんを誘ってイチゴ狩りの電話予約をした。

実は、私自身一度もイチゴ狩りに行ったことがなかったので意気揚々とした。

イチゴ狩りのサイトを見てみると、長靴や、汚れてもいい靴が必要と書いてあったが、持っていなかったので慌てて近くのディスカウントスーパーに買いにいった。

次の日、朝ごはんを食べて車で四十分くらいのところへ行った。

そこで、軽くイチゴ狩りの説明を受けた。なんでも、猫の手のようにイチゴを手のひらにくるみこんでへたの所で摘むのがいいらしい。車のなかでお義母さんが

「最低十個は食べるのよ!」

 と、意気込んでいたが、内心そんなに食べれるかなぁ?と、私と夫は思っていた。私はそこまでイチゴが好きではなかったのである。

大人二人の料金と、シニア料金一人分を払った。子供はまだ二歳なので無料だった。そして、食べたときに出るへたを入れる袋をそれぞれもらった。

畑に行くと取り方を教えてもらった。言われた通り猫の手でくるっとイチゴを摘んで、口にいれた。

「あま~い!」

お互いの顔を見合わせた。

「おいしい!あま~い!」

 この、連続だった。さすが、あまおうしか栽培していない農園を選んだだけはあった。私は、感動した。これじゃぁ、イチゴを好きになってしまうじゃないかと。車で来る途中にホームページを見たら、練乳の持ち込み可能と、書いてあったので、慌ててコンビニで買って鞄に忍ばせていたが、そんな必要はなかった。

私たちは夢中になって甘いイチゴを頬張り続けた。あっという間に幸せな三十分は過ぎてしまった。

お義母さんの新しいイチゴ狩りの記憶も更新されて満足げにしていたのでよかった。

帰りにイチゴ農家さんに

「生まれて初めてこんなにイチゴを食べました!」

と、喜びを伝えたところ、

「初めてだったんですか!?」

と、驚かれた。急に昨日の夜、予定を無理に入れてもらったけれど気さくに受け入れてくれたのでよかった。また、来年も行きたいなと思った。

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