第2話 もしかして寝てた?

「急の出来事で、皆さんもどうすればいいかわからないと思います」


既に誰が誰だか分からなくなってるんですけど


「あなたたちに与えられた力は犯罪を犯すためのものではありません。人を助けるためなど、本当に必要になった場面でしか使わないようにしましょう」




「おーい、こうたろー」


「なん・・・誰?」


「・・・剛だって。もう忘れたのかよ」


剛は呆れながらも笑って返答する。


「お前が悪いんだろ?まだ慣れてねえんだって」


幸太郎も笑いながら話す。


「それにしてもさ、他に何振ったんだ?」


「えっとな」


剛はステータスを開けながら、幸太郎に向かって説明する。


「やっぱり男といえば筋肉だろ」


「・・・それでその体格か・・・」


ジト目を向ける幸太郎に対して、剛は「悪いかよ・・・」と咳払いをして話を続ける。


「他には、サッカーやってるから体力とかかな!」


胸を張って言い切ったな・・・


「あれ、知性とかってなかったっけ。剛アホだし丁度いいじゃん」


「あ・・・見てなかったわ」


剛らしいっちゃらしいけど・・・


「もうちょっと考えてやれよ」


2人はくすくすと笑いながら教室へ帰っていく。




うーん、何に振ったらいいのかな。やっぱり筋肉とかかな。それと外見とか・・・ちょっとくらいあった方がモテるよな。へへ・・・


「・・・い!福井!!」


「は、はい!」


「ここ!解いてみろ」


先生が、黒板にチョークを打ち付けて指示する。


「えっと・・・わかりません・・・」


「じゃあ・・・」


「先生!僕が答えます」


「「「お前は・・・!」」」


メガネのいかにも勉強できそうなやつが手を挙げた。それと同時に、数人の生徒がそちらを見て声を上げる。


「「「学年560人中、560位を12連続取っている斎藤鉛次!!」」」


「なんで言えんだよ」


可哀想よりも先に、なんで言えるのかという疑問が先に出てしまう。その言われように対して鉛次は・・・


「前の僕と一緒にしないでくれないかい?」


「お、おう」


そう言って、鉛次は黒板と向き合って問題を解き進める。


「・・・・・・正解だ」


「「「おぉ!!」」」


元々の知性とかって関係ないのかな。だってあいつ、各全教科一桁だったし。知性にも少し振ってみたいな。




「今日はここまで。各自メモしておくように」


授業が終わると同時に、剛が話しかけてきた。


「売店行こうぜ」




「蓮城くーん!!」


蓮城美月。この学校の生徒会長であり、おそらく、いや、確実にこの学校で一番のモテ男だ。全ての女子生徒の憧れで、全ての男子生徒の敵だろう。それは、この珍事件が起きる前も、起きた後も同じだ。


「美香ちゃんか。可愛くなったね」


キザだ。誰がどう言おうとキザだ。それでなんで女子は喜んでるんだろう。別に、妬んでるわけじゃないんだけど?


「蓮城のやつ相変わらずイケメンだなぁ」


蓮城と女子たちのやり取りを眺めながら呟く。


「剛、お前そういう趣味あったんだな・・・いいと思うよ」


「ちょ、勘違いすんなよ?あいつ、前と顔変えてないんだなぁって。何に振ったか気になるぜ」


剛、必死の弁解。


「体格も変わってないしな。体力とか知性じゃないか?」


それか俺と同じでまだ決めてないのだろうか。あれほどキザなやつに限って?まあ時間経ったら分かるか。


「あっ!!」


食器を運んでいた女子生徒がつまずく。その後ろに一筋の陰が回り込む。


「大丈夫かい?」


「うん・・・」


見えない速さで後ろに回り込んで居たのは、蓮城だった。女子生徒は、いつもとは一味違う積極的な蓮城の姿に顔を赤らめる。


「ちっ・・・行くぞ幸太郎」


他にも妬んでる人いたわ。

確かに速さもあった方がかっこいいよな。




「では気をつけて帰って下さい」


「やっと終わったー!!」


みんなが帰り始める中、幸太郎は一人、席に座ってステータスを眺める。


「こうたろー今日部活行くか?」


「もうちょっとで決まるから先行っててくれ」


今日一日考えてみて、筋力と知能がメインで、他のステータスにもちょっとずつ振って、それで――






空はもう朱色に染まって、カラスが鳴いている。部活動もチラチラ終わり始めて、帰っていく生徒の姿が見える。その中には優乃の姿もあった。


「あっ・・・ノート忘れたから取りに行ってくる!」


そう言って優乃は階段を駆け上がっていく。


「おけー」

「下足で待ってるね」




「おっ、開いてる」


扉を開けて、自分の机に目が行く。その前に、西日が差す窓際で、寝ている幸太郎が目に入った。


「ステータス開けっぱなしじゃない」


優乃は静かに椅子を引き、幸太郎が寝ている前の席に座る。


「昔っから疲れたらすぐ寝る癖あったよね・・・」


優乃は、普段見せない緩んだ顔で寝ている幸太郎に話す。


「んー・・・」


「っ・・・!」


起きた幸太郎に驚き、慌てて席を立つ優乃。


「あれ、もしかして寝てた?」


「私は忘れ物取りに来ただけよ」


「そっか。優乃が起こしてくれたのか?」


「だから私はノート取りに来ただけだって」


「じゃあなんでここに?優乃の席向こうだろ?」


「なんでもないわよ・・・」


そう言って優乃は自分の席へと向かう。


なんで怒っているんだ・・・?そういえばステータス決めてる途中だったな・・・


「・・・・・・は?」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る