運って実力に入りますか?〜平凡な俺がある日を境に無双状態〜

ゆきのふるひ

第1話 お前ら誰だよ

俺の名前は福井幸太郎。


普通の高校に通って、普通に暮らしている。

彼女はもちろんいない。

友達はそれなりにいる方だと思う。


そんな平凡な俺が、ある日を境に無双状態に陥る事になった。


事は一月前に遡る――


『続いてのニュースです』


いつも通り家族で朝食をとっていると、何気なく見ていたニュース番組に目を丸くする。


『今朝、全国で同時に、これまでに無い事例が発見されました。ゲームなどによく出てくる、「ステータス」というものを自身に反映させることが可能になりました。次に、街での反応を見ていきましょう』


『あなたはどのようなステータスですか?』


『見てくれ!車もこんなに軽く感じるぜ!!』


『パワー系なんですね。ありがとうございます』


テレビから聞こえてくるのは、普段生活の中ではあまり聞き慣れない内容だった。というか聞くことがない。

母と父を見るも呆然とした様子でテレビを眺めている。


「なんだ?これ」


幸太郎は疑問の声を漏らす。


「ほら、ゲームに出てくるじゃないか。幸太郎」


「・・・いや分かるけど。どう考えても普通じゃないでしょ!」


当たり前のように話を進める父にツッコミを入れる。


「でもこれからはステータスのある世の中が当たり前になっていくんだよ」


「そうなんだろうけど・・・」


流石に受け止めきれないだろ・・・!父さんはよく普通に話せてるな・・・


「か、母さんはどうなんだ?」


「うーん、何に振ればいいかしらー・・・」


母さんまで・・・・・・


「行ってきます!!」


幸太郎は呆れた様子で家を後にした。




「おはよう幸太郎」


ドアを開けた先に待っていたのは、幼馴染の西条優乃だ。家は隣で小学校からの友達だ。


「おはよう・・・優乃?なんか変わった、くないか?」


「やっぱり気づいちゃう?」


優乃は両手を頬に当て、若干照れる仕草を見せた。


「そういう幸太郎は何もしてないのね」


「あー・・・あのニュースでやってたやつか・・・」


そんな話をしながら2人は駅へと向かう。




「なあ優乃」


「なに?」


「あの人の前にあるのって・・・」


朝の電車は通学、通勤で混雑している。幸太郎が指さしているサラリーマンの前には、水色で長方形のホログラムがある。

情報を視認することができるのは本人だけみたいだ。


「見るのも初めてだったの?!」


「ちょっ、静かに・・・そんなに驚かなくても・・・」


周りにいた乗客が一斉にこちらを見る。

優乃が咳払いをし、今度は小さな声で話しだす。


「そう、あれがステータス。あんたも開いてみなさいよ」


「開くって言ってもどうするんだ?」


「ステータスって、頭の中で想像して唱えるの」


優乃は呆れながらも幸太郎に教えこんでくれる。


「わかった・・・・・・ステータス。・・・おぉ」


幸太郎の口からは、思わず感嘆の声が漏れてしまう。表示されたステータスの種類は、筋力、体力、俊敏性、幸運、外見、体格、精神力、そして知性だ。


100ポイント振れるのか。

このステータスだけで世の中ひっくり返るな・・・


「で?幸太郎。あんたは何に振るの?」


「うーん・・・すぐには決められないなぁ。ちなみに優乃はどんな感じにしたの?」


「・・・・・・内緒かな」


「もったいぶってその答えかよ・・・」


少しがっかりした様子で、しかし、面白おかしい様子で微笑し合う。さすが幼馴染、と思わされるような仲の良さがにじみ出ている。


「決まったらまた言うよ」


「約束よ?」






「今日はHRはありません。その代わり全校集会があります。全員速やかに体育館へ移動するように」


「「「「はーい」」」」


「・・・って誰だよ!!!!」


「ど、どうかしましたか?!福井さん!」


教室を出て行こうとした先生(別人)が、幸太郎の雄叫びに驚きながら振り向く。


「どうしたも何も、今日の先生可愛すぎでしょ。・・・ほぼ別人だな」


幸太郎は最後の方だけ濁らしながら訴える。


「最後の言葉はよく聞き取れませんでしたが・・・気持ちだけ受け取っておきますね」


そう言って先生は教室を出ていった。本当に聞き取れなかったのだろうか・・・


少し引き気味だ・・・何かに負けた気がする・・・


「こ・う・た・ろ・う!!」


「うおっ・・・!」


幸太郎の肩が急に重くなる。後ろから少し大柄な男が肩を組んできていた。


「朝からナンパか?でも先生にはなぁ・・・」


「ちが・・・いや誰?」


朝から驚きの連続でイントネーションがおかしくなってしまう幸太郎。


「剛だよ、剛!」


もし剛なんだとしたら・・・これが、こう・・・?いや、ないわ。冴えない感じのあいつが肩幅良しの超絶イケメンになるわけないわ。でも、これもステータスの効果か・・・


「なら耳貸せ」


「なんだよ・・・・・・っ・・・!」


剛は幸太郎の耳元で何かを囁く。

幸太郎はその一言に身震いし、男が剛だということを確信した。


「疑ってごめん。てかそりゃ疑うだろ」


「まあな」


剛は苦笑しながら話を続ける。


「そういう幸太郎は何も変わってないんだな」


「いやーまだ考えてんだよ」


軽く頭を掻き、ふてくされながら返事する。


「楽しみにしとくわ。とりあえず集会行こうぜ」


「ああ、そうしようか」

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