125話 3-35 初対面

 蓮司は別にトイレに行きたい訳では無かった‥騒がしく人が多い所に長時間居たくなかっただけ‥


エレベーターの横でスマホを見ると梨花からメッセが来ていた





「今から少し話せる?」





‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥





蓮司は辺りを見回し


「少しなら」


と返信した






‥‥‥ブーッ‥ブーッ






「もしもし‥梨花?」


「うん‥ごめんね?急に‥‥」


「‥‥‥どうかしたの?」



「えっと‥お昼にメッセした相談の事なんどけど‥‥‥」


「あ‥言ってたね」





梨花は小声だった‥周りに人が居るのかもしれない

‥‥‥






「私ね‥ 映画の主演の話が来てるの‥」


「恋のクレパスって映画なんだけどね‥」





「え!‥‥‥‥凄いじゃん!」







「‥‥‥‥私 ‥‥‥‥出たく無いの‥」






「どうしたの?」






「自信も無いし‥何より恋愛ストーリーは嫌‥‥‥ お母さんは舞い上がっちゃって話しを聞いてくれないの‥」




「僕は見てないからどんな内容なのか知らないけど‥‥‥」




「ねぇ、えとくん!演技でも‥‥‥‥」




「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」




「‥‥‥梨花?」




「んーん‥‥やっぱいい‥‥‥」




「僕も‥‥」


蓮司は小声になる



「え?」




「恋のクレパス‥映画の主題歌の話‥‥来てた」





「‥‥‥‥‥‥‥‥‥ えぇ~〜〜〜!!」





突然の大声にスマホを耳から離す


「ちょっと待ってて!」


梨花はどうやらスマホを操作している


「ごめん、えとくん!この話し持って帰るから遠征終わったらえとくん家で会える?」


「‥大丈夫だと思うけど‥‥‥」


「じゃあまた連絡する!‥‥っと‥‥間違いなくETOの曲なんだよね?」


「うん‥間違いなく僕のDMに来てた‥」


「分かった!じゃ、またね」

     「ちょっと待って!まだ受ける‥‥‥‥か‥‥」



‥‥‥‥‥昔から話し聞かずに行っちゃうよね



蓮司は困った顔で通話を切って時間を見るとトイレにしては長い時間掛かってた‥‥急いで戻ろうとするとエレベーターの前に同じくらいの年代の女子が立っていた。蓮司は慌てて


「あ‥‥ごめんなさい」


とエレベーターから離れた

女子は蓮司の顔を黙って見ている‥‥派手な人で香水が鼻を突く



チン‥‥



エレベーターが開いた。女子は開いたエレベーターに乗ろうとせず蓮司に向かって


「ETO様なの?」


ゾクリと背筋が凍る‥‥


「いいえ‥‥‥‥」


蓮司は顔を背けオフィスに速歩きで向かったが、後ろから腕を掴まれた

女子はベッタリと腕を絡ませ


「見つけた!」


と嬉しそうに蓮司を覗き込んだ


オフィスから丹羽さんと凛が慌てて出て来た


「「リエル!!」」


凛はリエルを引き離す


「離れなさい!ETOじゃ無いわ!」


「間違いなく僕‥‥」


「‥‥‥‥‥‥蓮司?」




「‥‥‥‥‥‥」




蓮司は驚く




「‥‥僕も蓮司」




丹羽さんは頭を抱えて言った


「リエルのモノマネだ‥‥」


リエルは凛と蓮司の前で喉を押さえると


「あー‥‥‥‥」


‥‥   『あ〜‥‥‥』


‥       『ETOよね?』


凛と蓮司は驚いて立ち竦む


『私は絶対音感のモノマネ配信者からデビューしたの‥‥声色を変えても分かるわ?実際、歌コンの声紋分析にも参加したし』


『通話の声ですぐに分かった‥』


‥‥‥‥‥‥‥





凛は蓮司を引っ張ってトイレ側にリエルと距離を取り小声で


「誰と通話したの!」


「‥‥‥梨花」


「‥‥‥‥やっぱり‥‥‥‥‥‥Vision内はダメよ!」


「相談されたんだ‥‥」


「何を?」


「梨花‥‥‥恋クレの主演の話が来てるって‥‥」


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」


凛は目を丸くして固まった


「やりたくないって‥‥‥‥」


「僕も恋クレの主題歌の話しが来てるって話した‥‥‥」


凛は丹羽さんとリエルを少し見ると


更に小声で


「今の話しはここでしないで!」


「良い?」



蓮司は黙って頷いた





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