124話 3-34 仕事の依頼

 放課後、蓮司は凛にVisionの会社に連れて行かれていた‥凛は社員証を受付で見せながら蓮司の説明をする‥


そう言えば前回来た時は丹羽さんと一緒だったから手続きとか無かったな‥‥


凛はロビーのソファーに座って待っている蓮司に笑顔で手招きした


エレベーターに乗り込むと凛は小声で


「VisionでもETOの存在は漏らせないの‥社員証のない蓮司は入るのに説明が面倒なのよね‥」


凛は苦笑いする




チン‥‥




エレベーターが着くと左突き当りのオフィスに入る



「お疲れ様で〜す!」



凛が大きく挨拶する



「あ!上田さんお疲れ様!」

「お疲れ様で〜す」



慌ただしいオフィスは声が通り難いが社員さんは凛に気付いて挨拶していた。蓮司は恥ずかしそうに俯き凛の後ろに隠れる


すると奥の窓際から更にうるさい声が





「んぉ?‥お〜い!お姫!こっちだこっち!」





丹羽さんだ‥‥‥‥蓮司はあからさまにウザそうな顔をすると苦笑いで凛に促され奥に入って行く



「お〜い!東!お姫だ!」



給湯室から面倒くさそうに東さんが顔を出すと


「知ってます!私が呼んだんですから」


と凛に向かって笑顔で手招きして給湯室に引っ込む



「‥‥‥そ、そうか‥‥」



「あ〜っと‥応接室は‥‥‥今無理か‥ちょっと東の席で座っててくれ!」


丹羽さんは目の前のデスクを指す。凛は丹羽さんに会釈しそのまま給湯室に入って行った



蓮司はソワソワ落ち着かない様子でバッグを抱えて東さんの席にちょこんと座る




「応接室が空くまでちょっと待っててくれな?」




丹羽さんはそう言うと応接室に向かって行った

続いて給湯室からお茶の乗ったトレイを持った東さんが出てきた。東さんは給湯室の凛に向かって


「じゃあ私の隣のデスクのパソコン使っていいからね?」


「分かりました〜」


東さんは蓮司を見てニコッと笑うと応接室に入って行った


少しして凛が紙コップのコーヒーを二つ持って蓮司の隣のデスクに座る


「アタシ、パソコン持って無いからここで作業させてもらおうと思って!」


凛が困ったように蓮司に言うと


「パソコンなら買ってあげようか?」


‥‥‥凛から睨まれる


「お金貯めて自分で買うの!」


「自分用ならそうだけど業務用なら別に経費で買えるから大丈夫だよ?僕のは作曲用だから経費に出来たって母さんが言ってた」


「‥‥あ!‥‥‥‥そうだったわ!」


凛は目を輝かせ


「ねぇ!買ってもいい?」


「うん!」


「えへへ‥じゃあアタシじゃ何が良いか分からないから選んで?」


「うん、分かったよ」


蓮司はスマホでパソコンを調べ出した


‥‥‥‥‥


ふと東さん達Visionの会社が何のパソコンを使っているのか気になり見てみると、東さんのパソコン画面に


『映画.恋のクレパス』の主題歌としてETO様の曲を使わせて頂きたいのですがご連絡頂いてよろしいでしょうか。



‥‥‥‥‥‥


蓮司でも聞いた事ある大ヒット少女漫画のタイトルだった。アニメ化もされて映画も出ていたはず‥‥‥


「主題歌‥‥」


凛がそれに気が付くと


「あ!今日DM来てたんだよね!実写化するんだって!恋クレの主題歌とかヤバ過ぎだけど蓮司は興味無いかな?」


「っと‥急過ぎて考えられない‥‥‥‥」


「‥‥僕ちょっとお手洗い行ってくる」


「あ!出たらエレベーターの奥に見えるから行っておいで?」



蓮司はバッグを椅子に置くとオフィスを出た









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る