122話 3-32 新曲と学校
暑い‥‥‥
セミも鳴き始め、本格的に夏が来る。
蓮司は冷たい缶コーヒーを飲んでいると隣のベンチにケンが飛び乗って来た
「よっお姫!久々だな!」
蓮司の横から凛に買って置いたコーヒーに手を伸ばすとちょうど電話の終わった凛から手を叩かれた‥
「アタシに買ってくれたの!」
「テメェがまた買えば良いだろ!」
また始まったので蓮司は
「ケン、僕のあげるから大人しくして!」
ケンが蓮司から飲みかけの缶コーヒーを受け取ろうとするとまた凛から手を叩かれた
「テメェさっきから何なんだよ!」
凛は自分の開けていない缶コーヒーをケンに突きつけると蓮司の缶コーヒーを受け取る
「もらうね?蓮司」
「‥‥‥‥うん」
蓮司は首を傾げる
「新曲公開楽しみだね!」
凛は嬉しそうにコーヒーを飲む
「え!お姫!今日新曲か?」
ケンは急いで自分のスマホを確認すると新曲告知の通知が来ていた
「10時か‥今日は学校休みで良いんじゃね〜か?」
「なんでだよ!ちゃんと行かなきゃ‥‥‥まぁ‥一週間サボった僕が言うのもなんだけど‥」
蓮司は苦笑いすると
「ETOの新曲出る時、誰も授業聞いてないぜ?」
「‥‥‥‥‥聞こうよ‥‥ねぇ凛」
蓮司は凛を見ると目を反らした
「‥‥‥‥聞かないの?」
「新曲覚えたらちゃんと聞く‥」
そう言えば前回の新曲は保健室でサボっている凛と初めて出会ったんだった‥‥
思い出すと懐かしくなる
「凛は新曲昨日から聴いてるじゃん!」
「‥‥‥なっ!ズリぃぞクソマネ!」
「‥へっ!マネージャー特権よ!今回もすっごく素敵な歌なんだから‥‥‥」
ウットリ蓮司の肩に頭を添える凛。ケンは一気にコーヒーを飲み干すと
「行くぞ二人共!ここじゃ暑くて干物になりそ〜だ!」
真っ青な夏空に大きな入道雲
三人は結局遅刻ギリギリで学校に滑り込んだ
そして、9:50
一時間目の終わりの休み時間にはクラスはETOの新曲の話題で持ち切りだった
イヤホンを装着している凛は蓮司をニコニコと見ている。それに対して蓮司は小声で
「毎回新曲出すとそうだけど誰も僕を見てないのに視線が刺さってるみたいで痛いんだよ!」
凛は少し考えると小声で
「蓮司が歌ってる訳じゃ無いんだから気にしないで良いんじゃない?」
「僕じゃないけど僕じゃん!無理だって!」
蓮司はソワソワしだした
「蓮司?今から面白い物見れるわよ?」
「へ?」
「見てて?」
キーンコーン‥‥‥‥
始業のベルで先生が教室に入ると同時にETOの新曲が流れ出した‥
「‥‥‥‥‥‥‥は?」
先生はびっくりして教室を見回すもみんな平然としている
いやいや!おかしいってなんで?蓮司は思ったがすぐにカラクリが分かる‥‥
教室のほぼ全員のイヤホンから一斉に漏れ出した小さいETOの曲は纏まって教室内で割と大きく聞こえていた。それを全員が自分の音では無いと言いたげに真顔だった‥
「プッ‥‥‥ククククッ」
凛は必死に笑い声を堪え蓮司は真っ赤でうつ伏せていた‥‥
先生はすぐに教室を見渡したながら
「誰ですか?」
「‥‥‥‥‥‥」
教室の全体から聞こえるので出どころが分からない、みんなが誰だよみたいに見渡すも、見渡した全員の耳に流れているのだから分かる訳ない‥
‥‥‥‥‥‥
蓮司は隣を見るとケンが人目を気にせず曲に感動していた‥
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