120話 3-30 答え合せ

 上田夫妻の蓮司から凛へプロポーズさせよう未遂で引っ掻き回された凛と蓮司


「ふぇ?なにそれ!!!」


やはりワンテンポ遅れて今、全てを理解した蓮司の声がリビングに響く

凛を覗き込むと真っ赤になって申し訳無さそうだった


「‥‥‥母さんも知ってたの?」


「私が凛ちゃんを簡単に手放す訳無いでしょ?」




‥‥‥




「じゃあ凛はどこにも行かないんだね?」



「行かないわ?ずっと居てって蓮司が言ってくれたし‥」




「‥‥‥‥‥‥‥うん‥」





蓮司も真っ赤になった‥

実は「好き」と言う感覚がまだよく分からないし付き合って無いにもかかわらず蓮司は後先考えずプロポーズに近い事はしようとしていた‥‥


まんまと罠に掛かりそうだったのだ‥‥


「東さんにも迷惑かけちゃったな‥」


「え?蓮司、東さんと話したの?」


「‥‥うん‥僕のモヤモヤの意味が分からなかったから‥でも答えは自分で見つけなさいって‥」


「アハハ‥東さんらしいわ?‥‥‥‥‥で、答えは見つかった?」


「まだ‥」


「そっか‥‥‥」


「ふふっ‥二人ともまだ焦らなくて良いわよ?今回は感情面でそう言った事もあるって分かってくれてたらね?‥‥今はしっかり勉強して遊んで‥食べてね?」


すみれさんは切り分けたケーキと紅茶を持ってきてくれた。


三人でちょっと遅いケーキを食べた









お風呂を終えた凛は蓮司の部屋をノックする‥






コンコン‥‥‥






「蓮司‥‥‥寝た?」



「起きてるよ?」


蓮司はチョコっと覗く凛に手招きをすると嬉しそうに蓮司の座るベッドの隣に座る‥


「‥‥‥ねぇ蓮司?」


「ん?」


「‥‥‥‥‥また聞きたい‥‥」


蓮司はニコッと笑うと机からスマホを持って来た。動画をセットしている蓮司の横顔を見ながら凛が




「‥‥‥‥蓮司?やっぱりちょっと気になったんだけどさ‥あの時、公園でアタシがあの写真の人の所に行くと勘違いして怒ったの?」





蓮司の手が止まった‥‥‥




「それはさっきも言ったけど、自分の距離感が‥‥‥‥‥‥」

    「距離感ならそんなに気にする距離じゃ無かったわ?‥‥‥なんであれで距離が気になったの?」




「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」




「‥‥‥物理的な距離じゃ無くて心の距離が近いって感じた‥‥知らない写真の人と凛の関係を僕は知らない‥だから僕が入る事が出来なかった‥」


「僕と梨花の関係に‥遠慮した凛の距離だよ‥‥‥」


「‥‥‥それは‥」


「僕が‥‥聞けば良かった‥でも凛を失って傷付く事を怖がったんだ‥‥ 」 




‥‥‥‥





「あ!‥‥」







「‥どうしたの?蓮司」



「そっか‥‥‥そうだったんだ‥」



「分かった‥東さんの言ってた答え‥」


「分かったの?」


蓮司は照れながら頬を掻き






「ヤキモチ‥」






「へ?‥‥」



‥‥‥‥‥




「蓮司が?‥‥‥‥アタシに?」



「‥‥うん」


「前にも似た感じがあったんだ‥」

「覚えてる?春、保健室で僕が凛の手を叩いちゃった時‥‥‥」


「アハハ‥あったね‥」


「‥あの時も‥‥‥凛をETOに取られちゃうって思ったんだ‥‥」



「‥‥‥え〜?何それ!」


「まだETOを隠しててさ‥僕の友達なのに‥ETOに気が付くと凛は僕が見えなくなるって思ってて‥怖かったんだ‥」


「今、思えばあれもヤキモチだったな‥」


‥‥‥‥‥‥


凛は蓮司の肩に頭をチョンと乗せた‥‥



「‥‥‥へへっ‥えへへ‥‥」



「‥‥‥‥‥どうしたの凛?」



「ヤキモチかぁ〜〜えへへ‥‥」


「‥‥‥‥‥‥‥あの‥僕はケンにも梨花にも同じ感情出ちゃうけど?」



凛は仰け反り蓮司に


「まっ!浮気者!!」


「へ?」


凛はガックリ肩を落とした



「そっか‥蓮司のそれは友達へのヤキモチよね‥」



「‥なんだか不正解っぽい?」



「知らないわよ!お子ちゃま蓮司!」




‥‥‥‥




「モヤモヤが無くなるとなんて事無かったんだ‥」



「なにが?」




「‥僕のヤキモチは面倒くさいって事!」


「ホントよ!心配ばっかりかけて!次はETOでヤキモチ妬いて!」


『あら、私はヤキモチなんて妬かないわ?』


『どこかに行けるものなら行って見なさいよ!』



「‥ETOはそれで良い♡」



凛はETOに腕を絡ませピッタリ寄り添う


『凛のお父さんお母さんには感謝してるわ‥ドッキリだったけど‥本気で考えたからこそこの曲が出来たの』



ETOはニッコリ笑って動画を再生した




♫〜‥‥‥‥‥‥‥‥‥


‥‥‥‥‥



ETOの曲は「私」と言う一人称を使うが今回の新曲は「僕」だった


改めて聞いて見るとそれが蓮司だと分かる‥‥‥





ドッ!ドッ!ドッ!‥‥‥‥‥‥





凛は急に心拍が上がる

それはピッタリと寄り添った蓮司にも伝わって来た




「え?凛?‥大丈夫?」



「‥‥‥へっ?‥‥‥い‥今見ないで!」




「‥‥‥‥」



凛は蓮司の背中に隠れるように埋もれた



アタシに作ったこの歌詞が蓮司の気持ちなんだとしたら‥‥‥‥


凛は蓮司のベッドにうつ伏せて枕で頭を隠し足をバタバタさせた


「‥‥‥‥?」


スクッと正座した凛は


「蓮司‥‥この新曲は没収です!」



「はい?」



‥‥‥‥‥‥‥




凛は新曲を自分のスマホに送信させると嬉しそうに眺める。そして正面からしっかりと蓮司を抱きしめた


「今日はアタシの誕生日だからこの距離でも良いよね?」


「蓮司‥ すぉ〜やすみ!‥‥」


「アハハ‥噛んだ?‥‥‥‥おやすみ‥」



凛は黙って蓮司の顔を正面から見た


‥‥‥‥‥


蓮司は不思議そうに凛を撫でた



凛は頭を撫でられ真っ赤になると蓮司の部屋から飛び出して自室に戻ってしまった




‥‥‥‥‥‥‥‥?




ベッドで抱き枕を抱えて横になる凛


凛は「おやすみ」を噛んだのではなく無意識に「好き」と言おうとした言葉に急ブレーキをかけただけだった‥



「‥‥‥‥‥‥‥‥‥蓮司ってあんな顔だっけ?」




凛から見た蓮司の顔はいつもの可愛い寄りの顔ではなくカッコ良い寄りの顔に見えた




蓮司に対して苦手だったはずの男子にハグをしてしまった感覚を覚えた









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