118話 3-28 誕生日

 家に着き玄関を開けると真っ暗だった‥

凛は手探りで電気のスイッチを探した。



  


カチッ‥‥






スイッチを探していると突然電気を付いた


蓮司が一人で立っている




「‥‥‥‥えっ‥?」



びっくりしてのけぞって後ろに倒れそうな凛の手を蓮司は慌てて笑顔で引き寄せた


「おかえり!凛‥‥‥」


「た‥‥ ただいま‥‥」


「どうしたの蓮司‥‥どっか行ってた?」


蓮司はこの時間なのにオシャレな格好をしていていつもとは違う格好良さが凛の視線を釘付けにした‥


蓮司は何も言わず凛をリビングに連れて行く‥‥


リビングの電気を付けるとすみれさんが笑顔で座っていた



「凛ちゃん‥誕生日おめでとう!」



「‥え?‥‥‥‥‥あ‥‥‥‥」


テーブルに並ぶ料理とケーキは凛の為にすみれさんが作ってくれた物だった‥

言葉の出ない凛は蓮司を見る


蓮司は少し照れて



「一応‥‥サプライズって事で」



「誕生日おめでとう」




凛の目を見てニッコリ笑った


「ありがとう‥‥」


凛はこの一週間、目も合わせてくれなかった蓮司の優しい笑顔にホッとして涙が出た‥‥


「‥‥‥さ!凛ちゃん手洗って着替えておいで?みんなで食べましょ?」





凛も蓮司に合わせて少しだけオシャレな服を着てきた





「あら凛ちゃん可愛い!」


凛は照れ笑いしてモジモジしていた



久しぶりに思えるみんなで囲む賑やかな食事だった‥以前と変わらない他愛ない話し、蓮司の声‥すみれさんの笑顔‥‥





この家族が大好き‥‥




食事が終わりケーキを切り分ける前にすみれさんは凛を呼んだ


「凛ちゃんちょっと来て?」


ソファーに座るとすみれさんは包みを凛に渡す


「誕生日プレゼント」


凛は驚きながら受け取ると


「ありがとうございます‥‥‥‥‥ 開けても?」


「ええ‥」


すみれさんはニッコリ笑う


開けると綺麗な浴衣と帯が出て来た‥

黄色の向日葵を基調にした明るい色の浴衣


「すごい綺麗で可愛い‥」


凛の目が輝く


「凛ちゃんに合うと思ったの!今度、着付けてあげるわね?」


「嬉しい‥‥‥」


凛は後ろに立っていた蓮司を見ると嬉しそうに


「凛に似合うと思うよ?」


蓮司は凛の隣に来るとすみれさんはキッチンに行った


蓮司は少しモジモジしながら





「これ‥‥‥‥僕から‥‥‥」


小さい包み箱を開けると可愛いネックレスが入っていた‥


凛は蓮司を見ると


「良かったら着けてみて?」


「うん!」



凛は嬉しそうにネックレスを着けようとするが留具が硬く着けにくそうだった‥


「かして?」


蓮司は凛を背中向きにすると長い髪の毛を束ねて前にやった


蓮司の柔らかい手が凛の首筋に触れ、凛の顔が真っ赤になる


‥‥‥‥アタシうなじ大丈夫だったかしら‥‥




「出来た!」


蓮司は凛に手鏡を渡すと黄色に輝くクローバーのネックレスは凛の着るオシャレな服にも良く似合っていた‥‥



「ありがとう蓮司‥‥‥‥大切にする‥‥‥」



凛は首元のネックレスを大事そうに触った



‥‥‥‥‥‥



蓮司はポケットからスマホを取り出して凛に渡した


「‥‥‥ん?なに?」



『これは私から‥‥‥‥お誕生日おめでとう‥凛‥』



ETOがスマホをタップすると



♫〜‥‥‥‥‥‥‥♪


曲が流れ出した‥‥‥



聞いた事の無い曲‥‥‥ETOの新曲だった‥



いつも通り優しい曲調で‥元気を貰える‥‥‥


歌詞はいつもより少し切なくなるけど強く心を満たしてくれる‥‥‥




我慢しても無理だった‥笑顔で居ようと思ったのに涙が止まらなくなっていた‥‥‥




曲が終わり、笑顔で涙を流す凛をETOは優しく撫でた‥


『ごめんなさい‥ずっと話せなくて‥‥』


『凛‥あなたに作ったの‥‥私の大好きな人に‥‥‥』



「‥‥え?‥‥ウソ‥」


凛は曲調や歌詞が梨花の曲だと思い込んでいたので驚いた



『私と蓮司の気持ちよ?‥‥』


‥‥‥‥



涙が再度溢れる凛は飛びつきたい自分の気持ちを力いっぱい抑えた



最高の誕生日‥‥






「明日の朝から動画公開されるよ‥‥」



「‥‥‥‥‥それから‥‥」



‥‥‥‥‥‥‥‥‥



‥‥


「蓮司?」





「‥‥‥‥‥」




蓮司はハンカチで凛の涙を軽く拭いた







「これからも僕の側にいて欲しい‥‥‥‥ずっと‥」



「どこにも行かないで欲しい‥‥‥‥」







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