116話 3-26 作曲期間
「凛ちゃん少し良い?」
「はい‥‥」
「今ね?佳代ちゃんと電話してたの‥‥‥」
「え?ママと?」
「えぇ‥あまりに唐突なお見合い話だったからね‥」
すみれさんは困った様に凛を見た‥
「‥‥‥‥‥‥」
「佳代ちゃんに話を聞いて困っちゃったわ‥‥流石にこの話に首は突っ込めない‥」
「‥‥‥‥ごめんなさい、すみれさん」
「良いのよ!気にしなくて‥‥‥それより力になれなくてごめんね?」
「‥‥いぇ‥気を使わせてすみませんでした。」
すみれさんは凛を軽く抱きしめると
「おやすみ‥」
と笑顔で自室に戻って行った‥
凛は抱き枕を乱暴に掴むと力いっぱい抱きしめ顔を埋めると
「蓮司のバカ!」
と呟き眠ってしまった‥
‥‥‥‥‥‥‥‥
翌朝、いつも通り起きた凛はリビングに降りようとしてギョッとする‥‥‥
作曲室では昨日の夜と変わらない姿で作業している蓮司だった‥
顔色は悪く缶コーヒーの空き缶が散乱している‥
慌てて凛が作曲室に入ろうとするも中から鍵が掛けられ入れない‥
ノックするもヘッドホンのせいなのか全く気づいてくれない
凛はリビングに降りるとすみれさんに
「蓮司が!‥‥‥」
‥‥‥‥‥‥‥
「あぁ~‥‥‥作曲中でしょ?」
「あの子、ああなると毎回しばらく出てこないわよ?何してもムダだから気が済むまで放っておいて?」
すみれさんは慣れた様に笑顔で凛を撫でた‥‥
凛はこの日も一人で途中まで登校しシノと合流して二人で学校に行った‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥
三徹目‥‥この日の朝も蓮司は起きているのか寝ているのか分からない様な感じてフラフラ頭が揺れながらパソコンの前にいた‥
蓮司は三日間学校にも行かずほぼ寝ずに作曲室にいた‥凛も暇さえあれば作曲室の前で蓮司を見ていたが話は出来ていない。蓮司が出て来る度に声はかけるが毎回「ごめん‥」とだけ言われはぐらかされる。すみれさんも仕事に行く前と帰ってからは必ず蓮司の様子を長く見ていた
「蓮司がおかしくなっちゃったのはアタシのせいです‥‥‥」
仕事に行く前に様子を見に来たすみれさんに凛は頭を下げたが、すみれさんは凛を抱き寄せ
「人と触れ合って来なかった れんくんの問題よ‥遅かれ早かれ必ず突き当たる問題‥‥特に凛ちゃんとはまだ数ヶ月だけど‥期間の問題じゃないの」
「‥‥‥‥」
「それに作曲期間はいつもあんな感じ‥上手く行かないとすぐに出て来て止めちゃうけどあれは上手く行ってる‥‥何より前と違って表情が辛そうじゃないの‥‥梨花ちゃんに作る曲はいつも辛そうな顔だった‥‥‥‥」
凛は胸がズキンと痛んだ‥長年、会えなかった梨花との関係が修復の兆しを見せ、ETOの曲の特徴でもあった優しくもどこか切ないメロディーが変わってしまうかも知れない‥‥‥変わる事が嫌な訳では無く梨花に左右されてしまうかも知れない事に胸騒ぎを感じていた‥
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