115話 3-25 話せない二人

 凛は蓮司を家に一人残して来た事を後悔していた‥学校で蓮司に会わない事に不安を感じる


原因は分かっていた‥アタシが本当の事を言えなかったから‥‥きっと蓮司は不安なんだと思う‥


朝から誰の話しも耳に入って来ない‥‥


ボーッとスマホを見る凛‥誰かのメッセを待ってるみたいだ‥


シノと友達が凛に声をかけても受け答えが合っておらずシノが


「凛チャどうしたの?夫婦喧嘩?」


「‥‥‥‥‥‥‥‥うん‥」


シノと友達は顔を見合わせる


「原因は?朝からハグが短かったからとか?」


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥うん‥」


‥‥‥‥


一通り遊ばれても帰って来ない凛に、重症じゃない?シノは心配になって来た‥‥




凛はその日1日中ずっと上の空だった‥


帰りに凛は保健室に寄ってみたがもう誰も居なかった‥


こんな日に限ってバンケンは休みだ‥

元気無く生徒玄関に行くも既に蓮司の靴は無かった‥



ブーッブッ


突然のメッセに爆速で既読を付けるも相手は東さんだった‥


「今日は早めに会社に来てくださいね〜」


凛はガッカリして


「今から向かいます!」


と返信した‥




‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥




その日の勉強会は終わるのがいつもより遅かった。急いで帰り支度を済ませエレベーターを待っていると


「凛ちゃん!」


東さんだった‥


「お疲れ様!どうだった?勉強会!」


凛の顔色がみるみる悪くなる。慌てた東さんは半ば無理矢理、応接室に凛を連れて行く


東さんはお茶を入れて凛の前に座る‥‥


「‥‥‥‥何かあったの?」


「‥‥‥‥‥‥‥」


俯く凛


しばらくすると凛は涙目になりゆっくりと経緯を話した



‥‥‥‥‥‥‥



「そんな事があったのね‥」


「‥‥‥‥」


「‥‥ねぇ凛ちゃん‥凛ちゃんがなんでマネージャーとして蓮司君と上手くいってたかわかる?」




「‥‥ちゃんと話せてたからです‥」




「そうよね?特に蓮司君みたいなタイプは自分に我慢を強いて溜め込むタイプだと思うの‥だから余計に話すって行為は重要になるわ?」


「プライベートの事まで言っちゃいけないんだろうけど‥私はキチンと話した方が良いと思う!」



‥‥‥‥‥



「ですよね‥‥‥‥ 分かりました‥蓮司とちゃんと話して見ます‥」




凛が帰る時、東さんは会社の一階ロビーまで付いて来てくれてタクシーで帰宅した。






東さんは凛を見送ると、スマホを取り出し蓮司に連絡する






「‥‥‥‥‥‥‥あ、蓮司君?ごめんね遅くに」


「いえ‥‥僕も誰かに話しを聞いて欲しかったので‥」


「‥‥‥凛ちゃん元気無かったわよ?」



「‥‥‥‥‥‥」



「モヤモヤするんです‥‥凛が僕から離れない事と凛に対する信頼がイコールでは無かった事に‥‥」




「‥‥‥‥‥つまり凛ちゃんが蓮司君から離れない事を信じて疑わなかったって訳ね?」




「‥‥‥‥‥自惚れていました‥凛には凛の人生がある‥たかが数ヶ月一緒にいただけで分かるわけ無かった‥」


「凛ちゃんと話しは?」


「まだ出来ないです‥いつもならETOが助けてくれるのに‥」


「ふふっ‥本当は分かっているのかも知れないわね?モヤモヤの奥の原因が‥」


「語源化出来ないんです‥」




「あなたの得意な事は?」


「僕の得意な事?」




「‥‥‥‥‥‥歌です」





「ふふっ‥話すより得意よね?やってみたら?」






「どちらかと言えば‥‥‥‥そうですね、やって見ます」





「じゃあ、また何かあったらいつでも連絡してね?」



「はい‥ありがとうございました。」

           「あ!東さん?」


「なに?」


「東さんには分かるんですか?僕のモヤモヤ」


「う〜ん‥‥‥そうね‥分かるわ?

  でも、答えは自分で見つけてみて?」


「きっと今のあなたは何を言っても否定的に捉えてしまう‥」


「かもしれません‥」






‥‥‥‥‥‥‥‥







凛が家に着くと時間は21時を回っていてリビングのテーブルにはコンビニの弁当のゴミが散乱していた。凛はゴミを片付けると自室に着替えに入る。隣の部屋から蓮司の気配がしない‥


凛は遅い夕飯を取るためリビングに出ようとすると、ちょうど蓮司が自室から出てくる。動揺する凛だが蓮司はノートを真剣な目で見ながら凛に気付かず作曲室に入って行った。


「新曲制作?」


凛は更に話しかけ難い状況に弱りながらコンビニで買った夕飯を取り終えお風呂に入った‥


お風呂から上がると、すみれさんが帰って来ていて誰かと真剣に電話をしていた‥‥


凛が音を立てない様に階段を上がる途中、すみれさんが凛に気付き笑顔で「ただいま」と口パクし、凛も笑顔で「おかえり」と口パクで返した


作曲室を覗くと蓮司はヘッドホンを付けパソコンに向かい何かをチェックするようにノートに書き込みをしている‥


今日は話せる状態では無い‥‥‥


凛は諦めて自室に帰って行った



コンコン‥


凛は寝ようとするとノックがした‥


慌てて髪の毛を手ぐしで解かし鏡に向かって笑顔を作ると納得し


「‥‥‥蓮司!」


扉を開けるとそこにはすみれさんがいた


「ぁ!‥‥‥‥ごめんなさい」


「ごめんね?れんくんじゃ無くて!」



凛は恥ずかしそうに俯いた




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