113話 3-23 モヤモヤ

 凛はスマホの時計を確認すると


「梨花?そろそろ着替えよっか‥帰らなきゃ」


「ヤダ‥‥‥凛とえとくんと一緒に居る‥」


「‥‥‥‥梨花‥」



「オフにまた来たら良いわ?」


『そうね‥放っておいても来る子だってのは分かってるんだから‥‥』





「‥‥‥‥‥帰りたく無いの‥‥」




「本当の事を知ったから‥お父さんとお母さんがえとくんとすみれおばさんに謝るまで許せる気がしない」


梨花の怒り具合が表情から見て取れた


「‥ねぇ!事故の真相‥本当の事話して良いんだよね?」


「言うなって言っても無理でしょ?‥‥‥アタシも無理だった‥」



「そうだ!ねぇ梨花!アタシとまだアド交換して無かったわよね?」




凛がスマホを向けるとフワッと嬉しそうに表情が変わり梨花も向ける


「何かあったら連絡して?アタシと蓮司で飛んで行くから!」


「うん!ありがとう凛!」


梨花は笑顔で凛の部屋に着替えに行った


凛はテーブルに開いたまま置かれたお見合い写真を閉じる


ちょうど着替えてメイクを落とした蓮司が洗面所から出てきた


「凛?一緒に公園まで梨花を送ろうか」


「うん、公園にタクシー呼んでおくね?」


母さんはお酒が回ったのかソファーで横になって寝ている。凛はタクシーを予約するとタオルケットをかけた


「梨花〜!準備出来た?」


「は〜い!」


梨花がしっかりメイクも済ませ部屋からパタパタと出てきた


「じゃ‥行こっか!」


「あ!待ってて!」


梨花は寝ているすみれさんに軽くハグをしほっぺにキスをしてニッコリ笑うと玄関に来た


「お待たせ!」


凛が家の鍵をかけて二人は梨花と公園に向かった。やはり梨花の足取りは重い‥‥右側を歩く繋いだ凛の手をギュッと握る




「‥‥‥‥‥凛‥私あきらめないから‥‥」


「え?」


「人生も恋も!凛に負けない!」


「‥‥‥梨花‥‥‥‥‥‥アタシだって負けないわ‥」


「‥‥二人とも何の勝負?」


蓮司は不思議そうに二人を見た


「「何でもないよ」」


「‥‥僕だけ仲間外れ?」


「女の子だけだよ!」


「そ!」


梨花は凛にくっつき笑顔になった

公園に着くとタクシーは既に待っていた梨花は


「ここで大丈夫!二人ともありがと!」


「また来るね?」


「うん!絶対だよ?りんちゃん!」


蓮司の笑顔は梨花を切ない笑顔にさせた‥凛も笑顔で手を振ると梨花は小走りでタクシーに乗り込む。

二人はタクシーが見えなくなるまで見送った





‥‥‥





「‥‥‥‥‥大丈夫だよね‥」


「‥‥ダメでもアタシ達が居るから‥」


「そうだね‥」


「さ!アタシ達も家に戻ろ?」




「‥‥‥‥‥うん」




少し元気の無い蓮司




歩き出そうとすると急に蓮司から腕を掴まれた





「凛‥‥‥‥」





「‥‥‥‥‥‥何?蓮司」






「行かないよね?‥‥‥‥写真の人の所‥‥‥‥」



「‥‥‥‥‥」




‥‥‥‥





言葉に詰まる凛は珍しかった




日の傾いた夕方の逆光で凛の表情は見えない






急に蓮司の周りにモヤが掛かって来た気がした‥‥‥






蓮司は掴んだ腕を離し謝る




「‥‥ごめんね‥やっぱそうだよね‥‥」








息が詰まる‥




もしかしたら梨花との距離の近さは無意識に僕を勘違いさせていたのかもしれない‥


そうだよ‥‥いくら大丈夫ったって近いにも限度がある‥


凛は前に言っていた‥凛はそんなつもりなど無いのに勘違いされていたのが凛自身の悩みだったと‥

その事を思い出し蓮司は胸がギュッと痛くなった‥


僕自身もそうだったのかもしれない‥


蓮司は自分が恥ずかしくなり小走りで家に向かった。


「あ‥‥っちょっと蓮司!」


凛も蓮司の手を握ろうと伸ばすも掴み損ねる‥ 凛から見た蓮司の表情は初めて見るものだった





‥‥‥‥‥‥



蓮司は走る速度を上げる



何だかモヤモヤが強くなってきた。それは蓮司の物事を見る視界をグッと狭めた

分からない‥‥こんなに凛と居たのに何も分からない‥‥‥


‥‥友達として居たつもりだった




なのに‥





なんだこれ‥よく分からない感情が蓮司を苛つかせた






誰だよあの写真の人‥‥





いつもの蓮司ならまずあり得ない思考、纏わり付くモヤモヤは次々とネガティブな考えを並べてくる








蓮司は止まる事無く家に入り、その日は部屋から出て来なかった‥‥‥





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る