108話 3-18 ETOと梨花

 梨花はETOから目が離せずにいた‥話し方から仕草までお手本にしたいくらいの綺麗な女子


「‥‥‥お化粧もしてる‥」


ETOはニッコリ笑って梨花を見る


『変?』


「んーん!すっごく綺麗‥‥‥」


「でも、ちゃんと男の子よ?‥‥‥ね?蓮司?」


『凛!変な事思い出さないで‥‥』


「うん‥‥知ってる‥‥‥小さい頃一緒にお風呂入ってたし‥‥‥」



ゴトッ



凛は持っていたスマホを落とした


『‥‥‥‥‥そんな事‥も‥あったわね‥‥』


「アッハハハ!二人は夏場にその庭でビニールプールでよく遊んでたのよ!もう水着も面倒だったから二人まとめて素っ裸でプールに放り込んでたわ!」


「すみれさん!!蓮司はともかく梨花ちゃんは女の子よ!」


「ごめんごめん!いや、あの頃の梨花ちゃんはわんぱくだったからね~!いっつも誰か男の子とケンカして傷だらけでどっちが男の子だか分からなかったわ!」


「‥‥‥‥‥‥すみれおばさん、余計な事は思い出さないで‥‥」


梨花は顔を両手で覆いそっぽを向いてしまった‥



「ねぇETO!まだ間に合うから一緒にお風呂入ろ?」


『は?何が間に合うの?何もかも手遅れよ?』


「梨花ちゃんだけズルい!」


「いや‥小さい頃の事だし今は梨花でも無理だって!」


「蓮司に聞いてないもん!ね?ETO」


『一緒よ凛‥‥諦めて!』


「え〜〜〜!ヤダ〜〜〜!」


凛はETOの胸元に顔を埋める‥すると反対側から服が小さく引っ張られる



‥‥‥‥‥‥振り返ると梨花が頬を膨らませていた


困った‥‥‥


『‥‥‥凛?お客さんいるから‥ね?』


ETOは凛を引き剥がす‥

母さんはそれを見て大笑いしていた‥


『そう言えば梨花は普段何してるの?レッスン?』


「‥うん、ほぼ毎日‥‥‥」


『オフは?』


「ほとんど家から出られないか両親と外出‥‥」


『出られない?』


「うん‥‥ 実はさ‥あの事故以来お母さんとお父さんが厳しくなっちゃって‥‥」


「本当は今日だってレッスンって事で出て来ちゃってるの‥‥‥」



‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥




空気が一気に重くなった‥‥‥

あれだけの事故だ‥両親が神経質になってもおかしくは無い‥


『‥‥‥学校は?』


「青葉大附属‥‥」


‥‥‥‥‥


「‥‥芸能人が多く通う高校ね‥‥‥」


凛が心配そうに覗き込む


「うん‥ほとんど行けなくても芸能活動が単位として見なされるから‥」


『‥‥‥‥本当は友達と遊びたいのね?』


「‥‥‥‥分かんない あれから入院生活がほとんどで、退院してすぐダンススクールに通ったの‥‥実力主義の世界だからちゃんと仲良くなれる人なんて居なかった」


「デイステのメンバーくらいかな‥今ちゃんと同年代として話せるの‥」


『そう‥‥‥』


ETOは梨花の頭を撫でた


『辛かったわね‥‥‥』


「でも、今ETOちゃんと凛ちゃんが増えた!嬉しくて仕方ないよ!‥」


梨花の笑顔に凛は隣に座り直して手を握り目を見て


「梨花ちゃん‥ずっと友達で居たい」


「‥‥うん‥私も凛ちゃんと友達でいたいよ‥」


‥‥‥‥‥‥‥‥



『‥‥凛‥そろそろ良いかしら‥重いわ‥』


梨花の手を握る凛はETOの膝の上に座っていた


「何これ‥幸せな座り心地‥‥‥‥‥」




ETOは凛のおでこをペチッと小さく叩いた

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