105話 3-15 失われた時間

 そして日曜日‥


「じゃあアタシはすみれさんと留守番しておくからお迎えよろしくね?」


「‥‥‥一人で大丈夫?」


「アハハ‥近いし流石に心配し過ぎだよ‥‥‥」


「そうだけと‥‥‥何かあったら連絡してね?」


「分かった!‥行ってきます」


「いってらっしゃい!」


凛は蓮司の背中を見送る



‥‥蓮司は近くの公園まで梨花ちゃんを迎えに行く事になっていた


事前に梨花ちゃんに蓮司の家で会う事を伝えると、やはりすみれさんと会う事に戸惑いが隠せず少し歩いて気持ちを落ち着かせたいとの事だったので蓮司が付き添う事に‥‥‥


少し心配もあった凛だが久しぶりに話しもあるだろうし近いと言う事もあり蓮司に任せる事にした




‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥



蓮司が到着すると、朝の誰も遊んでない公園のブランコで涼しげなワンピースに帽子とマスクの女子が小さく揺られていた‥


蓮司は後ろから隣のブランコに座る



「‥‥‥‥‥おはようりんちゃん」


梨花はびっくりして蓮司を見た


「お‥おはよう!えとくん」


「‥‥‥ボーッとしてて気が付かなかった」


右側のブランコが見えていなかったのを蓮司は分かっていた‥


梨花はマスクを外し蓮司に笑いかけた



「この公園変わらないでしょ?」


「‥‥‥‥‥うん‥あの滑り台でえとくんは歌うの好きだった‥」


「へへっ‥それはりんちゃんが歌いやすい様にイジメっ子を追い払ってくれてたからだよ」


梨花は懐かしそうに目を細めて滑り台を見ていた‥


「滑り台があんなに小さく見える‥」


「僕らが大きくなったからね‥‥‥」



「‥‥‥‥‥‥それだけリンとえとくんの時間が失われたって事だよね‥‥」




「‥‥‥凜がよく言ってくれるんだ‥‥失った過去より今を楽しめれば良いって‥」


「僕とりんちゃんだって同じだよ」


「また会えた‥だから今からまた楽しめば良いんだよ‥」


蓮司は梨花の左側に移動しニコッと笑う


「行こうか‥凜と母さんが待ってる」


「‥‥‥‥うん」


蓮司は道路に出ると梨花の右側に付くが梨花は逆に回ろうとぐるぐる回る


「アハハ‥えとくんの右が良いの!」


「ダメだよ右側が車道じゃん!」


「いいの!」


「ダメ!」


蓮司は梨花の右手を取ると引っ張って歩き出した‥


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」


蓮司は大人しくなった梨花を見ると顔が真っ赤だった‥


「‥‥‥‥りんちゃん?」


蓮司は慌てて車道の車が無いか確認すると反対側の歩道に梨花を連れて行った


「ごめん‥こっちなら僕がりんちゃんの左側に居れるよね」


梨花は黙って離された手を見ながら


「‥‥繋げるなら逆で良かった‥‥‥‥‥‥‥」


ボソッと言った梨花の言葉を聞き取れ無かった


「‥‥‥‥?」





‥‥‥‥‥‥






着いたよ‥


「‥‥‥‥‥‥思い出した‥えとくんち」


「うん‥」


「すみれおばさん居るんだよね‥」


「‥‥‥大丈夫だから」




蓮司は梨花の背中を優しく押して玄関を開けた




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