103話 3-13 責任

 母さんが自室に着替えに行ったタイミングで蓮司はリビングに降りてキッチンの凛に小声で話す


「凛‥‥」


「どうしたの?お腹減った?」


「違う‥実はさ‥‥‥‥‥

母さんとりんちゃんの事話して無いんだよ‥‥」



「あの大怪我させた事故以来‥‥‥‥」



‥‥‥‥‥‥‥‥‥



凛の顔が悲しそうになる‥

そうだった‥‥梨花ちゃんの事はすみれさんも酷く傷付き今も責任を感じている‥‥‥もしかしたらまだ家に上げられる状態じゃ無いかも知れない


「ちゃんと話した方が良いよね?」


「そうだね‥‥」



「‥‥いずれ話さなきゃって思ってたんだ‥‥あの事故で母さんを傷付けたのは僕なのに‥‥」


凛は蓮司の背中を優しく擦って


「座ってて?コーヒーにする?」


「うん‥‥‥」


蓮司はソファーに座り思い詰めた表情になる


凛が食事を並べたタイミングでちょうど母さんが着替えてメイクを落とし出て来た‥


「あら‥今日は賑やかね?」


嬉しそうな母さん


「美味しそ〜!!お腹減った!いつもありがとね?凛ちゃん」


「いいえ‥‥すみれさんも蓮司も喜んでくれるから作り甲斐がありますよ」


お湯を沸かしながら嬉しそうにはにかむ凛


「いただきま〜す!」


「は〜い、召し上がれ」



‥‥‥‥‥‥




「蓮司、コーヒー入ったわよ」


凛はマグカップを二つ持ちテーブルに座った


「珍しいわね‥れんくんも一緒なんて‥」


「‥‥うん」


蓮司は凛の隣に座った


「‥‥‥‥‥‥」


「ん?どうしたの?二人共‥‥」


「母さん‥‥‥‥」


「なに?」


「‥‥‥‥りんちゃんに会ったんだ」


キョトンとして凛の方を見る


「アハハ‥‥アタシじゃなくて‥高宮梨花ちゃん‥‥」




‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥




母さんの箸が止まった‥


「‥‥‥‥元気だった?」


「うん‥‥‥まぁ‥‥」


「そう‥‥」


‥‥‥‥‥


凛はスマホを操作し母さんに渡した


「それが今の梨花ちゃんです‥」


デイステの動画だった‥‥‥母さんは目を細めりんちゃんがソロで抜かれている動画を見ていた



「梨花ちゃん‥綺麗になったわね‥‥‥」



凛は居た堪れなくなった

すみれさんのこんなに悲しい顔を見たこと無かったから‥


「りんちゃんも‥‥母さんに謝りたいって‥」


蓮司の言葉にすみれさんは動揺したように蓮司を見た。


「りんちゃんはずっと母さんに会えないでいたんだ‥」


「私が謝らなきゃなのにね?」


「母さんは悪く無い‥‥‥僕が悪かったのに‥りんちゃんの両親に酷い事言われた‥‥‥」


「りんちゃんの視力が無くなったのは僕のせいだよ‥‥ごめんなさい‥」


下を向き小さく震える蓮司を隣の凛が優しく背中を撫でる


「僕が取れる責任がないか考えてる‥‥」


‥‥‥‥‥‥‥‥‥



「れんくん‥‥‥それを梨花ちゃんが望んだの?」


「‥‥‥」


蓮司は小さく頭を振った


「れんくんの取れる責任ならとっくに私が取ってるわ?‥‥‥‥もう何も無いのよ‥」


「‥‥‥今度、家に連れて来ていい?」


‥‥‥‥少し考えたすみれさんは蓮司を覗き込むように見た


「いつ?」


「‥‥‥今度の日曜日」


‥‥‥‥



「分かったわ‥‥母さんも居て大丈夫?」




蓮司は頷いた




‥‥‥‥‥



梨花ちゃんについてそれ以上話す事は無く蓮司は自室に戻りすみれさんは食事を終えるとお風呂に入った‥‥凛は食器を洗いながら森永の事を話すか悩んでいた‥

森永が自白したとは言え証拠などどこにも無い上、だからと言ってこれから何かを覆すには蓮司やすみれさんの心の傷を更にえぐる結果になりかねない‥何より梨花ちゃんの目が良くなる訳でも無い‥‥



悔しさだけが残る凛




森永が退学しただけで報いる事にはなっていなかった‥‥

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