102話 3-12 無頓着

 服が部屋いっぱいに広げられた蓮司の部屋で蓮司と凛が唸っていた‥‥


「バンケンのやつセンスは良いのね‥‥」


「‥‥‥うん、僕も思った」


蓮司はケンの選んだ服を着回しながら関心していた


「あ‥これに凛の選んでくれたの合わせても良いかも!」



「‥‥‥‥‥好き」



「‥‥‥はぇ?」


「あ!アハハ!似合うって事よ!アタシ好み!」


‥‥‥


凛はよく気持ちがそのまま言葉になるのでドキッとさせられる事がある‥‥慣れては来たがこんな風に間が悪いと事故る‥


「‥‥‥‥‥‥‥ねぇ蓮司?」


「何?」


「梨花ちゃんとどこで会うつもり?」


「‥‥‥‥‥‥‥」


「蓮司も梨花ちゃんも有名人だよね?外でってのは無理じゃない?」


「そっか‥‥今日散々な目にあったもんね‥

‥‥じゃあ家に連れて来ようか」


「うん‥それが良いかもね‥」


今日服を買った意味が無かった気もしたが、どの服も蓮司のお気に入りになっていた。


「‥この服は凛のだよね?」


「あ!それアタシの!」

「待って!お財布持ってくる!お代金払わなきゃ」


「良いよ?お金なら気にしないで」



‥‥‥‥‥‥‥




「ねぇ蓮司‥そこはちゃんとしなきゃダメよ?あなたはお金に無頓着すぎるのよ!」


「ん~‥‥‥僕、別に困ってる訳じゃ無いし普段使わないから‥‥‥無駄遣いとかしないし‥」


「それはお金の使い方を知らないだけでしょ?今は沢山あっても有限なんだからしっかり管理しなきゃね?」


「‥‥‥‥分かったよ」


凛は東さんから少しだけ聞いた事があるが、蓮司に入るお金は少なくとも毎月軽く新築が建つほどだとか‥流石に歌姫だ‥‥本当ならすみれさんだって仕事をしなくても良いのだが本人は好きで仕事をしているので趣味のような物らしい


‥これで蓮司が本格的に芸能活動を始めれば数年で一生豪遊しても使い切れないお金が入るらしいと凛は思う


まぁ‥蓮司にその気は無いっぽいので、先より今を楽しんで欲しい‥‥‥


凛は自室にお財布を取りに行き可愛いポチ袋にお代金を入れて渡すと嬉しそうな蓮司‥


「なんでそんなに嬉しそうなの?」


凛の顔も吊られて綻ぶ


「えへへっ‥‥なんだかお年玉貰った時みたいな気分」


「僕はもう何年もこんな風にお金を貰った事無いからさ‥‥」



確かに‥‥自分より稼いでる子供にお年玉をあげるなんて大人はいないかも知れない‥‥


「‥‥‥蓮司?」


「‥ん?」



「じゃあ、これから毎年アタシがお年玉あげるね?」



「‥‥‥‥‥良いの?」



凛は今日蓮司に貰ったキーホルダーを見せて


「金額じゃないでしょ?気持ちの問題!」


蓮司の笑顔は無邪気な子供に見えた。



カチャ‥‥



「あ!すみれさんだ!」


「もうこんな時間!アタシご飯温めて来るね?」




凛はパタパタと玄関に出迎えに行った。



「あ!凛」



蓮司が階段から玄関を覗くと


「ただいま〜愛しの娘ちゃん!」


帰宅した母さんに抱きつかれ、ただいまの儀式が行われていた。


母さんは蓮司に気が付くと手招きしたが知らん顔で部屋に戻る


「ちょっとれんくん!‥‥‥‥もっ!反抗期ね!凛ちゃんだけが癒やしだわ〜!」


「いいから!すみれさん早く手洗いうがいして着替えて来て!ご飯温めるから!」


「‥‥‥可愛いらしいママね!」




母さんの足音が洗面所に消えて行った‥‥









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本日は19:00にも更新します。








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